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ただいま

18歳の3月に故郷福島をでた。
あの頃とにかく逃げたいものがあって、自分の置かれた状況を変えるために必死で勉強して、県外行きの切符を手に入れた。

あれから9年。
窮屈に感じていた地元を出られた開放感は束の間のこと。
福島をでたのに気になるのは福島のことで、学生時代には福島とつながる活動をするサークルを立ち上げた。
なんだわたし、福島好きなんじゃん。

結婚し、埼玉に身を置く決心をしたが、子どもが育つに連れて自分が育った環境が恵まれていたことを痛感した。

見上げた夜空に星はなく、米がどこで作られるか知らない子どもたち。

2024年1月
9年間で培ったたくさんのものを手放して、福島に帰ってきた。

福島に帰るにあたり、本当にたくさんのものを手放した。
友人、家、仕事、慣れ親しんだ街。
いまだって正解はなんだったのかわからないけど、とにかく私は戻ってきた。
何より大事な2人の息子だけを大事に抱えて。

悩むことはたくさんあるけど、いまは、毎朝安積野バイパスから望む山々に心慰められ、冬の雪景色に心奪われ、見上げる夜空の星空が変わらないことに安堵する。
正解はきっと、ここにある。

ここで生きることが好きだ。
都会に比べて少ないものはあるけど、足りないものはないし、むしろ豊かな場所。
ずっとここに帰ってきたかったんだ。

17歳の私が小さな声でしか言えなかった「ただいま」は、27歳のわたしのために残していたのかもしれない。
今は玄関を開けて、大きな声でいえる。

ただいま。

私たちはここで生きていく。

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