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やどかり

わたしは岐阜の山奥で22歳まで育った。

生まれた時からその家にいて、小学校、中学校、高校、大学もそこから通った。

どこかへ出ていくなんて、思ってもみなかった。
たぶん、一生、東海地方から出ることなんてないだろうと。

だけどそれは、来月社会人になるぞ!という3月の頭、1本の電話で打ち破られた。

はなうたの配属先は、大阪です〜!!

という賑やかな通達で、わたしはなんでやねんの街は引っ越したのだ。

まるっと3年間、ひとり暮らしをした。
今考えると、短いような気もする。
朝出勤して、終電まで、時には終電にも間に合わない日もあった。

とにかく、朝から晩まで働いた。

だけど疲れた。
そして、その時遠距離恋愛していた彼氏と、出来れば1分1秒でも人生長く共にしたいと(その時は)思って、結婚を決めて、また東海地方へ戻った。

そうして子どもを産んだ翌年、夫が転職した。

育休中でただでさえカツカツなのに転職したことでさらに家計はカツカツになった。

このやろう…と思っていたら、なんと、その半年後、帰宅した夫はわたしにいった。

四国に転勤なったわ。

は?
なんて?

うどんが美味しいとこや!

なんでやねん!転勤なしになるんじゃなかったん?
転勤ないと思うから転職してええかって聞いてきたやんけ!!!

その時、夫を単身赴任させて地元に残るか、
一緒に行くかの選択を迫られた。

子どももまだ小さい。
家族は一緒にいた方がいい。
わたしは夫と少しでも長く一緒にいたくて結婚したんだし。

会社に話すと、なんとわたしを半年遅れにはなるけど異動させてくれるらしい。
まじかよ。

そうしてわたしは、夫より半年遅れてうどん県へと旅立つことになった。
しかし部屋探しを夫に託すのが不安すぎて、先にお義母さんと見に行って目星をつけて夫に決定権を委ねた。
えー古くない?と文句を言いながら、夫はわたしとお義母さんに押し切られる形でそこに住むことにした。

しかし、住んでみて、やっぱり違うと思ったのだろう。
夫はファミリータイプのマンションを探し出し、私たちが引っ越すのに合わせて、そこに入居すると決めていたのだった!

聞いた時は、マジかよお金もったいねー…。
と思い、悩んでいたが、夫は全然悩んでなかった。
その引越しは、相談ではなく決定事項だったのだ。

しかしこれは結果的に大正解だった。

ファミリータイプの分譲マンションは、これ以上ないくらいに快適だった。
心配していた保育園問題も広い駐車場がある私立の認可保育園に入れた。

ずっとぐじぐじ心配していたことが解消されて、新しい生活がスタートした。

そんなこんなでうどん県でうどんと自然を満喫していたら、もう1人家族が増えた。
ずっとこのままなのかな?
このままここで生きていくのも悪くないかなあ。

なんて思っていたら、会社からの帰り道、夫からLINEが届く。

今話せる?

普段連絡するのは、帰宅連絡のみに等しい私たち。これはあれしかないやないかい。。。
恐る恐る電話をかけてみると、

どこや思う?

知らんがな!
やっぱりあれやないかい!
でも一応最悪(1番遠い)な想定をして、
仙台?と聞いてみた。

ううん、東京。

そんなわけで、今度はいそいそと東京にやってきた。

もう大変すぎて思い出したくもないが、
またもや仕事を続けさせてもらえることになったので、(神かよ)
死ぬほど必死に保育園を探した。家も探した。
自治体を調べまくった。
情報は足で稼げと先輩に教えてもらったので、とにかく市役所とか会社の知り合いとかに聞きまくった。

結局、激戦区だけれど、保育園の点数が1番高くつく自治体を探し出して決めて、それに合わせて家も決めた。
一か八かだったけど、無事に希望通りの保育園にも滑り込み(超絶ミラクル)、無事に引っ越せた。

がしかし。

今度は小学校の学区問題に直面した。

その時住んでいた家は、駅から遠い小学校に通わなければいけなかったのだ。

なんだそんなこと…と思うかもしれないが、
これは結構大きな問題なのだ。

わたしは引っ越しを決意した…が、良い物件は見つからず、夫もなんとなく乗り気ではなかった。
わたしは毎日寝ても覚めてもSUUMOで物件をさがしまくる立派なSUUMOゾンビになり、近所のマンションの間取りもどこに空きがあるのかもスラスラ言えるようになっていた。
そのうちSUUMOだけでは飽き足らず他の不動産系アプリもダウンロードし、近所を徘徊してはマンションに空きがないか探す日々が続いた。

良さげな物件を見つけは夫に送りまくる日々。
最初は、狭い 遠い 古い とかリアクションはあったが、それもそのうちスルーされるようになった。

諦めよう。
大丈夫、小学校にちゃんと行ければいいんだし。

諦めかけたその頃、夫がいきなり引っ越しに乗り気になった。
トラブルというほどでもないが、お隣さんが騒がしかったのと、駅に近いマンションが空いたのを夫が見つけてきたから。

ふうやれやれ。
そんなこんなで娘は小学校にあがり、今のところ順調。
家も多少古くはあれど、快適だ。

このままここに居たい…

のだが、本日、私たちは3駅隣の新築マンションの内覧にきていた。

次の辞令が出るまでに、住居をもう固めておきたいのだそうだ。

はじめての住宅ローンにわたしの目はシロクロ。
でも見てしまうと住みたいと思ってしまう。
それは娘も同じようで、転校もまあいいよと。。

ソワソワするけど、今まで振り返ると、わたしが無理やり妥協して見つけてきた家よりも
夫の方が鼻が効くしちゃんといい物件に巡り合っている。

こーゆうのは縁だよね…

わたしは流れに身を任せよう…

と言い聞かせる秋の始まりなのであった…

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