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陽炎に嫉む│デビュー10周年、私の米津玄師10曲プレイリストを作ってみた

2022年5月16日、米津玄師のデビュー10周年。おめでとうございます。
で、ナタリーの記念特集でAyase、syudou、須田景凪、菅田将暉、Vaundyがプレイリストを組んでいて面白かった。

特にAyaseの選曲はまんま俺すぎて笑った。私が組んだのか……? テーマ「まま流し推奨米津玄師プレイリスト」、わかりみが過ぎるAyase。

春雷、推されている(3)。次点でPale Blue、クランベリーとパンケーキ、死神、メランコリーキッチン、再上映(2)。
Excelにリストを書き出して数えてしまった。被るものなんだなあ。

あーこれ私も好き! めっちゃ聴いたな~! ハードにヘビロテしているのでこの曲の推し具合なら負けねえ……! みたいな気持ちが湧いたので、有名アーティストに乗っかってプレイリストを作ってみることにした。


米津玄師プレイリストを作ろう

ただし私はファン(……というとなんかしっくり来ないというか謎にむず痒いけども)になったのが遅く、未だに全曲を聞き込んでいないので、これは私のiPodが知っている範囲で作るプレイリストである。イイヨネ!

ちなみに、

アーティスト名「テーマ」(選曲数)
---------
Ayase「まま流し推奨米津玄師プレイリスト」(10曲)
syudou「ずっと恋をしていた」(10曲)
須田景凪「マザーグース」(10曲)
菅田将暉「街で出会った米津玄師」(5曲)
Vaundy「夢に誘うメロディたち」(7曲)

ナタリー「米津玄師デビュー10周年記念特集」より(前出)

なので、倣って私の選曲も10曲にしようと思う。
ていうかテーマの付け方がお洒落すぎん? 須田のマザーグースってナニ、怖。センス怖。一時期シャルルめちゃくちゃ聴いてたなあ。


私の米津玄師10曲

見ればわかるのだが、大体憧れながら嫉妬しているか泣き喚きながら憤っているか、それを踏み台にしながら明日の自分を考えている。


1.ひまわり

愛したくて 噛み付いた 喉笛深く
その様が あんまりに美しくてさあ

米津, 2020.

手に余るほどの憧憬と嫉妬と、けれども二度と追いつくことのない存在へ対する絶叫をぐうっと腹の内で押さえたような歌唱がとにかく堪らない曲。初めて聴いたときは変な声を出した。今でも変な声が出る。
アルバム「STRAY SHEEP」の中で1番好き。


2.Nighthawks

終わらないよ僕たちは 歪なまま生きていける
あのカーブの向こうへ 手の鳴る方へ

米津, 2017.

ナンバーナインと迷った。この人の目にはエドワード・ホッパーの「Nighthawks」がこんなふうに明るく見えるのかと思って、作品への新しい眼差しを得た。あと、私の中でこの曲が一番エモーショナル。聴いていると真夜中にコンビニへ行っていた私、暗闇で光るロードサインを思い出す。エモすぎてエッセイを書いたくらいエモの代表曲。


3.アイネクライネ

あなたが思えば思うより大げさにあたしは不甲斐ないのに

米津, 2014.

周回遅れで好きになっていっときすごくのめり込んで聴いた曲。当時「子守歌のような揺籃を感じる」と感想を書いていた……。「平易な言葉を選んで暗喩して「あなた」と「あたし」の物語を紡いでいる、ところが私の趣味嗜好にドハマり」していたらしい。

2014年に発表された「アイネクライネ」は、蔦谷好位置が共同編曲者として参加。活動開始から一貫してセルフプロデュースを行ってきた米津玄師が初めて外部プロデューサーを招いて制作した1曲となった。東京メトロの広告キャンペーンに起用され、初のタイアップソングとなったこの曲への注目度もあり、「YANKEE」はオリコン週間アルバムランキングで2位を記録。

ナタリー(前出)

はー、そうだったんだ、と知ると共に納得。この曲、アイカツ!シリーズの音楽と入れ替わるように聴き始めた記憶があるんだけど、好んで聴いていたア!の楽曲にも蔦谷好位置が作曲もしくは編曲のものがあって、無意識に繋げていたのかもしれない。運命じゃん……(?)
喉を潰すくらいカラオケで歌ったけどいっこうに上手くならなかったなあ。


4.砂の惑星(+初音ミク)

戸惑い憂い怒り狂い たどり着いた祈り
君の心死なずいるなら 応答せよ早急に

ハチ, 2017.

印刷室で延々とコピーしながらバチクソ練習した。今では噛まずに歌える。
いやまあそんなことはよくて。
5年間働いていた職場をいよいよ雇い止めになる時期に、ヨルシカの「爆弾魔」と一緒にエンドレスリピートしていた思い出の曲。斜に構えながらバイバイバイって軽やかに去っていくところが日々闇落ちしていた私の気持ちを救ってくれていた。MVの半眼ミクもいいよね。


5.LOSER

進め ロスタイムのそのまた奥へ行け

米津, 2016.

頑張ってきたし成果も出してきたのに仕事を辞めなければならなかった私にとって、砂の惑星が救済ならLOSERは敗北と自傷だった。退職日の前日、ロスタイムのそのまた奥ってどこだよ! とすごい声で罵って台所で頽れて大号泣した。今でも悲しみと屈辱と怒りが綯い交ぜになる。でも、発破でもある。LOSERがぶち上げてくれた感情が本当にあほみたいにある。全部投げ出してしまいたかったときにこの曲が私を進ませてくれたと思う。

米津とLOSERって、本人の成功と歌詞が不均衡でよく揶揄されるけど、彼がこの道で折れそうになったときに自分自身に言い聞かせていたことなんだろうな。うまくいかないと「どうせ」って言うし、茶化して誤魔化して「私はそんなものに興味ありませんでした」なんて顔でさあ腐すけど、腐したってさあ。負けながら行こうぜいつかのために。


6.優しい人

ババ抜きであぶれて 取り残されるのが
私じゃなくてよかった

米津, 2020.

ずっと遠い昔日の、こうなりたかったという深い傷や後悔を静かに揺り起こされる。あぶれた私もやさしくなりたかったし、取り残されなかったあなたも同じように優しくなりたいと思っていたのなら、どうかこの祈りは明日へ届いてほしい。


7.TEENAGE RIOT

煩わしい心すら いつかは全て灰になるのなら

米津, 2018.

好きオブ好き。オールタイムベスト。
疾走感のあるメロディも、いびつさを孕みながら一路な歌詞も、米津がスタンドマイクで歌っているだけのMVも、MVの中で一番好き。米津の楽曲の中で一番自分事として聴いている気がする、これは私のことを歌っているのだと心底思っている。この曲は私である。

毎日聴いているけれど、殊、悔しくて悔しくて堪らんときにはよく聴く。


8.ゆめうつつ

虚しさばっかり 見つめ続けるのは
誰かの痛みに気づきたかった ひたすら

米津, 2021.

私は何て無益なことをし続けているんだろう、何のためにこんなことをしているんだろう、と落ち込んでいたときに聴いて、それからずっとプレイリスト(※様々なアーティストが雑多に組んである日常用のプレイリスト)に入っている。アーティストの米津プレイリストを見てPale Blue人気なんだなあと思ったけど、カップリングのこの曲が好きなんだよな私。

何度も何度も繰り返し聴いているうちに意味が紐解けてきて、今ではこんなふうには思っていないのだが、何ていうか、日々に疲弊して極限のときは柔らかい曲調にたゆたっていただけで、落ち着いてきてようやくこの曲が伝えたかったことに辿り着いたような気はする。私はアップテンポな米津玄師が好きで選曲もほぼそんな感じだけど、ゆめうつつは自分ではどうしようもない儘ならなさや閉塞感を人肌でゆるめてゆくような趣があって、それがなんかねえ、安堵に似ているんだよね。そして最後少しほほ笑んだみたいにして彼は歌うのだ「疲れたら言ってよ 話をしよう」。


9.M八七

今は全てに恐れるな
痛みを知る ただ一人であれ

米津, 2022.

泣いた。
遥か空の星が、という歌い出しから最新曲とんでもねえなって思った。泣いた。今ハードリピートしている。映画はまだ観ていない。これがエンディングに流れるその瞬間を味わうためだけに観に行こうかと思っている。

いや私、元のウルトラマンシリーズは好きなんですよね……(最近のはわからないけど)。特撮ならウルトラマンシリーズが一番好きで、ここまで落とし込めるものなんだな、解釈力が強強すぎるな何だこの人……ってなった。それでなくても曲に合わせた声の表現の深さ、その奥行きでかなりギリギリ歯軋りしてしまう曲である。何だこれって思った。今も思っている。歌詞も強いよな。強い。はあ何だろうな……何ですかね……何なの……うわあってなりすぎて配信初日は何も言えなかった……(ベコベコに殴られている)。

夏の、夕暮れから夜にかけてのあの薄明かりのときに、この曲を溺れるほど聴くだろうな私。信号待ちをしながらビルの隙間を眼差しで縫って、あわいの空に星を見つけて、この曲を何度もなぞるだろうな。きっとそうだな。


10.ピースサイン

ただ一瞬 この一瞬 息ができるなら
どうでもいいと思えた その心を

米津, 2017.

気が狂うくらい聴いている。
一体どれくらい聴いたのだろうと思って調べたら記録されている限りで1139回だった。丸3年、3日と空けずに聴いている。すごいな。

私が本当にしたかったこと、なりたかったもの、もがいていた日々、それでも叶わなかった夢。諦めたはずだったのにそうではなかったと気づいて大泣きした日からずっと聴いている。今度こそ立ち上がれないとつらくなるたびに励まされて、この曲に背中を押されて今日まで来たと思う。明日もこの曲が私の手を引いてくれると思う。きっと私はもう一度遠くへ行くはずだ。

今が過ぎ去って痛みが褪せても、憧れが遠く翳んでも、悲しみも怒りも私から潰えてあなたがいなくたってちっとも平気な私になったとしても、この曲がずっと、私にとって唯一無二の「米津玄師」であることでしょう。


陽炎に嫉む

アルバム「BOOTLEG」が好きなのでナンバーナインとかかいじゅうのマーチとかも引きたかったし、馬と鹿も解釈垂れ流すくらい聴きまくったし、フローライトのMVが好きですごく観たなあとか、目下突然のFlamingoブームでめちゃくちゃFlamingoしていたりとか、それこそアーティストの面々が挙げた春雷も死神も私だって好きだが!?!!? という気持ちになったが、シンプルに、米津玄師を日常の音楽として愛するようになってよく聴いてきたものを選んだ。M八七は超最近だけど。曲順は、私ならこう聴くかなというチョイス。でも実際、普段はシャッフルしているのであまり関係ない。

iTunesの再生回数を見ていると本当に、ピースサイン、TEENAGE RIOT、LOSERの3曲への愛が重いな私。重い。


こういうことを言うのはよくないのかもしれないんですけれど、俺はいつでも誰かの才能を食べたいんですよ。だから自分に持ってないものを持っている人をどこか無意識的に追いかけている人生だったと思います。そういう人と交流したり一緒にものを作ったりすることによって、その人が人生を通してやってきたいろんな文脈が徐々に自分の身に染み込んでいく。それで自分の人生がまた全然違う方向にちょっとずつずれていく。それが気持ちよくてしょうがないんですね。

ナタリー(前出)、米津玄師インタビューより抜粋

私の創るものはいつだって真似事で特別でもなんでもない、と劣等感が凄かった時期があって、だからこのインタビューを読んだとき、はーなんか、すげーな、すごいなあやっぱりという感嘆と尊敬と、これまでもこれからも捨てきれないだろう悔しさが湧いた。正直。この人のファンだと名乗るのにむず痒さがあるのはそのせい。いやファンなんだけども。紛うことなく。

米津玄師がこぼすこういう素直さが、私は、羨ましくもあり妬ましくもある。率直に嫉妬を吐くのが苦手なせいだ。そうして、ピースサイン、LOSER、TEENAGE RIOT、ひまわり、と選抜プレイリストに残ってゆくのだ。私がどこかに忘れてきた自らへの素直さを、衒いもなく詞にしているこの人を、私は身の裡に飲み込んでゆく。詞を食べていたら私もこうなれないだろうか。近ごろはそればかり考える。彼の音楽は、詞は、私にとってどこか餌じみている。

2020.8.26記事「あなたの音楽と詞が縺れるように

米津の音楽を聴いていると、昔日と現在が繋がっている感覚に陥ることが多く、それはこの人の創るものがいつも某かの積み重ねの上に成立しているからなのだろうと思う。道の上にいる。目には見えない誰かの物語と繋がっている。あるいはあの日の私が陽炎のように立ち上ってそこにいる。音楽の中ですれ違うのだ。ちらっと横目で見るときもあるしはっと残影を振り返るときもあって、邂逅する、眼差したその瞬間にそれらは消えて、だけど確かに火種になって、見ないふりをしていた感情が目を覚ます。そんな感じがする。emotionalという表現は言い得て妙。情緒を乱されるというか、彼の曲が感情の熾火になるのだ。M八七すごいよな。何なんだ本当に。何。

僕があの人に抱いてきた感情は尊敬や愛といった類のモノではなく、ただの恋心なんだと思います。

ナタリー(前出)syudouコメントより抜粋

あぁこれが恋だというのならそうかもしれないな。だけどその名前が適当だとも思えない。このままずっとぐちゃぐちゃなままでもいい気がする。


これからもっとすごくなっていくんだろう。ライブツアータイトル「変身」だもんな。いいな、ライブ行きてえな!
10周年おめでとうございます!

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