電車内のほんわか
昨日は痛ましい事件が起きましたね。
実は私も昨日,事件があった車両ではないものの久々に電車に乗っており,大変恐ろしく辛い気持ちになりました。
この事件に限らず,電車という密閉空間は怖いことが起こりやすい場所でもあります。痴漢やスリ,突然起こった見知らぬ人同士の口喧嘩…
息が詰まり,バクバクや涙が止まらなくなったことが私にもあります。
今回の事件も色々な意見が飛び交っていますが,私はとにかく,関わった方々の身体や心が少しでも癒されることを願うばかりです。
今回はあえて,同じ昨日という日に起きた,電車内でのほんわかした出来事について書きたいと思います。
電車自体が怖くなってしまいそうだけど,今後も乗らないといけない方々の心に,少しでも良いものが生まれましたら幸いです。
事の発端は,列車全体に響くほどの大きな叫び声でした。
「うーるーさーいーー!!!!」
優先席に,お母さんらしき方と小さな三人の子どもが座っており,その中で一番小さな女の子が泣き叫んでいたのです。
その子は特に何も言われていないように見えるのですが,ずっと「うーるーさーいー!!!!」と大声で叫んでいます。それ以外にも,「なんっで〇$?×ーーーー!!!!」と言葉にならない思いを訴えたり,「ぎゃーーーーー!!!!」と泣いたりするのです。
お母さんは他の子どもを落ち着かせつつ,その子を懸命にあやしていました。でもその女の子の勢いは止まりません。
乗客がそれぞれの表情で目を向け,車内の空気がどんどん張りつめていくのを感じました。私は,お母さんが感じているであろう焦りや申し訳なさがひしひしと伝わってきて,どんどんお母さんのことが心配になってきました。
隣のサラリーマン
私にはもうひとつ,心配なものがありました。私の隣にはサラリーマンのお兄さんが座っていて,熱心に書類を読み込んでいました。今思うと,営業先かどこかへ向かう途中だったのかもしれません。
その方は先ほどの女の子の叫びを聞いた瞬間,イライラしているような刺刺しいオーラを外に出し始めたのです。貧乏ゆすりが始まり,舌打ちをし,何度も女の子の方を見て頭をかきむしる。その度に書類に視線を戻すのですが,読み進められないのかまた舌打ち…
「お仕事を頑張るために書類を熱心に読もうとしているからこそ,集中できないことにイライラしているのかな」と感じました。なので,それが良い方向に向かってほしい気持ちもありました。
でもやはり,隣に座っている身としてはとても怖いのです。私に関係ないことは分かっているのですが,いつ怒り出してしまうかと心臓がバクバクしていました。
そんな時にふと,一人のおばあちゃんが目に入ったのです。
おばあちゃんとの通い合い
おばあちゃんは空いている席が見つからなかったのか,優先席に背を向けてなんとか立っていました。優先席も,泣き叫ぶ女の子と他の子ども,女性にベビーカーでいっぱいだったのです。
私はおばあちゃんに席を譲りたかったのですが,私達がいるのは車両のど真ん中とはじっこ。声をかけに行く間に私が座っている席は埋まるでしょうし,叫んだとて女の子の鳴き声にかき消されるでしょう。
私は,とにかくそのおばあちゃんをじーっと見つめました。こちらを向いてくれることを願いながら。すると,ぱっと目が合ったのです。
「今だ!」と思い,私は身振り手振り,マスクで見えるはずないのに口パクまでして,「ここ座りませんか??」と伝えました。はたから見たら,かなり滑稽な動きをしていたでしょう。
するとおばあちゃんは目を細めて,手をひらひらさせてペコリ。
その朗らかな表情と,今回は席が必要なかったことが分かり,私はほっとしました。
しばらく安堵の余韻に浸っていたら,先ほどのお兄さんが私を横目で見ながら苦笑いしていることに気が付きました。さっきまでのトゲトゲした感じはない,やさしい顔でした。
叫び声もいつの間にか止み,女の子はお母さんの腕の中にいました。
勘違いかもしれないけれど,私のヘンテコな動きでお兄さんのの張りつめた心が緩んだ,と直感的に思いました。嬉しさとちょっぴりの恥ずかしさで,じんわり心が温かくなりました。
嵐が去った後
電車が駅に止まると,他の沢山の乗客と共に,おばあちゃんとお兄さんが降りていきました。少し風通しが良くなった車内で,二人の一日が良い日になればいいなと願いながら,私は窓の外を眺めたのでした。
皆さんにも,電車内でほんわかした経験はありますか?
是非聞かせていただきたいものです。
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