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『誰かの思い出の場所を、その人と一緒に歩く散歩がしたい』/羽織虫with GUEST

次の散歩の場所を決めました。

 𝕏で羽織虫さんのつぶやきを目にし、「その散歩が一冊のZINEになる前に、前回前々回のシリーズを読まなきゃ!」とこの度遅ればせながらBASEにて『誰かの思い出の場所を、その人と一緒に歩く散歩がしたい』を購入した。

たった一度会っただけの相手とお互いの思い出の場所を訪問する


第一弾のGUESTは、むまさん。


 企画を聞いた時点で面白そうだと思った。思い出の場所で、当時の相手がその場所で生活していた姿を想像し目の前に残像を映し出す。
 想像は外れていたりするのだけれど、ぽつぽつと語られる記憶の断片から親しい間柄ではない人間の過去の輪郭が浮かび上がってくる様に、当たり前ではあれど「人にはそれぞれ背景がある」ことを改めて知る。
 そして散歩中にお互いがどう感じ、相手の表情やしぐさから推察を巡らせ「この人にはこんな一面や気質があるのでは」と文章に起こす観察眼が鋭い。

 最初は企画が成立するのか疑心暗鬼な思いが著者から見て取れ、読んでいる側も「どんな感じになるんだろう…」とちょっぴりそわそわした。しかし読み終えたときにはぼんやり沈んでいく夕陽を眺めたくなるような、ふと横を見てそこに羽織虫さんの横顔があったらなんかホッとしそう…という気分になった。

 また、地元から出て生活をした経験がなくひきこもり体質&調子に乗り都会に出れば「一秒前すら黒歴史」と化してしまう自分にとって、むまさんの「無理にエモくならなくていい」の一文がじわじわ過去に浸透していったのだった。

第二弾のGUESTは、針山さん。


 羽織虫さんとはわたしも面識がある。
 と言っても、昨年の文学フリマ、今年の5月に開催された読書会のたった2回。GUEST著者として登場する、むまさん、針山さんとはまったく面識がない。

 せっかくなら外で読みたいと思ったわたしは、中央線の車両に揺られながらこの二冊に目を通した。(奇しくもこの沿線が思い出の場所に登場する!)
 脳内で思い出したり写真を見たりするだけでは、蘇らない記憶ってあるんでしょうね。思い出の場所にたどり着くまでの道のり、空気感、流れてくる音、香り…。自分が行くとしたら何処を選ぶだろう。思いのほか己のなかにあった深い傷を見つけてしまう場合もなきにしもあらず。それでも「ここが思い出」って言える場所は何処だろう。
 車両で出くわした人たち一人ひとりの胸にも、きっとしまわれている「思い出の場所」。

 羽織虫さんは「自分のすべてに自信がない」と記している。人との距離感が掴めない、相手の感情をうまく読み取ることができない、等々。「わかる」なんて安易に言うのはおこがましいけれど、同感する。それらに「あがり症」をプラスしたらわたしの自己紹介にもなりそうなくらい。
 「ふと横を見てそこに羽織虫さんの横顔があったらなんかホッとしそう…」と先程書いたのは、無理に言葉を交わさなくとも頷き合うだけで心強くなれそうな気がしたからだ。お互いの感情を読み間違えながら頷いていたとしてもいいじゃないかって。

 急行が止まる駅の最寄りから、新しい「誰おも散歩」シリーズを楽しみにしています。 


【著者情報】
・羽織虫さん

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