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これでいいのか

致知 7 月号 関東致知教師木鶏会 感想文

■「これでいいのか」漠然とした批判的なタイトルであるため,それぞれの記事は捉え方も落とし所も異なる。予測不可能な時代,多様な考え方が存在するのは当然である。だからこそそれぞれを読み比べ,自分の立場で共感できる記事を抽出する作業は大切である。まず,私が共感できたのは思風庵哲学研究所所長 芳村思風氏の次の言葉。

いま人類に求められているのは,戦って勝つことに最大の価値を置いた文明を乗り越えること

さらに氏は,勝つことより素晴らしい、美しい生き方を次のように結んでいる。
考え方が違う人とやっていける、価値観が違っても一緒に仕事ができる。違いがあっても助け合い、教え合い、学び合ってやっていける。
これは,今月号「致知」それぞれ記事の主張が多様に分かれることにも関連する。

■令和 5 年度の千葉県の小学校教員採用試験志願者の採用倍率は 2.5 倍。昨年同様である。昨年同様 の低倍率となった。他県においても,直前まで 1 倍を切っていた熊本県で 1.3 倍,大分県については 最終倍率 1.0 倍と全国的に教員不足である。先日,千葉でも各家庭に教員募集のチラシが配布され た。求人募集サイトにも掲載している地域もあるそうだ。これには様々な要因がある。長年その場そ の場を講師で充てて使い捨ててきた短期的対処。それに伴い近年若手を大量に採用せざるを得なくな ったことによる産休・育児休暇の増加。少人数学級や特別支援学級増による配置,小学校専科教員の 配置など多様に教員を必要とする社会的ニーズも原因であろう。

■しかし,若い世代の教員離れの根本的な要因は別にあると考える。それは、若者のキャリアの価値 観に学校現場のが追いついていないということである。先日、ICT 教育を授業に積極的に取り入れ、 現場や市内でも大きな影響を与えている 30 代の教員と話をしていたが、若手の採用が不足する以前 に、新たな発想で学習を作り出せる力のある仲間が、学校現場を離れている傾向にあるということも 話題になった。

■力のある教員が学校現場を離れていく 20 代〜30 代が「Y 世代」であり、幼い頃からデジタルツー ルを使いこなしている。また今まさに新規採用で入り始めている 1996 年生れ以降の若者以降が「Z 世代」であり、幼い頃からソーシャルメディアを使いこなし、彼らは新たな価値観を当たり前と感 じ、人のつながりや多様性を大切にするソーシャルネイティブな若者たちである。

■これらの若者の価値観は何か。それは、「個人主義、市場原理主義。頑張ったものが報われる」から、「無理は破綻を招く、人が繋がり、持続可能な価値を生む」への変容である。

■では、若く活力のある人材を増やしていくために、学校はどのように変わるべきか。
ビジネス・ブレークスルー大学教授 齋藤徹氏は、著書「だから僕たちは、組織を変えていける」において、次のように述べている。

「自律的に動く能力のある社員」ほど「自律的に動ける組織」を望んでいる。

今の学校の働き方改革は、ライフ・ワークバランス、つまり、「組織に従属し、ライフとワークのバランスを取る生き方」を抜けきれていない。しかし、今目指すべきは教員が「選択肢を広げ、学び続ける、ライフもワークも楽しむ生き方」である。子どもたちのためなら時間と努力を厭わないという聖職説を掲げ、教員による滅私奉公で学校運営が実現するというワークの考え方をスッパリと切り捨
て、システムを変えるという行動とアピールが必要なのである。これを実現させるためには、教員一人一人が、時には家族との時間を充実させ、時には書を読み、時には趣味に熱中し、時には外部社会団体・企業と繋がり人生を豊かにし、ネットワークを広げていくライフの時間を確保することだ。

■そして、教員はこれらの豊かなライフをから見出したスキルを蓄積していき、時にこんな経験を子 どもたちに語ろう、ネットワークで築いた人材を授業や学級・学校経営に活かしていこうと考える。 それこそ教員個々の魅力となり、自律的に動ける教員集団になっていく。教員の魅力はそれぞれ違っ ていい。実力のある魅力的な Y 世代の教員が学校現場に残り、また、魅力ある職業として Z 世代の若 者が教員を目指すようになる。

■まず、私が考える第一の手段としては、研修・修養の自律化である。「主体的な子どもが育つため の○○」から、「主体的な教員が育つための○○」に思考を変える。7 月 1 日にいよいよ免許更新制 度が解消されたが、私はこれを教員が自ら生涯の研修テーマを設ける絶好の機会だと考えている。リ ーダーは学校のビジョンを打ち出し、丁寧に説明して理解をはかる。そのビジョンを実現するために 教員各々が一斉教科や指導法に縛られず、得意で伸ばしたいこと、またはこれからスキルを身につけ たいこと等を研修テーマにして、自らコーディネートしていく。学校という枠を超えて、全国の教員 とつながったり、企業セミナーに出たっていい。管理職はこれを支えることが重要なのだ。それら教 員の良さを皆が共有し尊重して、年齢差を超えて教えあったり、支え合ったりする。

■確かに自律的な教員集団にしていくことは長期的な展望であり、時間がかかる。しかし、これまで短期的な応急処置で多くの若く有望な教員を失ってきたことを考えると、早急に始めていかねばならない。

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