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花祭りを盛り上げたい

 明日、4月8日はお釈迦様の誕生日だ。
 この日は各地で花祭りが行なわれ、その誕生日をお祝いしている。

 だが、この花祭り、残念なことにそれほど盛り上がってるようには見えない。あとからやってきたハロウィンは、渋谷のスクランブル交差点にあれほどの人を集めるというのに、花祭りでDJポリスが出動したいう話は聞いたことがない。

 花祭りと同じく、クリスマスもイエスキリストの誕生日を祝うものだが、その盛り上がり方は桁違いだ。
 もし、釈迦とキリストが、一般家庭の普通の兄弟だとして、誕生会の盛り上がりにこんなにも差があったらどうなるだろう。釈迦は、きっと心に深い傷を負うはずだ。

「イエスの誕生日はこんなに盛大なのに、何で俺の誕生日は甘茶をかけるだけなんだよ!」

 そう言って、家を飛び出し、盗んだバイクで走り出してしまうかもしれない。そうならないためにも、ここは何とか花祭りを盛り上げなければならない。

 考えてみると、クリスマスやハロウィンといった外国のお祭りは、皆で楽しめる華やかさがある。

 クリスマスは、サンタクロースがプレゼントを持ってきてくれるし、ハロウィンは「お菓子くれないと悪戯しちゃうぞ」と言えば、大人からお菓子をもらえる。外国のお祭りは「何かもらえる」お得感が満載だ。

 夕飯の献立が立てやすいというのも、家族で楽しめる理由のひとつだと思う。
 クリスマスはチキンとケーキ、ハロウィンは洋風のかぼちゃ料理など、ちょっとした定番がある。関西限定だった節分の恵方巻が、瞬く間に全国統一を果たしたのは、節分の日の献立に、太巻きを掲げて乗り込んできたからだ。

 そういった食べ物を、お祝いのメインに据えられるのは、様々な行事において、大きな強みだといえる。

 一応、釈迦にもゆかりのある食べ物が存在する。

 日本に、スジャータという乳製品を扱うブランドがあるのをご存じだろうか。そのブランド名の由来は以下の通りだ。

 「スジャータ」とは修行中にお釈迦様に乳粥を差し上げたインドの娘さんの名前で、それを飲んだお釈迦様は疲労回復されたのち、悟りを開かれたといわれています。
 スジャータという商品名には、みなさまにコーヒーをよりおいしく召し上がっていただくためのフレッシュでありたいという願いが込められています。

めいらくグループホームページより

 これを見てわかるように、釈迦と縁がある食べ物は、そう!

 乳粥ちちがゆ

 である。
 名前だけ聞くと、いかにも病み上がりの食事のようで、全く食欲をそそられないが、この乳粥。またの名をライスプディング(ライスプリン)といい、れっきとしたスイーツなのだ。

 私がこのライスプリンを初めて食べたのは中学生の頃だった。
 家族でインド料理屋に食事に行ったとき、お店の人に勧められ、食べてみたら、これがまあ、べらぼうに美味しかったのだ。

 その後、お店に通ううちに、店主が、
「そこまで好きなら」
 とレシピを教えてくれた。母の作るライスプリンは、私の大好物だった。私は冷やした物しか食べたことがないが、温かくてもきっと美味しいだろう。

 近年、牛乳と米の消費が減っていると聞く。
 ライスプリンは、人によって好き嫌いがわかれる食べ物らしいが、あのパクチーだって、今や薬味としての地位を確立している。もしライスプリンが、パクチーのようにブームになれば、牛乳と米、両方の消費を促すことができる。しかもライスプリン経由で、花祭りがメディアで取り上げられるようになるかもしれない。まさに一石二鳥である。

 これで、飛び出して行った釈迦も、バイクを盗むことなく、家に帰ってきてくれることだろう。そう思っていた矢先、私はスーパーの一角に、卵型のチョコレートなどが山積みされているのを見かけた。なんだろう?と近寄ってみると、そこには、 

 今年のイースターは4月17日! 家族でイースターをお祝いしよう!

 と書かれたポップが貼ってあった。イースターとはイエスキリストの復活祭のことだ。私は思わず、

「花祭りは?!」

 家族連れが賑わう店内で、そう叫びたくなった。

 にじり寄ってくるイースターにおののきつつも、仏教徒である私は、お釈迦様のためにも、何とか花祭りを盛り上げたい。そんなことを思う今日この頃なのである。



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