自分に厳しい猫はいるのか
2022年2月22日
こんなにも「2」が並んだ日付を見るのは、生まれて初めてのことだった。それもそのはず、「2」が6つも並んだのは、1222年2月22日以来、800年ぶりのことだそうだ。
日本では、2月22日は猫の日と定められている。特に今年は「スーパー猫の日」と言われ、猫にまつわる話題が尽きない一日であった。
そんな、スーパー猫の日に、夫は猫のように四つん這いになって背中を伸ばしていた。
「これから仕事だっていうのに、随分と入念なストレッチだね」
私が言うと、
「仕事だからだよ。猫だって、寝て起きた後は、にゅーんって背中を伸ばしてから、歩き出すでしょう? それと同じだよ」
そう言って夫は立ち上がり、今度はふくらはぎを伸ばしている。夫にとって、これらのストレッチは、これから仕事に向かうための準備運動だ。
「まぁ、それにしても、猫ってやつは自由だよね」
夫がしみじみ言う。
猫は背伸びをして、数歩歩いたと思ったら、またコロンと寝てしまったりする。野良猫は雨風をしのぐために苦労することもあるだろうが、人と共に暮らす猫は、一日中のんびりと過ごしている。家猫の苦労は、時折、動物病院に連れていかれることと、飼い主の執拗なスキンシップに耐えることくらいかもしれない。
これから仕事に向かわねばならない夫にとって、猫は一層、自由気ままな存在に思えるのだろう。ふと、視線を宙に浮かせ、
「自分に厳しい猫っているのかな?」
そんなことを言っている。
「どうだろうねぇ」
返事をしながら、私は「自分に厳しい猫」というものが、この世に存在するのかを考えていた。
私たち夫婦は、これまで動物を飼ったことがない。
だから、猫が自分に厳しい生き物なのかどうか、全くわからない。犬は、飼い主に「待て」と言われたら、大量によだれを垂らしたまま食べるのを我慢したりするので、自分に厳しい、と言えるのかもしれないが、実際、猫はどうなのだろう。
こんなことしたら、絶対にダメにゃ!
そう強く思い、決して道を踏み外さない。そんな、自分に厳しい猫はいるのだろうか。自然のままに生きている猫は、自分に必要以上の制限をかけることもないだろうし、自分へのご褒美と言って、いつもより豪勢な食事をすることもない気がする。自分に厳しくしたり、甘やかしたりを意識的にやろうとするのは、人間特有の行動なのだと思う。
私がいちいち、こんなことを考えるのは、たぶん猫と暮らしたことがないからなのだ。一度でも猫と暮らしたことのある人ならば、
自分に厳しかろうと甘かろうと、そんなこと関係なく、猫は尊い。
そう思いながら、恍惚とした気分で、愛猫の背中を撫でるのだろう。私もいつか、猫と暮らし、その背中を撫でる日が来るのだろうか。もし、そんな日がきたら、そのときに、自分に厳しい猫がいるのかどうかを、もう一度考えてみたい。
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