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花丸恵の食べたり呑んだり作ったり

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自分が書いた食べ物やお酒などに関するエッセイをまとめました。 食べた感想だけでなく、食べ物に関して疑問や思ったことなども書いています。 今後もどんどん追加していきます。 食いしん…
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#ご当地グルメ

辛さ炸裂!「すりだね」を作る。

 私は辛いものが好きだ。  日常生活はできるだけ刺激なく、安穏と暮らしたいと思っているのだが、時折、舌には強烈な刺激を求めてしまう。中学生になった頃には既に、そんな刺激を求めていた記憶がある。  かつて「とんがらC」という、カプサイシン入りの飲み物があったのをご存じだろうか。1999年頃に大塚製薬が発売した飲料水で、飲むと甘いのに舌に少し辛さが残るような、不思議な味わいの飲み物だった。家族はマズイと言って二度と手を出さなかったが、私はその辛味が気に入り、入手不可能になるまで

まぼろしのホッケ

 昭和59年11月3日文化の日のことである。  当時、小学一年生だった私は、母とふたりで都内某区で行われたイベントに出掛けた。メイン会場である公園へ行ってみると、色づく銀杏の木の下には、たくさんのテントが並び、何か焼いたり揚げたりしたような香ばしい匂いが漂っている。どうやら日本各地の名産を売っているらしく、お店の人の掛け声が賑やかだった。  食べ物に目がない母は、目を爛々と輝かせながら、美味しいものを見逃すまいと鼻息を荒くしている。そんな母に、私は小走りでついて行くのやっと

ビタミンちくわはツレナイやつ

 私は埼玉県民である。  スーパーが点在し、コンビニもあり、徒歩圏内である程度の食べ物や日用品を揃えることができる。大変ありがたい環境下で暮らしていると自負してはいるが、そんな埼玉の暮らしに100%満足しているかと問われれば、そこは「否」と答えなければならない。  例えば、エコバックをぶら下げて買い物に行く。  そろそろ寒くなってきたから、おでんもいいねぇ、などと思いながら、練り物売り場に立ち寄る。さつま揚げ、はんぺん、ゴボウ巻き、馴染みのおでん種に視線を送り、チラリとちく

銘菓を好むお年頃

 お盆休みが近づいてくると、スーパーやデパートなどでは、帰省土産の販売に精を出しはじめる。  箱詰めされたゼリーや水ようかんが涼しげで、クッキーやおかきの詰め合わせなどを見ていると、帰省もしないのに、つい買いたくなってしまう。  東京土産で有名なのが、昔からあるものだと人形焼きや雷おこし、芋ようかんなどが思い浮かぶが、近年は東京ばなななども定番になっている。  京都は八つ橋、福岡だと博多通りもんなど、各地様々なお土産用のお菓子がある。各地域ごとに、おらが町のお菓子、というも

福岡で食い倒れたい

 自分には、あとどれくらい旅をするチャンスが残っているのだろう。  四十を過ぎて、そんなことを思うようになった。  限りある命、行ってみたいところは山ほどある。それなのに、知らない町を旅することが、年齢を重ねるごとに億劫になってきた。夫婦揃って方向音痴のせいもあるかもしれないが、何度も訪れた馴染みの場所は、事前準備も少なくて済むので気が楽だ。  しかし、そうはいっても、一度も行ったことのない場所に足を踏み入れてみたい。そんな思いは募る。夫と今度旅するならどこに行きたいか、そ

こっそりうどん県

 どうも、失礼します。埼玉県民です。  私は現在、東京都出身と言っているが、生まれてすぐは、埼玉の某市に暮らしていた。そこからすぐ父の転勤で、大都会の渋谷区に引っ越すことになるのだが、まだ目が開かない頃、私は埼玉県に住んでいた。もし埼玉が望むならば、私はいつでも埼玉出身を名乗るつもりでいる。  おそらく、埼玉の方から「別にいいや」と、お断りされそうなので、あえて「名乗ろうか?」と、お伺いを立てるつもりはないが、この埼玉暮らしを、私自身結構楽しんでいる。  埼玉の良さは何と

春はますずし

 「春はますずし」  富山名物の駅弁「ますのすし」を頬張りながら、夫がそんなことを言い出した。  千年の時を越え、清少納言から著作権侵害のクレームが飛んできそうな一言だが、夫の言うとおり、ますのすしは色もほんのり桜色で、春にぴったりの食べ物だと思う。  ますのすしは、笹の葉にくるまれている。  小さな木製のわっぱには酢飯、その上に鱒が乗っている押し寿司だ。付属のプラスチック製のナイフを使って、等分に切り分けて食べるその様は、寿司界のホールケーキといっていい。  まだま

節分に豆菓子はいかが?

 この前、年が明けたばかりだと思っていたのに、明日は何と、節分だそうだ。生きていると、いろいろなことに慣れていくものだが、時間の速さは、いつ何時でも私を驚かせに来るので油断ならない。  節分といえば豆だ。  昨年の今頃、スーパーで小学校低学年らしい男の子が、 「お父さん!節分の豆買ってよ」  そう言って、お父さんの袖を掴んで引っ張っていた。 「えぇ?この前買ったじゃないか。そんなに買っても食べきれないよ」  お父さんは、少し驚いた様子で男の子を見る。 「ボク、豆好きなんだよ

きりたんぽ鍋騒動

 その日、日本酒を買ったので、熱燗にきりたんぽ鍋としゃれこもうと準備をしていた。普段、きりたんぽ鍋はそんなに食べないのだが、柔らかく炊けてしまったご飯を冷凍してあったので、それを消費するために、きりたんぽを作ってみる気になったのだ。  ご飯を解凍し、ボウルに入れて木べらでぐりぐり潰し、片栗粉を入れてさらに潰した。水で湿らせた短めの菜箸に作った生地をまとわせ、魚焼きグリルで丹念に焼く。半額だった鶏もも肉のひき肉で肉団子を作り、その汁でもも肉を煮た。  ゴボウやマイタケ、長ネギ

埼玉、千葉県の特産品に手を出す

 「ねぇねぇ、見てこれ」  夫がホクホク顔で、私に買い物バックの中身を見せた。  そこには大人の握りこぶし大のビニール袋が3つ。中には落花生が入っている。  「あら、どうしたのこれ?」  「いつもの農家さんの無人販売に置いてあったから、買ってきた」  数年前に東京から埼玉に越してきたとき、無人販売所の多さに驚かされた。販売所と言っても、普通のお宅の軒先に野菜が並んでいる簡易的なものだ。ちょっと心許ない鍵付きの木箱が野菜の横に置いてある。その箱には貯金箱のように小銭が入れられ