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第37話 自閉症とクローン病

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同級生にイナちゃんという男の子がいました。
病気は自閉症です。自閉症とは、人とのコミュニケーションが苦手で何かに強いこだわりをもつ特性があるのです。

イナちゃんは、朝の挨拶を皆からされても返事はありませんし声を知りませんが、地理・歴史には強く、いつもテストで90点以上をとっていました。
なので、皆から一目も二目も置かれています。

「おー!さすがイナちゃん。」
と皆から尊敬の眼差しです。

私は地理・歴史に強く興味が持てないタイプなので、声も出せないほど驚嘆に値します。
皆から賞賛されている時のイナちゃんは、下を向き何も言いません。逆にそれがイナちゃんの存在感を増すことになっているのです。

イナちゃんが普段、何を思い何を感じて生きているのか、誰も知らないのです。親御さんは知っていたのかな?主治医はどうなんでしょうかね?
何しろ笑った顔も知らないです。

そうだ!音楽の時間は?歌はどうだったんだろう?私はアルトで、少し低め。イナちゃんは、声を少しでも出せてたのかな?自分なりに楽しめていたならいいけどなー。

クチナシ
香りは濃厚に甘く華やかです。
控え目でも、存在感は強いのです。

そんなイナちゃんが、クローン病になってしまったと小川タカ子先生から伝えられました。クローン病とは、口から肛門までの食べ物が通過する所の消化管のどこかで炎症が起きて、潰瘍ができ出血と痛みや下痢を引き起こす病気です。難病指定されています。

なんでイナちゃんが?症状スラスラ言えないのに?次の言葉が出てきません。
筆談は?できるのかな?
クローン病は若い人に起こりやすい病気で、ジューシーな脂の多いもの、ポテトチップスや唐揚げなどの揚げ物中心の食生活を続けていると危ないです。

でもイナちゃんは病棟に入院していて、食生活は管理されていたはず。。背は高くはないですが、太くも細くもないです。どうしても納得など出来ません。皆と卒業式をちゃんと迎えれて良かったです。

卒業後は私はイナちゃんにも年賀状を出していました。そしてイナちゃんからの返信も来ていました。
「僕は元気です。」
と、一言の毎年同じ文章でしたが無事を確認していました。

30代後半の年末です。イナちゃんが亡くなったとの喪中はがきが来たのです。
(え?!去年、僕は元気ですって、来てたのに。。)
イナちゃん!!もう、いないの?
症状言えなかったの?!伝えられなかったの?!

そんな。。。

皆のイナちゃんなのに。。
自分の手の平ですくった綺麗な砂が、音もなく隙間から落ちていく。そんな感覚。。

イナちゃん、痛かった?辛かった?食べられなかった?
教えてよ。
もう、いない。。

イナちゃん、あの世では喋れるのかな?
ちょっと待ってて。
頑張りきってから、そっちに逝くから一緒に声出して笑おうよ。
またね!


心はいつでも傍にいる。
きっと呼びかければ、来てくれてる。
見えなくても。
年賀状、ありがとう。

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