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第38話 薔薇の蕾の様な転校生と出来てきた自律

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養護学校高等部3年生の頃でしたか、転校生が来ました。
担任の小川タカ子先生が
「薔薇の蕾みたいな子よ。」
と評した通りの女の子でした。色白で魅力的な顔立ち。髪は金髪に染めていました。

始めは机に突っ伏して、ちゃんと授業を受けてない様子で、心に何かを抱えてきた事がわかります。名前はイチノです。

イチノは、だんだん養護学校になれて友達も出来ました。笑顔で薔薇の花が開花していきます。

イチノの家は養護学校から近いことがわかりました。酒屋さんの娘さんでした。緑色のMOSCHINOのバックに教科書を入れて登校してきます。色々と型破りをするのが怖くない様子です。ピアスの穴もありキラリと光っています。

サクラソウ
ご近所の庭の隅に咲いていました。

年齢的に自分と比較してしまう子、比較しない子、憧れる子、色々でしたがイチノはちゃんと自分を生かし、養護学校で心の元気さを取り戻していきました。家が近いこともあり、入院はしてませんでした。

私ですか?私はイチノに憧れはありました。でも比較をすることは無かったです。我が道を行くタイプですね。生きていく為に、覚悟と度胸を養っていたように思います。イチノにピンクのピアスをプレゼントしたのを覚えています。

ある日のことです。同級生が登校してきた私に
「華ちゃん、まつ毛ビューラーしてる?」
「?してないよ。」
私のまつ毛は天然で上がっているんですが、透析の次の日は浮腫も無いので、余計に上がって見えたのでしょう。その前に、ビューラーを知らなかったです(笑)

またある日のこと。同級生が
「華ちゃん、ちょっとごめん。」
廊下を歩いていた私を引き止めました。駆け寄ってきた同級生が、私の上着の裾を引き締めて、ウエストをみる行為をしたんです。
その同級生は喘息の子で、病棟が違い一緒にお風呂に入った事が無かったんです。腎臓と膀胱に計3本の管がある事も知らないはずです。

途端
「わーーー」
周りの声が立ち上がり、私は行為と声に驚き、周りから逃げる様に教室に飛び込みました。人と比べずにいられないって、疲れるしやめませんか?忘れられない出来事でした。

私は、あと何回手術するのか?この体でいつまで生きれるのか?自分の両手の平を見ながら、そう考えていました。学校の廊下で。
綱渡りの様な人生を感じていたんです。平均台のような太さは無い。

元から人とは違う人生です。比べる事ほど無駄で気力を奪うものはありません。
不安を抱えつつ、廊下から窓の景色を見ていました。卒業する日が近づくほど、見ていました。

未来に希望を持ちながら、大きな不安だって消せれない。でも生きていく、温室のような養護学校の外へ。勇気を出して。


ゆっくり覚悟と度胸を付けれた。
廊下からの景色は、忘れないね。
中学3年生から転校してきて、良かった!

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