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【ショートショート】ぼくのセミライト

ぼくは街路樹の幹に手を伸ばして、それを手のひらで覆って捕まえた。みーんみーんと鳴いている。セミだ。眩しく光るセミ。

珍しい虫がいるものだ。しかもこんな都会に。さっそく家に持ち帰った。


小さなころに使っていた虫かごに入れると、おとなしく光っている。セミの光は強いけどどこか温かみのある色で、薄い布をかければまるでおしゃれな間接照明のようだ。

デスクライトならぬセミライトとして使い、夏休みの宿題をした。漫画を読むときにも、動画を観るときにも、セミライトで手元を照らした。

ぼくが使っているときは不思議とずっと光るし、鳴かない。賢いらしい。


そして7日後に死んでしまった。

珍しいやつだったけど、ごく普通のセミの一生だったんだな。

ぼくは庭に穴を掘ってセミを埋め、上に石を置いて手を合わせた。虫に手を合わせるなんて何年振りだろう。


その夜のバラエティ番組で、自然と触れ合えると人気の娯楽施設を伝えていた。その中の一番の人気スポットが紹介される。

そこでは人工的に光る装置を埋め込まれたセミたちが屋内の木々にとまり、訪れる人たちを温かい光で照らしていた。


#物語の発想法を学ぶ #ショートショート #セミ #夏休み

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