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※途中で番外編が入りましたが、⑦~みんな~の続きです※

「社長っ!?」
「あれ、君たちもここ知ってたの?」
「知ってるもなにも、私たちはお弁当持ってランチに来たり、夕飯食べて帰ったりしてますし、課長はここでお花を習ってたのを今日知ったところですよ。社長はもともとお知り合いなんですか?」
「橘姉妹とは幼馴染みだから。ここのばあちゃんにも可愛がってもらったし」

「この3人が上司と部下だって知って驚いたところだったのに、まさか真吾の会社だったとはね」
「部下の前で呼び捨てにするなー」
なんか紫乃さん優勢だなぁ。しかし幼馴染みだったとは!

「それで今日はどうしたの?」
「いや、カレー屋に行ったら忙しそうだったから、何か知ってるかと思って。前にのぞみのマンションで養蜂やるって言ってなかった?」
「そういえば銀座(※)に見学に行ってたわね。落ち着いたらこっちに来るように言おうか」
「おー、頼む。今度のビルのオーナーが屋上で養蜂したいって言っててさ、うちの会社も何かできないかなと思って。ね、俺にもチャイくれない?」
しょうがないわね、と笑って紫乃さんがチャイを淹れに行った。

「社長、ビルで養蜂を始めるんですか?」
課長が聞く。そうだ、私たちも仕事が増えるかも。
「どうすればできるのか調べているところ、ぐらいかな」
「都市型養蜂って一時期話題になっていましたね。銀座から渋谷や自由が丘にも広がって」
さすが課長、よく知ってるな。思わず、タケちゃんと目くばせする。

「あの、社長」
この際だ、言ってしまえ。
「ん?」
「養蜂をすることになってもならなくても、会社のためにもいいかなと思うことがあるのですが」
「うん、続けて」
「前の公園の花壇で、スポンサーを募集しているんです。自分たちで花壇の手入れはする代わりに、会社の立て札を立てられるんですよ。よく社名入りのベストなんかを着た人が清掃活動しているじゃないですか、感じが良いし宣伝にもなるかな、って。もし養蜂するなら蜜源にもなりますし」

「のりこ先輩、すごいです!私もお手入れしたい!近所の人も来るから、ちびっ子も興味持ってくれそうですし」
「社長、公園の管理事務所に問い合わせてみましょうか」
「いいアイディアだね、笹川さん。じゃあ下山さん、条件とか費用とかよろしく」

花壇の空きは今2つのよう。2つとも借りられたら、一つはお花にして、もう一つはハーブにして、公園に来た人にハーブを自由に摘んでいってもらうようにしたらいいなぁ、などと盛り上がる。

チャイを手に紫乃さんが戻ると同時に、のぞみさんも来た。
「お待たせ、しんちゃん。久しぶりね」
「しんちゃんって言うな」
「のりちゃんとタケちゃん、真吾の会社だったのよ」
「は!?そうだったの!?」
「こちらは下山さん、お花の生徒さんなんだけど、二人の上司だったのよ」
「俺だって、来たらうちの管理部が皆いるからビックリだぜ?」

「それで、養蜂の話が出てるの?」
「そう、ビルの屋上でできないかってオーナーが。で、前に銀座のミツバチプロジェクトの巣箱見学に行ってたなと思い出してさ」
「あの時は頓挫しちゃったけど、こっちもちょうどまた話が持ち上がっててね。屋上のハーブガーデンも定着したからって。また巣箱見学があったら行こうよ。前に名刺交換したはずだから探してみるね」

なんだか、社長の顔が優しい。もちろん、私たちにも厳しいだけの人ではなく、良いところはきちんと認めてくれる人だ。
紫乃さんやのぞみさんは妹みたいな存在なのかな。幼馴染みっていいな。

社長とのぞみさんはカレー屋へ移動した。
「なんか社長とのぞみさん、兄妹って感じですね」
「タケちゃんも?私もまさにそう思っていたところ」
「人には色々な面があるわねぇ。でもまあ、私たちへの社長の態度が妹扱いだったら、それはそれでおかしいわよね」
「課長……それはちょっと気持ち悪いです」

(※銀座ミツバチプロジェクト)

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《ひだまり公園シリーズ》
① メンタル収納スペース
② こちら、ひだまり公園前 ~接近~
③ こちら、ひだまり公園前 ~花~
④ こちら、ひだまり公園前 ~隣人~
⑤ こちら、ひだまり公園前 ~ココロ~
⑥ こちら、ひだまり公園前 ~エイヨウ~
⑦ こちら、ひだまり公園前 ~みんな~
⑧ こちら、ひだまり公園前 ~番外編:伝統①~
⑨ こちら、ひだまり公園前 ~番外編:伝統②~

#創作 #ひだまり公園 #なんとなくシリーズ化

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