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タケちゃんがなんだかやる気満々だ。
2回目のアクセサリー販売会の日程が決まって、しかもチラシを手渡して
「今度はお客さんとして来て下さい!」
なんて言う。

接客を手伝って下さいと言われなかったことが、ちょっと寂しいような気がする。だけど、今回はこのカフェの方で会計はやってもらえるらしく、それなら作り手としてきちんとお客様に向き合ってお話ができるから、と言われると、出る幕がないものね。

「のぞみさんが私の作品を買って下さってたんですよ。とってもお似合いで、ああ試着の段階から見たかったな~なんて思って。
実はね、のりこ先輩。私、のぞみさんのカウンセリングを受けてみたんです。劇的にどうこうというものではなくても、ちょっとこう……頭の中が整理されたというか。それで、まずはアクセサリー制作を頑張ってみようかな、って」

タケちゃん、ここのところ急に成長したなぁと仕事の面でも思っていた。置いていかれそう。

「下山さんはまたお仕事帰りなんでしょう?お疲れじゃないの?」
「仕事で忙しくてお花をお休みした時の方が、かえって疲れましたよ。毎週同じ曜日にお稽古という方が良いみたいです」

もうお子さんも独立したという悠々自適のマダムには、仕事もやって、更にお稽古事もやってという生活は考えられないらしい。

「お花に触れるのは、ヒーリングの効果もありますからね」
他の生徒さんの手直しをしながら、講師でありカフェ店主の紫乃さんがにこやかに言う。
本当にそうだと思う。お稽古が早く終わった時は、ハーブティが振舞われることもある。生活に取り入れるちょっとしたヒントを頂いて、家でも試してみるのが楽しい。

「そういえば、まだ会社にも小さいお花を飾っているんですか?」
「はい、続けています。最近は職場の子たちもお水を足してくれたり、お花の名前を聞いたりするんですよ」
「あら、コミュニケーションにも一役買っていますね」
「本当に、お花様様ですよ」

今日はお茶タイムなしでそのまま帰宅することにして、階段を降りた。

「課長!?」
のりこ先輩の声に振り向くと、課長が驚いた顔で見ていた。

「あなた達……えー?もしかして、よく行くカフェってここだったの?」
「そうなんです。課長は紫乃さんからフラワーアレンジを習ってたんですか!?」
「そうよ、移転前の下見に来た時にここを見つけてね」

「ちょっとぉ、知らなかったわ。みんな同じ会社だったのね?」
私たちにはお代わりのお茶を、課長にはハーブティを、紫乃さんも驚きつつ持ってきてくれた。
「そうです、私たちの課の課長です」
「しかも上司と部下だったなんて!でも良かったわ、私、職場の愚痴なんて聞いたことがなかったもの」
紫乃さんはニコニコして行ってしまった。

「えっと……課長は下見の時にここを見つけて、のりこ先輩は課長に頼まれたお遣いの時に見つけたんでしたよね?」
「そう。しかも私、実はレンタルをメンタルと読み違えてたの。おかげで癒されたけど」
「お遣い頼んで良かったってことね。武石さんは?」
「この近所に用事があった時に、のりこ先輩の姿が見えて。そしたらレンタルボックスがあったので私の作品を置いてもらったんですよ。あと2Fのギャラリーで展示販売をやったり。あ、またやるんですよ、課長も是非!」
「紫乃さんの妹さんとお友達がこの近くでカレー屋さんをやっているので、そこもよく行ってますよ」
「私は妹さんのカウンセリングを受けました!」
「あら、知らないうちにみんなでお世話になってたのね」
「ホント、みんな!」
アハハと笑った。

「ちゎーす」
「あ、噂をすればそのカレー屋の常連さん兼マンションの管理人さん」
「これ、のぞみさんから差し入れです」
「えっ、カレー!?」

「私からはチャイよ~。向こうは今、満席なんですって。だからこっちで寛いで。タクミくん、ありがと!では皆さん、ごゆっくり~」
「本当に、お世話になっちゃうわねぇ」

課長がしみじみ言いながら皆でカレーに口をつけたその時、また誰かが入ってきた。
「よー、紫乃。久しぶり」
「あら?珍しいわね」

「社長っ!?」


《ひだまり公園シリーズ》
① メンタル収納スペース
② こちら、ひだまり公園前 ~接近~
③ こちら、ひだまり公園前 ~花~
④ こちら、ひだまり公園前 ~隣人~
⑤ こちら、ひだまり公園前 ~ココロ~
⑥ こちら、ひだまり公園前 ~エイヨウ~


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