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【読書】茶の湯の歴史を問い直す──創られた伝説から真実へ

1月下旬に『本阿弥光悦の大宇宙』の講演会を聴きに行った時に、茶の湯の歴史が見直されている話も聞き、ようやくその本を読むことができました。

編著に携わった方が「鈍器と呼ばれています」とおっしゃった、444ページは厚み2.7cmでした。家だけでは読み切れないので、平気で持ち歩きましたけれど。

今は通勤に7駅地下鉄に乗るので、この16分が貴重な読書時間です。

サブタイトルが『創られた伝説ストーリーから真実ヒストリーへ』。茶の湯の歴史とされてきたものは、近代になって誰かが定義づけたものが元になっていたのですね。

この本では、色々な分野の専門家が検証していきます。編著のお二人のうち、お一人は日本中世史、日本喫茶文化史が専門。もうお一人の三笠景子さんの講演を聴いたのですが、東洋陶磁史がご専門です。喫茶の文化から、陶磁器から、考古学から、宗教から ──(あと何だったかな)複数の分野から茶の湯を見つめ直します。

この本を読む前に「日本に茶の種を持ち込んだと言われる栄西以前に茶の栽培はされていた」と、どこかで読んだ気がします。残っている書物を辿って、一番古かったのが栄西ということでしょうか。

禅の茶事とどこが違う、いつから変わったかという考証も面白かったです。ざっくり言うと、足利将軍への忖度?
「将軍にお出しするのにお茶だけじゃまずくない?」
というヒソヒソ話の結果、ご飯が追加されたのを思い浮かべました。

英国のアフタヌーンティーがアジア流にアレンジされて、ご飯モリモリになったのと似ているのかもしれません。さすがに飲茶がつくと、もはやティーではないと思いますが……。

あとがきにあったように、まだまだ研究途中なのだろうと思います。
三笠さんがトーハクの『茶の湯』展を担当され、光悦の茶碗を「桃山残照」と位置付けたことがずっと引っかかっていたとおっしゃっていたように、研究者が違和感を持つのが、これまでの定説を見直すきっかけになるのでしょう。

残念だったのは、まず字が小さいことです。ルビを振る名称が多くて行間も必要かもしれませんが、注釈より一回り大きいぐらいで、本文に使うフォントサイズではない印象でした。

これ以上ページ数を増やさないためでしょうが、読む層を考えたら、ねぇ……?私は裸眼で読めましたが、それでも「ちっちゃい!」と思いましたよ。

もう一点は、利休があまり登場しなかったことです。
「侘茶って何だ?」「利休は何をしたのか?」を検証した本だと聞いていたのですが……これも今後に期待ですね。

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