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意味がわかると怖い話 隣人

ストーカーだと思われてないか心配になる時ない?

絶対誰でも体験したことがあると思うんだけど
狭い小道に入って歩いてる時とか特に、
あと人が少ない道にいるときも、ついでに2回ぐらい同じ方向に曲がってしまった時なんか最悪。もう自分でもついていってるんじゃないかと思う。
それにしてももう20分は同じ道を歩いてた。
流石に長くて気まずくなってきた。

後ろから人の足音が聞こてくるというのは気分がいいものではない。
自分も後ろから足音が聞こえるとわざと振り返って確認する。
もしストーカーだった場合のための牽制。大体ストーカーっぽい要素は無さそうな人だし、みんな携帯を触りながら帰っている。
そんな失礼なことを繰り返していたからバチが当たったっぽい。

ストーカーを疑われているかもしれない。
前を歩いている男の人はさっきから何回もこっちを振り返って
自分から出てる足音を怖がってるっぽい。
申し訳ない。女でも怖がられることはあるもんだと思って反省した。
さっきつけていると思われたくなくてわざわざ別の道を通って
遠回りしてスーパーに寄って今日の半額惣菜を買ったのに、
またしばらく歩いてたら前にあのグレーの上下の怯えてた男の人がいた。
これでは生粋のストーカーだ。

田舎暮らしに憧れて家を買ったので、職場までは徒歩1時間ほどで時間がかかるが、歩くのは好きだし運動不足の解消としていたので、苦痛にはならなかった。

働いて2年目で、中学生から続けていた貯金を切り崩して買った。
憧れの一軒家。
築40年のお城。
風が吹き抜けて寒いけれどそれすらも愛おしい。
最近軋みがひどくなりネズミの声までするようになったので、
それも寂しさを紛らわせてくれてはいたのだけど
さすがに母に怒られそうだったので、明日やっとネズミ駆除業者がお昼に来る予定だ。

田舎暮らしは性に合っていた。
唯一のお隣さんは母と娘の仲睦まじい二人暮らし。
今週は2人で沖縄に旅行らしい。本当に仲が良くて少し羨ましい。
たまに野菜をくれたり、料理を振舞ってくれたりする。
穏やかな雰囲気の家族と、一人ぼっちの自分。
それだけ聴いたら寂しいやつだと思われるだろうが、
山に囲まれた2つだけの家も素敵な気がするし、何より家に向かう道中も好きだ。

職場から家への道は、田舎特有の商店街から始まる。
いつも買い物をする角の八百屋では、見るたびにタバコを吸っているのに野良猫に懐かれている毎日同じところに居るおじさんがいて羨ましくなる。
そこから小道に入って、野良猫とゴキブリがたくさんいるスナック通りを抜ける。いつか、こういうところにも入ってみたい。

商店街の最後にあるお豆腐屋さん夫婦は、毎日「おかえり」と言ってくれる。
小学生に戻った気持ちになれる場所でしあわせだ。
商店街を抜けたらいよいよ田んぼだけになってて
そこを10分ほど歩くと最近やっと出来た自販機がある。カフェって呼んでる。
ここからの道が一番好きで、まっすぐ私の家まで道が続いている。
ここの道はいつも色んなことを考える時もあったり、なにも考えずに自然に浸ってそんな自分にも浸って帰る時間で一番のお気に入りスポット。

さっきまで人の温かみに触れて、今は自然に包まれる。
こんなに幸せなことってない。ここに家を決めて本当によかった。




まだ男性をつけていた。





年齢不詳。男性。上下グレーの服。身長170cm前後と見られる。




気付くのが遅かった。





急いで振り戻り来た道を帰ると、前の男も向きを180度変えた。


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