サリカ・ル・デルタの反乱 2
2 シマウマと由起子と定弘
彼――あるいは彼女は、顔を垂直に上げて集中して両耳を立てた。
前方の音を拾う。次の瞬間は耳を翻し、左右、後方の音を聴く。頬から首筋にかけての毛が風を含んでいる。嗅覚の奥に何らかの刺激があった。なにかいる。いや、なにかではない。
敵だ。
群れの端にいたものだからよくわかった。数歩後ずさると、仲間の何頭かも同じように身を引いた。状況はよくない。ここが風上だ。尻から風が流れてきて、目の脇を通って目の前の空間へ吸い込まれていった。風下に自分たちの匂いが流