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わたしの世界

よりよくあろうと身体(からだ)を起こし 空は明るく無防備に 今この大気に星が落つれば どんなに心地がよいであろうか 淡々かすむ酸素のかおり 我が心は薄氷の如く 百合の花は明るくしぼみ 交差点を行き交う人びと 誰も見えていないのか ああ 誰にも見えていないのか 果てない雲をつんざく闇が わたしの声を塞ぐことを とうぜん何も見えはしないのか いちめん背中が汗で濡れても 総じて過去は苦しいもので 概して未来はつまらぬもので ならば現在(いま)はと足を見れ

    • サリカ・ル・デルタの反乱 2

      2 シマウマと由起子と定弘 彼――あるいは彼女は、顔を垂直に上げて集中して両耳を立てた。 前方の音を拾う。次の瞬間は耳を翻し、左右、後方の音を聴く。頬から首筋にかけての毛が風を含んでいる。嗅覚の奥に何らかの刺激があった。なにかいる。いや、なにかではない。 敵だ。 群れの端にいたものだからよくわかった。数歩後ずさると、仲間の何頭かも同じように身を引いた。状況はよくない。ここが風上だ。尻から風が流れてきて、目の脇を通って目の前の空間へ吸い込まれていった。風下に自分たちの匂いが流

      • サリカ・ル・デルタの反乱 1

        1 島崎光 「――本当に大丈夫なんだな、サリカ」  黒髪の少年は屋上のふちに立っていた。  舌先が少し痺れている。緊張しているのだ。  少年の背にはサリカと呼ばれた何者かが立っている。当然だ、と声を発すると、どうやらその者は女であった。 少年は振り返ろうとしていたのをやめ、前を向いた。眼前には夜の東京が広がっている。美しい夜景だ。窓のひとつひとつが整列し、まばらに集合体を作っている。なにかの地図のようでもあったが、結局はなんでもない。何の意味も持たない。少年にとって興味を惹

        • 草稿(冒頭)

          1 島崎光  大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫。大丈夫。大丈夫――大丈夫、大丈夫、大丈夫。大丈夫……  黒髪の少年は屋上のふちに立っていた。  口の中の舌先の上で、転がすように何度も同じ言葉を繰り返しながら前を向いていた。  眼前には夜の東京が広がっていた。美しい夜景だ。窓のひとつひとつが整列し、まばらに集合体を作っている。なにかの地図のようでもあったが、結局はなんでもない。何の意味も持たない。少年にとって興味を惹くなにかではない。  ――大丈夫だ。

        わたしの世界

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        記事

          菊原桐郎について

           菊原の顔が決まったのは、菊原の顔が初めて登場した時だった。それ以外のことはほとんど決まっていなかったので、菊原は初登場時が一番怖い人間だったと思う。  菊原は幼少期、子供嫌いの母親に疎まれ、多くの時間をお手伝い、特に「原田さん」と過ごしている。原田は青森出身で、母親が年末年始や夏期休暇を自由に過ごすため、しばしば菊原は原田の実家に連れ帰られた。その頃の名残で、津軽弁を少し話す/聞き取ることができる。  母親は年の離れた夫(菊原の父)と結婚したが、やがて父の老いる姿に失望し

          菊原桐郎について

          ハンスの誕生について

           私の場合、キャラクターはすべて自然発生的に生まれる。デビルズラインでは例外が一人おり、それがハンスである。  ハンスの初登場は1巻(1~6話)終盤、デビルズラインが1~4話までアマチュアのWEB漫画として進行していたあとだったので、当時の編集者Mさんの助言で、5、6話を描く前に考案した。  助言内容を簡単に言うと、「安斎と肩を並べられるような存在感のある男性キャラクターが欲しい」だった気がする(細かい言い回しは覚えていない)。  自然発生的でないキャラクターだったので、

          ハンスの誕生について

          牧村らの性的感情について

           彼は住森麻夕に好意のようなものを抱いている。でも性的な気分にはならない。この設定は物語を描く中で自然と生まれたので、何が理由だったかわからない。  近しい立場のカップルに沢崎とジルがいるが、沢崎はジルに対し性的な欲求を感じている。ただでさえ目などのパーツが似ている沢崎と牧村なので、二人を差別化しなければという意識はあったかもしれない。でもそれは決定的な理由ではない。話の流れ上、牧村は<ああ>なった。  もしかしたら私が牧村に乗り移って、私として麻夕を見てしまったのかもし

          牧村らの性的感情について

          安斎結貴について

           本作の中心人物。  ヒトでもあり鬼でもある。自分を鬼だと思いたくない。ハーフだから鬼とは違う、とハンスに初めて血を飲まされた際に夢の中で主張する。鬼の吸血欲に嫌悪感があり、鬼(自分)に偏見を持っている。  安斎にとって鬼とは「目を背けたい自分の嫌なところ」である。それに蓋をして見ないようにしたり、できることなら排除したいと思っている。  ファーストコンタクトで安斎の鬼の部分をなかば強引に受け入れざるを得なかった(安斎にもそんなつもりはなかった)のがつかさで、彼女にとって

          安斎結貴について

          x話「ベッド」(12巻収録話) 字ネーム

          ※完成版とは一部内容が異なります。 <一緒にいると少しわかる 彼の思念が流れ込んでくるようだ> <でもまさか そんなことを言われるとは思っていなかった> 「……したくなったら 外で してきていいからね」 line.x ベッド <神埼昭仁 数年前から付き合っている恋人で 身体は男性だがXジェンダー 男性でも女性でもないという立場をとる性自認><そして非性愛者 恋愛はするが性的接触を望まない できるのはハグと 軽いキスまで> <その昭仁と同棲するのは よくよく考えるとそれは

          x話「ベッド」(12巻収録話) 字ネーム

          62話(12巻収録話) 字ネーム

          ※完成版とは一部内容が異なります。 原稿を読んでいるハンス。風で紙の端がはためく。バサバサ 担当の傭兵「原稿はそれで全部だ 機材の使い方は覚えたな?」「今日は私も仕事がある 時間になったら自分で配信を始めるんだ いいな」 ハンス空を仰いで。風が強い。「――つかさとか安斎とか 何してるかなぁ」 line.62 ファイナルスタート つかさを迎えに来ている黒い車。リナが待っている。「お迎えに上がりました」「どうぞ」 屋上にやってきている牧村とまゆ。 まゆ「…こんな屋上で待ち

          62話(12巻収録話) 字ネーム

          56話(11巻収録話) 字ネーム

          ※完成版の56話とは一部内容が異なります。 line.56 ワインド マンションのゲストルームにいるハンス、風呂上り。夜景を見る。 神埼「気に入った?」「このマンションのゲストルームだ しばらくここを使っていいよ」 ハンス「——それで 話って何? なんか人増えてるけど」 白勢、暗がりから現れる「初めまして李ハンス君 厚生労働大臣政務官をやっている 民政新党議員 白勢叶芽と申します」 ハンス、黙って見ている。白勢「単刀直入に言おう 私たちは君に 『広告塔』になってもらいたい

          56話(11巻収録話) 字ネーム

          「字ネーム」とは

          一般的な漫画作りの工程は、  ネーム→下書き→ペン入れ→トーン仕上げ です(多分) ネームは絵によるものを指しますが、 私はある時期から、これらの工程の前に「描きたいことを字で書き出す」という作業をしています。 自分の中ではこの工程を「字ネーム」と呼んでいます。 「字ネーム」はほとんど思いつきで書き出していくので、まとまりがなかったり、だらだらと長かったり、逆に短すぎたり、のちに採用したり採用しなかったりする展開も含まれていたりします。 そのため、「字ネーム」に書かれてい

          「字ネーム」とは

          25話(5巻収録話) 字ネーム

          ※一部過激な表現が含まれる場合がありますので苦手な方はご注意ください。 ※ネームの前段階の構想のため、完成版の25話とは内容の異なる箇所があります。 line.25 オフライン つかさは一度家に戻り、着替えなどをまとめる。せっせと着替えをスーツケースに詰めるつかさ。 安斎「すごい状態だな」窓にテープ つかさ「さっき電話したら一ヵ月後に工事入るって 保険下りるみたいで安心したよ」 安斎「貴重品とか全部まとめろよ どの道この窓じゃ防犯上危ない」つかさ「うん」 つかさ、ペンギ

          25話(5巻収録話) 字ネーム

          30話(6巻収録話-ゼロナナ) 字ネーム

          ※出来上がりの30話とは内容が一部異なります。 07「何の 話だ……?」 09「だ だから ゼロナナは菊原が好きなんじゃないかって…」 バッと立ち上がる07 07「ふざけるな……!」顔はかなり狼狽している、怒りも見える。 line.30 ゼロナナ/エンパシー 09、すこし泣きそうになるがぐっとこらえて 09「菊原は 魅力的だと思うよ」 09「確かに悪いことたくさんしてるし 冷酷なとこもあるけど 僕もどうしても嫌いになれないんだ あの目を見てると 次に何をしゃべるのか ど

          30話(6巻収録話-ゼロナナ) 字ネーム

          53話(11巻収録話) 字ネーム

          ※一部過激な表現が含まれる場合がありますので苦手な方はご注意ください。 ※字ネームのため、完成版の53話とは内容の異なる箇所があります。 (ここは闇だ) (でも多分俺たちは) (初めからここにいた) line.53 アウト オブ ジェイル 見開き集合絵(夜背景) 見張っている北芝「……」みどりに電話を入れる。「みどりさん 少し気になることが」 <この安定状態は 長くは続かないんだ><触ってほしい場所があれば 誘導してくれ> つかさ、思い当たり、うつむいて自分の下腹部を

          53話(11巻収録話) 字ネーム

          52話(10巻収録話) 字ネーム

          ※一部過激な表現が含まれる場合がありますので苦手な方はご注意ください。 ※字ネームのため、完成版の52話とは内容の異なる箇所があります。 「ヒトと鬼のセックスの リードの仕方」 向かい合っているみどりとつかさ。つかさは顔が強張っている。 つ「リード…」 み「セックスの間 鬼は何らかの拘束具をつけるため自由に身体を動かせない」「必然的にヒトが行為をリードすることになる」 み「やれる?」 つかさ、顔 line.52 オンライン 朝。オンロに来ている安斎、眠そう。 (早く来

          52話(10巻収録話) 字ネーム