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62話(12巻収録話) 字ネーム

※完成版とは一部内容が異なります。


原稿を読んでいるハンス。風で紙の端がはためく。バサバサ
担当の傭兵「原稿はそれで全部だ 機材の使い方は覚えたな?」「今日は私も仕事がある 時間になったら自分で配信を始めるんだ いいな」
ハンス空を仰いで。風が強い。「――つかさとか安斎とか 何してるかなぁ」

line.62 ファイナルスタート

つかさを迎えに来ている黒い車。リナが待っている。「お迎えに上がりました」「どうぞ」

屋上にやってきている牧村とまゆ。
まゆ「…こんな屋上で待ち合わせなのか」
牧「基本は屋上でデモ隊を撮ってるらしいから」
まゆ「ていうかあの煙…か?」
牧村「うん」「自爆のあった現場だ」
くたびれた格好だが姿勢のいい小鳥遊、現れる「ごめんなさいね こんなとこに呼び出して」<小鳥遊亘 ジャーナリスト>「それにすいません 先にちょっとあれを撮りに」
牧村「どうぞ」「いつから日本に?」
小鳥遊「最近です 総理が狙撃されたなんて聞いたら戻ってこないわけにもいかない」「そしたら次は自爆テロと来た」
「――そちらの方は?」
牧村「……連れです」まゆ「……」
牧「ヒトの死者は現在4人」「ほか2人が意識不明…」無線を聞きながら
まゆ、下の喧騒に気付いて「すげー渋滞してんな…」
小鳥遊「デモ隊に加えて自爆の影響もあるでしょう」「では」牧「ええ あとで」

リナの車、渋滞に引っかかっている。
運転手「進みませんね」「多分これはしばらく…」つかさ、携帯を見る「遅れちゃいますね…」
リナ「電車移動に支障はありますか?」つかさ「え いえ大丈夫です」
リナ「では降りましょう」「少し歩きます」
駅に向かう2人。つかさ、視線に気づく。
向こうも驚いている。フードをかぶってマスクをした男。
つ「落合…先生…」
リナ、つかさがついてきていないことに気付く。
落合「久しぶり…だな 平」「あいつは 彼氏はどうなった?」「クビに なったりとか… ヘヘ… したか?」
つ「!?」近づいてくる落合。
落合、つかさの顔の変化に気付く。つかさ、強い瞳で落合を見据えている。
落合「…なんか 雰囲気変わったな」「前はもっと 隙だらけで 可愛かったのに」
「……お前らのせいで 人生転落して 今じゃ警察にも追われてるよ マジで どうすりゃいいかわかんねえよ…」怒りが滲んでくる。
つかさの首をガッとつかむ。リナ、はっとする。
つかさ、はっとしてとっさに腕を振り払い、距離をとり身構える。
リナ、横から落合を抑え込む。落合「ちょ」運転手に「加藤さん 替わってください」
リナ、つかさの手を取り「護身術ですか?」つ「あ ちょっとだけ…」リナ「電車で30分ほどです 行きましょう」
つかさ振り返り「……落合先生」「さようなら」
落合「――」「なんなんだよ… お前らっ 2人して」<さっさと逃げろクズが!!>
「俺と! 戦えよ!!」
去っていくつかさ。半分振り返っているリナ。

牧村とまゆ、屋上のフェンスにもたれかかっている。沈黙が流れている。
牧「……まゆちゃん」「もしかして聞いてた?」
まゆ「ふぇっ!?」「な なんのこと…」牧「俺が石丸と話してたこと」
まゆ「……」牧「前にもあったね 麻夕ちゃんに話聞かれてたこと」
まゆ「……別荘のか 真菜姉の告白だな」牧「うん」「今回は少し違うけど」
「ごめんね 直接相談しなくて」
まゆ「……」ぎゅっと目をつぶり、思い切ったように「――答え 出たのか?」
「私のこと どう思ってんだよ?」
牧村、沈黙
「別に妹だとは 思ってない」
まゆ、驚いたようにバッと牧村を見る。「実際妹じゃないしね」
まゆ「れ 恋愛感情は ねえのか?!」
牧「……恋って 何なんだろうね」
「ドキドキするものだけが恋なら これは恋じゃない」
「でもそれだけが恋じゃないなら これは恋だ」
まゆ「……つまり……?」
牧「恋だと思いたい」
「だとしても 麻夕ちゃんの恋と 俺の恋は 形が違う」
「だから求めるものも違う」「俺たちは お互いが望むことに 応えられないかもしれない」
「でも俺は ただただ 君と一緒にいたいと思ってる」
「……もしよければ」「俺から」「離れないで」
まゆ、整理がつかないまま涙流す。
牧村にすがりつく「離れたくねえよ でもわっかんねえよ これでいいのか……」
牧村、まゆを抱きしめる「……俺もわからないよ」「ごめんね」
牧村、うなじの後姿
「……チューしてみる?」
まゆ「……ふぇ……?」まだよくわかっていないまゆ泣いている
牧村、キスをする。
「……気持ちいいね 唇」牧村少し笑いながら
まゆ「……ッ!? なんだよそれエッロ! スケベ!!」牧「またそれ?」
キス二回目。
まゆ、力が抜けて牧村の腕の中。まゆ「……オメー ずるいよ……」
牧村「ずるいね」「俺はずるいみたいだ」
まゆ「……ずるくても」「離れるよりはいーよ……」

クイーン、クマの化粧をしている。エカと建物の影にいる。
エカ「……俺の傍を離れるな」クイーン「わかってる」
抱き合う2人。
影から現れる2人。集まっている隊員たち。
クイーン「今日は運命の日だ」「絶対に誰も死なせない」「目的を果たそう」

白勢「いらっしゃい」
「連絡を受けたよ 電車で来させてしまったようで―― なにか襲われかけたと聞いたけど 大丈夫?」つかさ「大丈夫です」「…もう」
白勢、つかさの肩に手を置いてなだめる「来てくれて嬉しい」
「今日は特別な日なんだ」

ビルの屋上に来るナナとキュー「どう探す? 安斎さんは自分のところに菊原は来ないって……」
ナナ「双眼鏡で探そう ヒトの視力じゃ限界がある 安斎も菊原を探すようだしあとは奴に任せるしかない」
キューを見るナナ。キュー「見つけたいね ――菊原」「僕たちで守れるか わからないけど」「僕たちの好きな 菊原を」キュー、笑う。
ナナ「……」
キュー「…なに?」
ナナ「……いや なんというか」「胸の辺りがざわつく」
キュー「それ 嫌な予感とか?」心配そうに近寄ってくる。
ナナ「いや……」「違うと 思うが……」キューを見上げるナナ。自然と手が動き、キューの襟元を触る。
キュー、赤くなり、じっとしている「え な なに……」
ナナ、ぽすっと一瞬キューの肩口に自分の額を置く。自分でもよくわかっていないような顔。
すぐにバッと離れる。
ナナ「なんでもない」キュー「!? !?」
ナナ「キュー」「私たちは菊原を守る」「だが私は お前も守るからな」横顔で
キュー、はにかんで「僕も守りたいな ゼロナナを」「頼んないけど」へへ…
ナナ、キューに触れた時の感触を思い出す(…大人といる気分だ 私はずっとお前は 子供だと――)
隣に来るキュー「僕はこっちを見るから ゼロナナはそっちの方角お願い」
ナナ「……ああ」
背中合わせの二人。ナナ「安斎とは?」キュー「今またかけてる」

安斎「電話代大丈夫か」キュー『あ これ石丸さんに借りた備品だからどうだろう…』半笑
「現在位置は」キュー『僕らは○○区のビルかな』
「こっちは千代田区を移動しながら探してる」跳ぶ。
(俺はなぜ追うのだろう …菊原を)
安斎、ビル屋上。跳び移り、探している。
(「古い友人だから」「苦手じゃないから」「奴が次に何かする可能性があるから」
どれも本当だ でもだからってなぜ菊原を追いたがるのか 自分でもよくわからない)
(……もしかして沈のせいか? あいつは顔が少し菊原に似てる)
(菊原とはしばらく会ってない 今会ったらどんな顔をするんだろう)(俺は 会いたいのか あいつに)(会って)(何を話そうか――)
(……それ以前に 見つけられるかだな)
見渡す安斎。「……首相を狙撃した奴は 捕まってないよな アルファ1」
『それどころか臨時代理総理候補者を襲撃した集団すらも判明していないと聞くぞ アルファ2』

牧村「国内で集団での襲撃 正体も巧みに隠しているプロだ ……クイーンの親衛隊の気がしてならない」
「菊原は同じCCCだった」「ここのところ標的が政府要人に集中している」
イレブン「つまり… なんだ?」

安斎「政府要人がいる場所といえば?」
沈『官邸や国会だろう 今ぐらいの時間なら 総理代理は首相官邸にいるんじゃないか』
安斎「――方角を指示してくれ そっちから警邏してみる」

小鳥遊「一理ありますね 場所を移動しましょう」「国会前と首相官邸 どっちに行きますかね」

首相官邸、裏門を入っていく業者のトラック

跳んでいく安斎。沈『その先が首相官邸で 更に奥が国会議事堂だ』
安斎、見渡し、気づく。

トラックに警備員気付く「業者が来る予定あったか?」「さぁ…」
トラックの後ろから飛び出す部隊。
エカ「全員その場に伏せろ!!」

安斎「……見つけた」
ナナ、キュー「!?」
沈『――現在位置を』
安斎「首相官邸の手前のビル屋上」「見慣れたジャケットだ」
菊原、鋭い目で振り返る。

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