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53話(11巻収録話) 字ネーム

※一部過激な表現が含まれる場合がありますので苦手な方はご注意ください。

※字ネームのため、完成版の53話とは内容の異なる箇所があります。


(ここは闇だ)
(でも多分俺たちは)
(初めからここにいた)

line.53 アウト オブ ジェイル
見開き集合絵(夜背景)

見張っている北芝「……」みどりに電話を入れる。「みどりさん 少し気になることが」
<この安定状態は 長くは続かないんだ><触ってほしい場所があれば 誘導してくれ>
つかさ、思い当たり、うつむいて自分の下腹部を見る。

<回想>
み「性器のつくりは一通り模型で教えたとおりだ 何なら今日ホテルに帰ってから 自分で触って位置を確認してごらん」「まぁ初めてなら 自分で触るより彼氏に触ってもらった方が気持ちよくなりやすいと思うけど
」つ「……」
ホテルのつかさ「……」(ここかな? よくわからん…)(でも安斎さんに ちょっと触ってみてって頼むのも…)

つかさ、安斎の指を自分の股下(クリトリス部分)に服の上からそろそろと触れさせる。安斎気づいてびくっとする。
「あ あの」「実は自分でちゃんと触ったことがなくてですね」照れ
安「…わかった」「安定状態が解けるまで俺も何とか耐える」「…?」
「多分お前が<いったら>俺は完全に変異する 音声かリモコンですぐに 俺を引きはがせ ベルトを引き戻す言葉は?」つ「ば… バック」安「バックだ 忘れるな」
リモコンを手探りで握らせる。
つ「は はい…」(そこから よく覚えていない)
(抱きしめられたり マスクごしに舌でキスされた記憶は断片的にあり 服の上から撫でられていたのが 「脱がす」とまず一回言われ 下着の上から撫でられた そのあたりから更によく覚えていない 多分もう一度「脱がす」と言われたか「直接触る」と言われたか…)
安斎にしがみついて声にならない声を上げているつかさ。安斎の目はゴーグルで見えない。牙が発達してきている。肌が触れてゴーグルの濃度が少し変わる。
(指先の痺れが最高潮を迎えた時 叫ぶような声を上げた気がする 安斎さんの背中にしがみついていたのは覚えている よくわかった これが 「気持ちよさ」だ)
<お前が「いったら」・・・・・・>(「いく」ってたまに聞くけど これか……)

北芝のところへ入ってくるみどり。北芝、データを見せる。みどり、つかさの状態を注視し、北芝に「席を替われ」

(朦朧としていた 「気持ち良さ」が明らかに上り詰めた後 それはすぐには去らず 本当にゆっくりと目が冷めていくような感覚で)(安斎さんが言っていた言葉を私は なかなか思い出せなかった)
つかさ、ゆっくりと横を見る。
安斎が完全変異している。
<多分お前が<いったら>俺は完全に変異する>
つかさ、声を出しかけ「バ…」、リモコンを握る。安斎が吠えかける。

ベルトがギュルルと戻り、安斎が磔のような状態になる。
つかさ、息を切らしながらスモークガラスの方を見る。(そっかあっちでも操作できるんだ 北芝さんが…)
北芝の目の前で、みどりがバックのEnterを押している。
みどり、冷や汗。
つかさ(ごめんなさい ありがとう)
安斎、目が真っ赤に変異している。息が早い。安斎の下腹部を見るつかさ。

<鬼が変異して自我喪失に近い状態にあっても 特定の人の声が耳に入ることがあるという実験結果がある>
<特定の…>
<家族や恋人などだ><あるいは相手の目を見つめることで 意識が断片的に戻る例もある>

顔を上げて、ゴーグルの濃度を下げて安斎に微笑みかける。
安斎の意識が少し戻ってくる。

<回想>
み「…と色々説明はしたが 初回でセックスを<完遂>できるカップルはほとんどいない」「無理に完遂させようとするのは怪我のもとだ ほらこれ」自分の胸元の傷跡を見せる「欲が出てちょっと予定より頑張りすぎちゃってね」
「ヒトが怪我をすると 鬼は更に変異し そして事が終わった後 ヒト以上に自責の念に駆られる」「実際私がこの怪我をしてから 長いこと夫は 私とのわずかな接触も怖がった」
「だから無理をしない方が 長い目で見ると有効なんだ」
「完遂までいかなくても 今までできなかったことをすれば 仲は深まる」「たとえば 「いかせてもらう」とか「相手をいかせる」とか」

<男性器の触り方は覚えたはずだ 初めてでうまくはいかないだろうが>
(…いきなり触る? いや さっき安斎さんがやってくれた まず服の上から触る)
安斎が吠え声とも喘ぎともとれない声を出す。つかさ、目をみはる。(気持ちいい?)(合ってる?)
<相手の反応をよく見ること>
安斎の膝が浮きそうになる。つかさ、抑え込む。「……」
安斎の背後に回るつかさ「脱がすよ」目が合う2人。
<もしかしたら 初めてではいかせてやれないかもしれない 自分一人では>
安斎の前に手を伸ばすつかさ、背中から顔を出して確認しながら。
安、枯れた声で「…っと」「もっと指を 狭く……」
つかさ目をみはり「……このくらい?」安、うめく。
安「……もっと つよく」
つかさ、汗をかきはじめる。
「右手だけ 一瞬 ロックを外せるか・・・・」
<自分一人では できないこともある>
つかさ、スモークガラスを見て(北芝さん)
みどり、北芝に指示。北芝「右手のベルトだけ緩めます」
シュルと落ちてくる右手。つかさの右手ごと握る安斎、しばらく動かす
つ(わ)「こ こんな強く握って 痛くない?大丈…」安「これくらいが 気持ちいい…」
安斎が右手を離す。つかさ「右手バック」ベルト締まりまた磔に。
つかさ、意を決した顔で再開する。<相手の反応をよく見る>
安斎、声が乱れ始める。つかさ、背中に張り付いている。安「い いく」
安斎の口が声にならない声を上げて開く。

首からタオルを下げ、資料室の床に座っているつかさ。手元には論文を開いているが読んでいない。なんだかほっとした表情。ベランダの外で鳥が鳴いている。
ドアが開き、安斎が入ってくる。同じくシャワー上がり。
つ「社員寮のシャワー室借りたの?」安「ああ お前もか」
安斎、黙ってすっとつかさの隣に座る。座って二人で足を伸ばしてぼーっとする。
つ「……なんか よかったね」
「チャレンジして よかった」
安斎も穏やかな顔をしている。
「私はまだまだへたですが…」ポリポリ
安「…そうか?初めてにしては上手かった…」
つ「模型使ってみどりさんに教えてもらったから多少は…」テヘヘ 安「安斎みどり…」ため息
安「……よかったよ」「うまくいえないけど 本当に」
つ「なんか 幸せ度が増したよ」安「そうだな」つ「またそのうち改めてチャレンジしようね」
安「ああ」
つ「うん」
笑いあう2人

安「論文か」つ「いっぱいあるの この列全部」
安「すごいな …」適当に一冊取り目次をめくる。偶然見つける「……茅伊市の集落の鬼の寿命について」
つ「え?」
安「ここに…」
つかさ冊子をとり、ページをめくる。

安「どうだ?」
つ「…『成人男性の鬼の寿命 39歳 佐山説より高い数値が得られた』」
安「…李が言ってたのは「39」だったな このデータか?」
つ「ど どうだろ これ以降の論文にも新しいデータがあるかも 古い方の論文には佐山さんて人の古いデータがどこかに」
安「目次を片っ端からさらおう 手伝う」
つ「え た 助かる」「寿命のデータの信憑性を確かめたいの 書いた人にも会いに行く必要があるかも…」「例えばこの論文の筆者は…」検索し「今も東京の大学にいる」
安「一つの市だけのデータなのか この寿命は…」
つ「……」頷く
安「——俺も東湾警備の採用試験で 一度東京に戻る」「応募することにした」
つ「志望動機 言語化できそう?」
安「なんとかなりそうだ わかりやすく説明するには もう一歩ってところだな」
つ「助けが必要なら協力するから 言ってね」グッ 安「ああ」

北芝「本当に上書きするんですか 準安静状態について もう少し詳しく調べた方が…」みどり「頼む」
北芝「……」「わかりました」ふっと笑って。「公私混同ですよ?」
みどり、悲しげな顔で笑い。

環の檻の前に来るクルツ
環『どうした色男 髪が乱れてる』『みどりの前でも そうしていればいい』
クルツ「——まだ言うのか」
環『俺がONLの実験に不要になれば 拘置所に戻って死刑になる そのあとはみどりを頼む』『俺がここに来るずっと前から 好きだったんだろう』
クルツ「二度と言うな おれはお前がここに来てからは お前のことも好きなんだ」
「…15期にドイツ人と韓国人のカップルの子供がいて 少し前にここを脱走した みどりさんは彼が逃げるところに居合わせたが おれは別れすら言えなかった」
環『その子は 外の世界に出るべきだった』『俺も本当は 外に出て刑を受けるべきなんだ』
『みどりもそれはわかっている』『俺は』
『15人も殺したことを 反省していないからだ』
クルツ「……お前をONLにいさせているのは たとえ動機が公私混同でも 客観的に意味のあることだ」「お前が何歳までその姿で生き続けるのか ONLはこれから先も記録しないといけない」
『……みどりやお前が 年老いて 死んでもだろう』
『その時には もう本当に 死刑にしてほしい』
クルツ「それこそが公私混同だ 環」 


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