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おまけ

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草稿(冒頭)

1 島崎光

 大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫。大丈夫。大丈夫――大丈夫、大丈夫、大丈夫。大丈夫……
 黒髪の少年は屋上のふちに立っていた。
 口の中の舌先の上で、転がすように何度も同じ言葉を繰り返しながら前を向いていた。
 眼前には夜の東京が広がっていた。美しい夜景だ。窓のひとつひとつが整列し、まばらに集合体を作っている。なにかの地図のようでもあったが、結局はなんでもない

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菊原桐郎について

菊原桐郎について

 菊原の顔が決まったのは、菊原の顔が初めて登場した時だった。それ以外のことはほとんど決まっていなかったので、菊原は初登場時が一番怖い人間だったと思う。

 菊原は幼少期、子供嫌いの母親に疎まれ、多くの時間をお手伝い、特に「原田さん」と過ごしている。原田は青森出身で、母親が年末年始や夏期休暇を自由に過ごすため、しばしば菊原は原田の実家に連れ帰られた。その頃の名残で、津軽弁を少し話す/聞き取ることがで

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ハンスの誕生について

ハンスの誕生について

 私の場合、キャラクターはすべて自然発生的に生まれる。デビルズラインでは例外が一人おり、それがハンスである。

 ハンスの初登場は1巻(1~6話)終盤、デビルズラインが1~4話までアマチュアのWEB漫画として進行していたあとだったので、当時の編集者Mさんの助言で、5、6話を描く前に考案した。
 助言内容を簡単に言うと、「安斎と肩を並べられるような存在感のある男性キャラクターが欲しい」だった気がする

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牧村らの性的感情について

牧村らの性的感情について

 彼は住森麻夕に好意のようなものを抱いている。でも性的な気分にはならない。この設定は物語を描く中で自然と生まれたので、何が理由だったかわからない。

 近しい立場のカップルに沢崎とジルがいるが、沢崎はジルに対し性的な欲求を感じている。ただでさえ目などのパーツが似ている沢崎と牧村なので、二人を差別化しなければという意識はあったかもしれない。でもそれは決定的な理由ではない。話の流れ上、牧村は<ああ>な

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安斎結貴について

安斎結貴について

 本作の中心人物。

 ヒトでもあり鬼でもある。自分を鬼だと思いたくない。ハーフだから鬼とは違う、とハンスに初めて血を飲まされた際に夢の中で主張する。鬼の吸血欲に嫌悪感があり、鬼(自分)に偏見を持っている。
 安斎にとって鬼とは「目を背けたい自分の嫌なところ」である。それに蓋をして見ないようにしたり、できることなら排除したいと思っている。

 ファーストコンタクトで安斎の鬼の部分をなかば強引に受け

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