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30話(6巻収録話-ゼロナナ) 字ネーム

※出来上がりの30話とは内容が一部異なります。


07「何の 話だ……?」
09「だ だから ゼロナナは菊原が好きなんじゃないかって…」
バッと立ち上がる07
07「ふざけるな……!」顔はかなり狼狽している、怒りも見える。

line.30 ゼロナナ/エンパシー

09、すこし泣きそうになるがぐっとこらえて
09「菊原は 魅力的だと思うよ」
09「確かに悪いことたくさんしてるし 冷酷なとこもあるけど 僕もどうしても嫌いになれないんだ あの目を見てると 次に何をしゃべるのか どんなことを考えてるのか 知りたくなるのかもしれない」09をスカウトした時の様子回想
「菊原はなんか…天性のそういうのを持ってる だから惹かれるのは仕方な……」07「勝手に決めるな」
「私は嫌いだ」
09「ま 待って」07「来るな」
07「お前は先に帰れ」
09「で でも」07「帰れ」07、悲痛の横顔。回想へ <君がななこちゃん?>

<回想>
ななこ、ぼんやりした目で見る。暗がりから出てくる男菊原「お邪魔してます」
ななこ、目をそらして浅くお辞儀すると、階段を上がっていく。
ななこ振り返るが、菊原は未練なくリビングへ。

よく晴れた昼。ななこ、書斎に下りてくる。「先生(とうさん) これこの前の模試の……」
書斎のソファで本に埋もれて菊原が寝ている。
ななこ「!」
ななこ、壁伝いに行き、書斎の机に模試の結果を置く。
結果の紙面を自分でちょっと見直す。
菊「模試の結果?」ななこ「ヒッ!」
菊原きょとんとしている。ななこ、青ざめている。菊原笑い出す。
ななこ、菊原に見入る。(黒髪の男だが)森澤のおもかげはここでは感じていない。
菊原「見てもいい?」結果を手でしめして
ななこ我に返り、うつむいて小さく頷く。菊「あ 優秀なんだな へえ…」
ななこ、照れている。菊「……数学がちょっと苦手」
「俺数学得意だから 教えてあげようか」
ななこ、戸惑っている。菊、微笑して「菊原 桐郎」「千頭先生の教え子で 東湾大の卒業生」
ななこ「きくはら…」菊「きりお」にっこりする。

喫茶店で待ち合わせる2人。ななこ、来る。菊原が奥の席で手を上げる。めがねかけている。
「……それ チャート」手元に数学のチャートの冊子
菊「教えるからには 俺もやるべきかなと思って」パラパラする。ななこ(解いてる…)
菊「何か飲む」ななこ「は はい」

解くななこ、シャーペンがとまる。
菊、同じく解いている。「ギブアップだと思ったら声かけて ヒント出すから」
ななこ「…菊原さんて 仕事何して…」菊、少し顔を上げて「余裕だね?」
ななこ「いや あんまり…」菊「警備関係だよ」
ななこ「警備員?」菊「正確には違うけど まだ教えられない」「次の業者模試で90点以上取ったら教えてあげよう」
ななこ「きゅ…」「無理です」菊「無理だと思うと本当に無理になる」
ななこ、冷静な顔になる。「……」「菊原さんは できるのかもしれないけど」
菊「俺は今 菊原先生」
ななこ「きくはら せんせい…」
菊、冗談で平然と「やっぱり萌えるからやめようか」ななこ「!?」

夜まで勉強する2人。

小テストやチャートをやるななこ。ななこ「なんで数学が好きなんですか」菊原「…深いところに潜って行く感じがする」「暗記物は部屋に本を増やすこと 現代文は部屋にある物をヒントにした推測と物探し 数学は簡素な記号を使って 部屋の内部の事象を客観視する」「——物以上のものを見ている気分だ」
ななこ「…それが深いところ?」
菊「意識の深いところ 本質的なもの 表面ではなく中の構造や仕組み」「思考の内側にいるのに 随分広い場所にいる気がする」

季節の経過。

テストの結果。92点。
ななこ、驚いて足が止まっている。
ガラケーでメールするななこ。喫茶店で待つ。
天気が崩れ、雨が降り出す。パトカーの音がする。近付いてくる。
一瞬、男が走り去る。鬼の顔に見える。ななこ、飲み物を倒す。

宇野「東堂さん追いついてる!?」東『も ちょい』菊「その先は繁華街です 手前で押さえて」
『——ぐあっ!』『確保!!』宇野「やりィ」『はな… はなせっ』『19時15分身柄確保』現場に着く二人。東「麻酔やります 菊原警部補」菊「よし お見事——」
パシャと水音がする。
振り返る菊原。捕まえられた鬼がもだもだ言っている「俺のせいじゃねえよ あいつが人そそるような目で俺を見るから あいつがいなかったら血なんて 欲しくならなかったのに 俺は悪くない 悪くない!!」
ななこ、顔が青ざめる。
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ホテルでキュー目覚める。ナナ帰っていない。
09(ゆうべから帰ってない?)胸元をぎゅっとする。不安になってくる「……」

倉庫に簡易コンロを設置。安斎「調理場?」
つかさ「小腹がすいたとき用」
マスター、小型冷蔵庫抱えてくる。「物置で埃をかぶってたんで 活躍の場ができてうれしいですよ」
音がしてつかさ、PCに気づく。キューちゃんからスカイプのチャット。(キューちゃんからチャット…)
マスター「つかささんの仕事スペースですね」安斎「ん?うん…」
つ「……」「安斎さん ちょっと…」

港湾。安斎「いなくなった?」
キュー「……ちょっとその 口論…ってほどでもないんだけど 僕が怒らせちゃって」「一晩帰ってないみたいなんだ どこにいるかもわからなくて…」
石丸「ちょうどいいタイミングだし 探して渡してあげますか モリサワケンイチの資料」
キュー「モリサワ…」
石丸「ゼロナナの因縁の男です」安斎「確かに人探しなら鬼がやるほうが動きやすいし便利だけど…俺やジルが鬼だけで外に出てるの見られるとまずい ヒトと組まないと」
石丸「じゃ私とペア」手を差し出す。安斎、無愛想に石丸の手をぺんっと叩く。
「ロイドさんは沢崎さんと組ませましょう それと今日は休日返上でもう一人助っ人を呼んでます」つかさ「助っ人?」
連れてくる朝海「連れてきたぞ」 滝本「ウス」と加賀崎
石丸「C班班長の滝本さんと 加賀崎さん 加賀崎さんは鬼です」
つかさ「C班…って」びくっとする。
石丸「牛尾さんのいる班です」
全員、息を呑む。
滝本「…うちの子がどうかした?」石丸「その話はあとでします その前にちょっと人探しで 加賀崎さんを今日借りても?」
加賀崎、滝本を見る。「……」滝本「焼肉ね」
石丸「焼肉でも回らないお寿司でも」滝本「なんだよえらく重要なのな」
つかさと安斎、加賀崎を見る。加賀崎も見返す。かぶせて「加賀崎佑」

「うちのC班じゃ普段からツーマンセルでやらせてる ペアの入れ替えはしてない 牛尾と加賀崎は組んで2年 担当区域も2年間ほぼ同じだ」
石丸「仲がよさそうですね」滝本「仲いいよ カガサキが変異したときは大体牛尾が鎮静剤打ってやってるくらいだ」
安斎「え?」つかさ「え?」
カガサキ「……滝本さんそこまで言わなくていいから」滝本「え?いいじゃん 仲良いのはいーことよ」
「で なんで俺と加賀崎だけ呼んで「人探し」? 牛尾にも内緒 言いやしねえけど菊原にも内緒ってどういう」
石丸「——今日探すのは狙撃手でCCCの天城那々子」「牛尾君もCCCであり 菊原さんもCCCの疑いあり だからです」

天気が崩れ始める。雨。
ななこ、繁華街で上を見る。

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(菊原さんは警察だった …それもあれはひょっとして あいつと同じ…)
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幼年ななこ「ケンちゃんは何のおしごとしてるの?」森澤「警察官 それも 鬼の犯罪者を取り締まる刑事だよ」
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ななこ、布団の中にいる。コンコン。ビクッとする。
千頭「ななこ お寿司が来たんだけど食べるかい?」「今日は勉強会のメンバーで会食をしてるから よかったら下においで 紹介す——」
ななこ「いらない……」
千頭「……お寿司以外にもいろいろあるから 何かとっておくね」
遠ざかる足音。ななこ、目から涙。
少し眠る。

コンコン。ななこ、ぼんやり覚醒。外が白んでいる。コンコン。
ななこ、出ようとする。菊「君の」
手が止まるななこ。菊「——ことは知ってる 公安五課にいいイメージを持ってないことも」
ななこ「公安…」 菊「五課」「警察の 鬼の犯罪を扱う部署だ」
「森澤研一も公安五課だった」ななこ「いや!」「聞きたくない その 名前…」
菊「わかるよ」「彼はある意味呪われていた 鬼に生まれたときから」
ななこ、目を見開く。菊「彼はもともと幼い子に惹かれる性質だった 鬼だったことでその欲求は更に攻撃的な吸血欲に育ち 君を前にして自制がきかなくなった」「不幸な話だ」
「鬼は 一度理性が振り切れると ほとんどの者が自我を失うと言われている」「ほとんどの者が相手に咬みつき傷つけ 殺すことも多い」
ドアがゆっくり開く。「鬼でなければ そこまではしなかったのに」
ななこ、涙が流れる。(鬼でなければ 森澤が鬼でなければ 母さんも死ななかったのに)
「鬼は 東京だけでも千人いると言われてる 数としては多くないが 多くがヒトと一緒に生きている 君の母親と同じように」
「そしていずれ 鬼の不幸な欲求のもとに崩れる」
膝をつく菊原「君は誤って森澤を撃ったらしいが それは——」
ななこ、ぼろぼろ泣きながら「誤ってじゃない」「私は 母さんを守りたくて 自分の 意思で 森澤を撃ったんだ 私は—— あいつを 殺したんだ……!」
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安斎、遠くを見ている。石丸「ちゃんと探してます?」
安「探してるよ」石「狙撃事件の報告書見ましたけど 君 彼女に肩撃たれたんでしょ? もっとこう悔しいとかないんですか」
安「……なくはないけど ……」石丸「?」
(撃たれたあの時点で 狙撃は「相手が鬼」という理由だけで行われているという推測が立っていた 理不尽な話なのに俺は理解できる気がした——……)

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菊原「……そう それは 正しかった」「森澤をそのまま放っておけば 君の母親を傷つけたあとで その場にいた君の方にも危害を加えた可能性が高い」
「罪の意識があった?」
「君は死後 母親が辱められるのを止めて 自分の身も守った」「君のしたことは 正しかった」「君が撃って止めたのは森澤ではなく 森澤をはじめとする——

ナナと安斎がの心の中の言葉が重なる。
(憐れな「鬼」という種……)


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