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ネガティブは心を守るため


抗がん剤の3,4クール目が辛かった話を書いたが、5,6クール目あたりになると今度は再発の恐怖が襲った。

再発するかもしれない。
再発したら、また髪が抜ける。
再発したら、また辛い治療が待っている。
再発したら、きっと子どもが大人になるのを見ることは厳しい。

再発のことを考えると憂鬱になる。
できたら考えたくはない。でも、考えてしまう理由がある。


覚悟しておきたいのだ。
再発するかもしれないと自分に言い聞かせ、再発したときのことを考えて行動する。
予防線を張ることで、再発しても全く予想していないときよりはショックは少ないだろうし、再発しなかったらハッピーな気持ちでいられる。
最悪を想定しておけば、それ以上悪くなることはない。

「再発のことは考えすぎないほうがいい。再発するかなんて誰にもわからないんだから」
「泣いても笑っても同じ時間だから、笑っていたほうがいい」
「起きてもいないことを悩むなんて不毛だ」
周りはそう言って、前を向くよう、明るくいるよう、私を励ます。

わかっている。私だって、そうしたい。
でも、自分の気持ちというのはそう簡単にコントロールできるものではない。
「ポジティブにいることがよいこと」と強要されているようで、心がしんどかった。


「そうやって考えることが、あなたの心のリスクマネジメントなんだね」
緩和ケアの看護師が言った言葉が、私の葛藤を一瞬で晴らした。
心のリスクマネジメント。その言葉が私の中にすとんと落ちた。

これは心を守る防衛反応だったのだ。

仕事を任せてもらいたい。
でも自分の仕事が増えるだけ、再発したら他の人に与える負担も大きい。
家を購入したい。
でも再発したら、実家に帰る可能性もあって、そうすると安易に購入することはできない。
旅行の予定もたくさんいれたい。
でも再発したら、キャンセルしなければいけない。

がんになる前と同じように日常を取り戻したい。
でも、そうすると、再発したときにダメージが大きい。
失うものが多いほど、心もしんどい。

だから、自分でブレーキをかける。
仕事もプライベートも。

ただ、「再発する前提」でいるのも結構しんどい。
私はまだがんサバイバー1年生だけれど、2年生3年生と進級するたびにブレーキを緩めていけるのかもしれない。

それでも今は、ネガティブにいることが私の心を守ること。
これは、必要なネガティブなんですよ。




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