15.小説より奇なる現実の寄せ集め

「お前の××ってあんな感じで泣くんだな」
これは私が高校時代に恋人を盗られた際に言われた言葉。
「貴方のことがずっと好き、付き合って」
これは貞操観念の捻じ曲がった大学生が情事の際に言われた言葉。
「多分私は貴方を忘れられないし、これから別れたことを後悔すると思う」
これは結婚予定だった社会人が恋人から唐突に告げられた言葉。

生々しい現実と私の血がついた足跡だけを残して。
毒々しい文章と私の身のついた痕跡だけを置いてって。

「貴方がいるから」頑張れた人から「貴方」を抜き取った結果は悲惨で。
「私がいるよ」といった人の去り際は空疎と簡素でできてるし。
でも案外人生はそんなもので。
というか人生を勝手に大きく見てる節があるし。
「人生一回」なんていう人は一回目しか知らないだけだし。
誇大妄想気味な夢より少しマシぐらいな程度でできてる。

「信頼」した人から「裏切られる」なんてわかっちゃいるから「貴方なら裏切られてもいい」って強がってみても結局の所、強がりなだけで。
「ずっと愛してる」なんて保証のない言葉よりも一瞬限りの「大好き」の方が強いんだって気づくのは大体後からで。

失敗して学んで失敗して後悔して、愚かでどうしようもなくても生きていくしか方法はなくて。
「愚かで後悔の塊」として消えていくと知りながらも生きている。
でも自分の後悔の塊に対しての後悔はないだろうと思いながら生きてる。
それが自分に対しての誠実さであり「強く生きる」ことなんだって信じてるから。

辛くてどうしようもなくなった今の自分は責めてもそこまでの過程にいた過去の貴方すべてを責めないで。
少し経って思い出した時には、それはきっとただ貴方だけの
小説より奇なる現実の寄せ集めに過ぎないのだから。

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