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弥生時代の芸術家のはなし

ー絵画銅剣ー

高知の友人を尋ねたとき、長宗我部元親に関する何かを見ようと思った。
調べると元親の居城だった岡豊城跡に高知県立歴史民俗資料館があった。

桂浜にも行かず、土佐犬にも合わず、割と遠めの資料館へ向かう。
主人も同意見だった。

資料館の前には、ナイスポージングの超イケメン元親像があった。

この出で立ち。
これはもう、ゲームやアニメのアレだなと思うが、かっこいいので良し。

驚いたことに、入場者が人っ子ひとりいなかった。
私は逆にそういうところが好きだ。

資料館には元親のことだけではなく、原始時代から現代までの高知の歴史が時代順に学べるように展示してあった。

戦国時代ほどではないが、原始時代のくらしにも少し興味がある。
興味のないゾーンを素通りする主人をよそに、私は割と真剣に見ていた。

弥生時代のゾーンに、黒い銅剣が展示されていた。
なんとなく展示を見ていると、解説員のお姉さんが声をかけてくれた。

「その銅剣はいつもレプリカが展示されているんですが、今の期間中は本物を展示しているんですよ。」
と静かに言われる。

「へー、そうなんですか。」とリアクションすると
「この銅剣は、"絵画銅剣"と言って、生き物が描かれているんですよ。」
とお姉さんは続ける。

展示されている銅剣に顔を近づけると、象形文字にも似たタッチで生き物が描かれていた。
特に、カマキリがかわいかった。
*ネットによるとシカ、サギ、カエル、カマキリが描かれている。

絵画銅剣は兎田八幡宮に奉納されており、弥生時代の祭祀に関する貴重な資料だそう。
「弥生時代の人が豊作を祈願して、銅剣を奉納したと言われています。」と解説してくれる。

弥生時代の方に大変失礼だが、奉納する風習があったことにまず驚いた。
しかも、奉納する銅剣に生き物を描くとは、芸術的センスまであるとは…。

それをそのまま解説員のお姉さんに伝えると
「そうなんですよ!私たちと変わらず、芸術的センスを持って、生きるのを楽しんでいると思うと、ロマンがありますよね!」とお姉さんの言葉が熱を帯びた。

お姉さんと意見が合致して、誰もいないのをいいことに、きゃっきゃした。
小さな銅剣を通じて、弥生時代の名もない芸術家に想いを馳せた。
紀元前の時代の人が、アートを楽しむ心を持っていたことに感動した。
お姉さんが言うようにロマンがすごかった。

結局、元親のことよりこの銅剣と出会えたことが、私の中では何よりの思い出となった。
あの解説員のお姉さんがいたので尚更楽しかった。

いつかまた、絵画銅剣の本物が展示される時は見に行こう。

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