勝負はほぼ付いている
ハロルド・ブルーム(Harold Broom)さんの『Book of J』を読み始めています。
動機は、私たち人類が科学的合理的思考が好き、ということによってパワーを発揮しやすい、その訳を知りたいと思っていること。
【やさしい社会】のトークでも最近言及したのですが、私たちは別に科学的合理的思考が好きなわけではない。
ただ、「好き」と言っておけば何かと都合がいい。
ものすごい直観的レベルでも、大半の人間が「好きじゃないこと」を「好き」って言えば、ちょっとしたインパクトを及ぼせることぐらいは想像がつく。
炎上商法なんて、別に今に始まったことではないのよね。
『Book of J』の、ほんの冒頭部分でグッと来たのが、本記事のタイトル。たとえ既に勝負は付いているとしても、微弱にではあってもレジストする感覚があるならば、それについて書き記しておく。
テキストなんてどうとでも解釈されるんだから、大仰な希望なんて託せない。
とはいっても、人間とテキストは違う。人間は人間で、テキストはテキスト。
人間は希望を捨てない。
だからこそ失望もし続ける。
この厳然たる事実は受け止めねばね。
「勝手に読んでください。」は、字面ほど寛容でもなければ、チープな希望(例:関連文献も含め論理整合的に読まれさえすれば真実は明らか)を捨ててもいない。
何のために書き残すのか?
当然人間ですよ。
文字なんて今のところ人間しか読めないんだから。というか、人間の能力なりに創り出されているんだし、他の生き物に「読め」ってのも酷だよね。
人間ってこんな風に生きて死んでます。
たったそれだけのことを書き記すのに要する労力といったら。。。現代風に言うところの相応の報酬がなきゃ、やり遂げられない。
才能の問題もある。
『Book of J』では冒頭からシェイクスピア、ダンテ、トルストイの名前が出てくる。巨匠ですね。
巨匠たちの役割って何だろう?とも思う。
文才は疑いようもない。
長く読み継がれる作品なんてそうそう作り上げられるものじゃない。
でも何で読み継がれるんだろう?
読み継ぐ人々の役割だっておっきく思えるのだ。
「民主化」っていろんな場面で言われますね。まあ今のところは政治・統治形態・選挙制度などがメインですが。
私は「知識の民主化」ってのが本当の意味で”民主”なんじゃないだろうか?と考えています。勿論理想ですけど。
まだほとんど読んでないんですが、『Book of J』の書かれた時代、その後様々に改編されていった時代(紀元前900年とか)と比べれば、21世紀の現在は、知識の民主化に近付ける環境ではあるんじゃないだろうか?というようなことを思いついたんですね。
大量の読者・聴衆に読まれ、支持され続けるということは、どんどんと、作品などの成り立ちが、共同作業的なものに近付いているような気がする。
書く人あってのものだけど、読む人の役割も大きい。
魂って、、、。あんま読もうとしないですよね?最近は。
人間が生きて死んでいく。
これだけのことを書き記すのは結構大変、とは言ったけど、それでも書き記そうとする人が絶えない、というからには、ただ「生きて死んでいく」にもめちゃめちゃいろんなものが含まれているんだろう。
希望を捨てないから失望し続ける。というか。希望と失望のほぼ永遠繰り返し。とか。
そういうものを書き表しておきたいと思う気持ちを、私は仮に「魂」と呼んでます。
この「魂」の次元では、書く人と書かれる人との境界が極端に曖昧になっている気がするのです。
共感とも少し違う。
境界線やカベというのは、基本的にあると思った方がいい、ということを以前書きました。
ただ、そうしたあることが前提の境界線やカベも、個々人が様々に思念を動かすにつれて、跨いだり、ぶつかって跳ね返されたり、突き抜けちゃったり、元の側に戻ったりしながら、段々と明らかになっていくようなもんなんじゃないか?と私は考え始めています。
人間の生きて死んでいく様を書き記しておきたいと思う魂は、そうした「境界越え」を繰り返すことによって、人々を描き出しているのではないか?と。
読む人がより意識的にこの「境界越え」を追体験できれば、書き残された作品たちにも益々生命感が宿るのではないかな?なんてことを考えています。
ああ。勝負のことですが。勝っているのは。
社会規範。
それをよしとする心。
私の、そしてHarold Broomさんのレジスタンスは、人間(Writer)は、社会規範を求めるだけの存在ではない、ということ。
明らかなのはどうしようもない矛盾。
社会規範は必要。
だけども、それに従えるかどうか?は、善悪とあまり関係がなかったりする。
守れていなくても悪人とは限らないし、守る側、守らせる側が必ずしも善とは限らない。
ね?
レジストとは言っても。。。
まず勝ち目はなさそうでしょ?
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