「死ぬまで幸せ追いかける」という、彼のありがたきお言葉

ここ数日、スピッツのことを想う時間が長い。
私は中学生のときに「ロビンソン」でスピッツを知った。
好きなバンドはたくさんいたけれど、一度もバラバラになっていない好きなバンドはスピッツだけである。
一度もライブに行ったことがないけれど、ずっとプレイリストにいた存在。
深く追わないけれど、リリースした曲は聴いているという付き合い方を中学生のころから続けていた。
しかし昨年、突然彼らの深い沼に堕ちた。

ラジオを聴く生活を始めた2021年。
たまたまradikoの番組表を眺めていたら、スピッツ草野マサムネのロック大陸漫遊記(TOKYOFM)というタイトルが目に飛び込んできて、聴いてみたのが沼に堕ちたきっかけだ。

それからほとんど毎週欠かさず聴いている。
ファンクラブにも入り、ライブ映像のディスクも買って、昨年はオンラインライブも参加することができた。
今年、ファンクラブを継続手続きをしたのは、やっぱり生でライブを見たいということと、会報に登場するマサムネさんが描くペーパー風の近況を見たいからだろう。

スピッツのことを考えながら迎えた金曜日。
会社から帰宅してポストを開けると、スピッツベルゲン(ファンクラブ)からサマーカードが届いていた。なんだかワクワクすることも書かれている!
あぁ、これがシンクロニシティ?(モーニングノートの著書参考)。
なんて素敵な金曜日。

先週のロック大陸漫遊記は【スコットランドのギターポップで漫遊記】
という回だった。
マサムネさんの音楽ルーツシリーズ。
その番組内で、とあるリスナーからのお便りが紹介された。

リスナー「草野さんの”ガーンとなったあのメモリー”はなんですか?」
注:ロック大陸漫遊記のテーマソングである「醒めない/スピッツ」に登場する歌詞を引用して質問をしている。

マサムネさん「THE BLUE HEARTSさんですね」

これはスピッツのウィキペディア読めば書いてある有名エピソードなので、ふーんという感じの答えかもしれない。
しかし私はなぜか安堵したのだ。
よかった、やっぱりいまもそれは変わってないんだね、と。
(人が歩んできた道だからコロコロ変わってはおかしいので当たり前ですが……)

マサムネさんはTHE BLUE HEARTSを見たときに、
「こんなかっこいいバンドがいるならば自分が音楽をやらなくていいじゃん」
と思ったとのこと。
その気持ちはすごく共感してしまう。
面白いドラマや小説に出会ったとき、自分が書かなくたってこんなに面白い作品が世の中にはあるんだから、書く必要なんてない!
少し前の私はそんな気持ちだったからだ。

しかしマサムネさんはこんな曲を歌っている。

1987→/スピッツ
歌詞に音楽を始めたときからの気持ちが詰まっている。
聴くたびに「マサムネさん、ありがとう、音楽を続けてくれて」と感謝したくなる一曲。

”醒めたがらない僕の
妄想が尽きるまで
それは今も続いてる
泥にまみれても
美しすぎる君のハートを汚してる”

1987→(スピッツ)

少しだけ歌詞を読み解いてみる。
”美しすぎる君のハートを汚している”
という部分は、音楽を始めたときの「自分」に向かって歌っているのではないかと勝手に解釈してみる。
そして勝手に感動して鳥肌を立てる。
(真意は彼にしか分からないので)

1987→という曲はインディース時代の「どろだらけ」という曲が元になっているという。
歌詞に登場する「君」をやっぱりTHE BLUE HEARTSに出会う前の自分として歌詞を読んでみる。

初めてバンドで音を合わせたときの高揚感
やりたかったパンクバンド
だけどTHE BLUE HEARTSに出会って「ガーンとなったメモリー」となるくらいショックを受けた。

”ぼくらの体は泥だらけ
死ぬまで幸せ追いかける”

「こんなかっこいいバンドがいるならば自分が音楽をやらなくていいじゃん」
何十年経っても忘れられない衝撃。
それでもマサムネさんは、フォークロックへシフトチェンジして30年以上スピッツというバンドを続けている。

希望に満ち溢れたロック少年の美しすぎた心を封じ込めて
泥だらけ(音楽業界ですかね……)になりながらも
死ぬまで幸せ追いかける(ロックなバンドを続けたい)

これが彼の中でのいちばんのテーマとなっているのだろう。

「ロック大陸漫遊記」の番組テーマ曲にもなっている「醒めない」。
このMV見ると、THE BLUE HEARTSリスペクトがひしひしと伝わってくる。

”最初ガーンとなったあのメモリーに 今も温められている
さらに育てるつもり 君と育てるつもり”

醒めない(スピッツ)

ここの「君」も自分自身の中にいる「ロック少年の自分」、
もしくはバンドを支えている仲間とかファンと捉えたい。

死ぬまで幸せ追いかける(どろだらけ)=さらに育てるつもり 君と育てるつもり(醒めない)

ずっとバンドを続けたい、ということだと信じている。
真似事が恥ずかしかった若い頃。
でもシフトチェンジを決断したことで日本を代表するバンドとなり、続けることができている。
これからも自分がやりたかった「ロック」を自分たちのカラーでやり続けていきたい。

そんなインディーズ時代から変わらない熱いロックな想いが、私たちファンを魅了し続ける秘訣なのだろう。

「ロック大陸漫遊記」のラジオを聴かなければ、マサムネさんの音楽ルーツを知ることもなかったかもしれない。
ギャップ萌えに近い衝撃だったけれど、音楽の専門学校で習ったロック史の授業よりも勉強になるラジオ。
長寿番組なることを祈りつつ、日曜日21時(東京エリア)を待ちわびる。


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