弟と話していたのは

 実は、娘ちゃんのことでも互いの近況報告でもなく、もっと厄介な事案についてだった。

 欲が絡むと、人ってこんなに変わるのね。いや変わるわけじゃない。最初からそういう人なんだろうけど、繕うことをやめるよね、って驚いている。
 姉弟で、やっかいな家庭のいざこざに巻き込まれている。

「なんでこう、マトモに話もできない人ばかりなのかね、あの家は」
「ほんまになあ」
 なんだか、呆れて笑いあってしまう。いや、ここまで来たら、こうして君とだけは会話が成立して、いろんな感覚を共有しながら思いやりあって譲り合って与え合えるような関係でいられることを、かえってありがたく思うよ。地獄に仏。わたしたちは、互いに、互いがいて、ほんとうによかったなあ。

 幼い頃と同じように手をつないで、人の醜さの顛末をみている。

 さすがの楽天家の弟も、今回ばかりはすっかり疲れてしまっているようで、そうなると元が楽天家だけに落ち慣れていない弟が、珍しく悪い思考のループに入りかけている。
 落ちることに多少なりとも耐性のある姉なので、ケアしてやれる。たまにはこういうことも役に立つものだ。

 殺伐とする急流の中でなお、信じられる相手がいることは幸いだな。疑心暗鬼になって多く分捕ることばかりを追う人は貧しいよ。
 私たちは誇りだけは持っていこうな。誇りって、人に見下げられたり舐められたりしないことでも、正当な分やそれ以上の「もの」や「お金」を取ることでもない。
 受け取るものでなく、口から出るもの、手のなすことがその価値を決めるのだから。
 君がそういうふうに大人になってくれてよかった。本当に。

#日記 #エッセイ #家族 #家庭 #家族問題 #厄介 #誇り

サポートしていただければ今後の創作・表現活動に大切に使わせていただきます。めちゃくちゃ喜びます。萌える毛玉になって跳ねます。