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テクノロジーと顧客リテラシー〜CS活動の新たな課題〜

CSの最新トレンド

2023年、GainsightのカンファレンスPulseで「Value Realization」が大きな注目を集めました。特に、カスタマーアウトカムという出口を意識し、テクノロジーを用いてCS活動を効率化するトレンドが見えてきました。この点について深く考えてみると、問題はCSだけのものではないように感じられます。

新しい議論の必要性

CSと顧客リテラシーや顧客文化の関係性

SaaSベンダーとして、顧客が業務改善を望む場合、自社ツールを提供し、サクセスを目指します。しかし、この点で顕著なのは、顧客側のITリテラシーが低い場合、本来期待するようなアウトカムが得られないことです。
具体例として、OCR技術で文書をデジタル化したとしても、多くの企業は単に業務工数が削減された≒コスト削減で活動がストップします。デジタル化したデータをさらに活用してビジネスの新たな展開を考える、といった発想が少ないように見えます。
本来であれば、カスタマーアウトカムとして、CSは取り込んだデータを活用することを勧めますし、更に新しい事業の展開や価値を見つけるまでをサクセスの範囲としたいところです。

もう少し、イメージをつけていただきたいので具体例を取り上げようと思います。
コールセンター業務にも同様の問題があります。一般的にコールセンターは「コストセンター」とされがちです。実は、顧客との大事な接点として、コールセンターにはアップセルやエクスパンションの機会が眠っているはずです。しかし、多くの企業では工数や人員などコスト削減が主な目的となり、この機会を見逃しています。

お気づきになったかと思いますが、カスタマーアウトカムの高度化をするには、課題はSaaSなど提供ベンダー側だけの問題ではないのです。むしろ、顧客側こそが、この問題に向き合い、リテラシーと意識を高める必要があります。

私も例外ではない

弊社も、この問題の当事者です。
素晴らしいプロダクトを持つ企業と対話の機会をいただきますが、導入の障壁となるのは「社内のITリテラシー」です。特に、ミドルマネジメントの層で「何を目的とするのか」というビジョンが一致しないため、導入を見送ることが多々あります。

構造から捉える

日米のIT人材配置率の乖離

デジタルツールやプロダクトの活用が進まない、アウトカムの創出に向かわない理由を考える上で、面白いデータがあります。
日本ではIT人材の就職先7割がIT関連企業です。対照的に、アメリカではこの偏りは少なく、IT関連企業への就職率は約3割と報告されています。つまり、事業会社への就職が7割なのです。日本と逆転しています。

参照記事:『週刊東洋経済』「文系管理職のための失敗しないDX」特集 ( https://toyokeizai.net/articles/-/654474 )

このデータから解釈すると、IT人材にとって事業会社は活躍できない会社という認定をされています。背景には、周囲のリテラシーレベルが影響している可能性がありますし、文化的な要素も否めません。
こうした、日本全体の人材配置についても、日米で大きな乖離があり、ビジネスに多大な影響を与えているようです。

デジタルだけではない事象

もちろん、この問題はデジタルやテクノロジーに限られるものではありません。近年、「カスタマーハラスメント」という言葉が広まる中で、消費者側のリテラシーや理解度の低さも注目されています。
この低いリテラシーは、ベンダーとの有意義な対話を阻害し、結果的にサービス品質の低下や誤解を生んでいる可能性があります。消費者自身が自分が何に満足し、何を目的としたいのかがわからないようにも思えます。
このような状況は、単なる個別の事例に留まらず、次第に社会全体の問題として顕在化していそうです。

どう向き合うか?

この問題が短期間で解決するわけではありませんが、進むべき道は確かに存在していると思っています。
提供側、すなわちカスタマーサクセスを担当する皆さんや私、その所属企業も、場面によっては消費者や発注者となることがあります。そのため、カスタマーサクセスの考え方に熟達した発注者が増えることが、全体のリテラシー向上につながります。つまり、「Value Realization」やカスタマーアウトカムを正しく把握し、実現に取り組む人材を増加させることが重要です。草の根活動ですが一人ひとり増やしていくのが今は近道かなと思っています。

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