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藤井聡太二冠を見守る

駒の動き方はかろうじてわかる。しかし勝ち方(詰ませ方)はよくわからず、棋譜記号では目がチカチカしてしまう。そんな「超初心者観る将」でも藤井聡太二冠の活躍には心が躍る。何十年にひとりの才能と言われ、確実に歴史に名を残すであろうスーパースターの歩みを同時代人として見られるという幸運。

圧倒的な強さ

いまさら私ごときが強調するまでもないが、天才の中の天才しか入ることができないプロ将棋の世界でのこの活躍は、やはり空前絶後だ。最年少でのプロ入り。鮮烈だったデビュー29連勝。最年少戴冠。4年連続8割以上の勝率。こうした数字だけではなく、周囲の棋士たちが明かす「藤井像」がまた我々を惹きつける。

中でも印象的なのはデビュー当時に高野秀行六段が語った言葉。「性能の良いマシンが参戦すると聞いてフェラーリやベンツが来ると想像していたら、ジェット機が来たという感じ」。先輩の驚きと畏怖がうかがえようというものだ。

人柄を物語るエピソードの数々

藤井二冠の人気の源泉は強さだけではない。スポーツ誌「Number」として初めての将棋特集は空前の売れ行きになったが、彼がいなければそんな特集が組まれることもなかっただろう。2回目の「Number将棋特集」に先崎学九段が寄せた「22時の少年」は素晴らしかった。雑誌の記事でここまでシビれるとは。

勝っても奢らない謙虚さはデビュー以来まったくブレない。ひとの前で心情を吐露することが苦手なシャイな性格なのだろうが、あのコメントの素っ気なさは担当記者泣かせに違いない。それを忖度してリップサービスに走らないところも、また藤井ニ冠らしい。

すっかり有名になったのが“師匠”杉本昌隆八段だ。マスコミ対応など将棋以外の雑事に煩わされることがないよう「防波堤」の役割をしっかり務めている。「藤井二冠が可愛くて仕方がない」ことがにじみ出る言動や解説ぶりが微笑ましいし、絆をうかがわせる数々のエピソードもいい。もし別の師匠についていたら、それでも藤井二冠の活躍ぶりはここまで華々しいものになっていただろうか。

とにかく“悪い人たち”に気をつけてほしい

「週刊新潮」(5月27日号)で28連勝の先輩・神谷広志八段が言っている。「今後、変な大人が寄ってきたら気を付けた方がよいと思いますね」。

野球や芸能界で才能を爆発させた若手が、薬物・女・カネなどで転落する姿を数多く見てきた。たとえその世界で第一人者になっても、悪意を持って近づく連中にとっては、所詮「世間知らずの若者」だ。藤井くんのそんな姿を見せられたら、日本国民はどれだけがっかりすることか。そんな日が永遠に来ないことを祈る。





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