おわりに
さて、今回は全8種・12味・推定39食の茶漬けを食べながら、それにまつわるエピソードを綴ってきた。食べては何かを想起し書く、この動作を繰り返している際、私はまた別のことを思い浮かべた。
先日、友人に連れられ、『音楽フェス』というものに初めて参戦した。音楽が嫌いなわけではない。むしろ大好きなのだが、いかんせん『好き』を証明できるほどの知識を持っていなかったため、今まで行く機会をうかがい続けていたのだ。音楽は好きだが、幅広くアーティストは知らないし、曲のノリ方もよくわからない。『知識量=それに対する愛の大きさ』とは言い切れないことは重々承知なのだが、このままの状態で行っては、やはりどこか「にわか乙www」と古参オタクに笑われそうで、あのツワモノしかいない空間に足を踏み出せなかったのである。
「大丈夫だよ、きっと楽しいから」
フェス常連の友人が言った通り、それは素晴らしく楽しいものだった。好きでよく聞くアーティストの初めて観る生パフォーマンスも、名前だけ聞いたことのあるバンドの楽曲も、全部。その帰り道、彼女はこんなことを言っていた。
「音楽っていいよ。知っている曲が増えるたび、その曲にまつわる思い出が増えていくの」
この言葉が、私の中で自分と茶漬けの関係にリンクした。
そうだ、別に私も特段味覚が優れているわけでも、山ほどの茶漬けを食べているわけではない。それでも好きという気持ちは揺るがないし、いつだってそこに思い出がある。これは衝動買いして正解だったと思えるくらい美味しかったもの、これは友達がお土産でくれたもの、これはなんだか懐かしい味がするもの……。必ず何か『ささやかな記憶』を呼び起こしてくれる。
きっと、彼女にとっての音楽が、私にとっての茶漬けなのだろう。知れば知るほど人生が豊かになり、『好き』が募っていく。
さあ、明日は何茶漬けを食べようかな。
茶漬けBOXにギッチリ詰め込まれる
茶漬けコレクションたち。
次回作で何を紹介しようか
もうすでに考え始めております……
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