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カラスの魔法

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記事一覧

カラスの魔法 9

 もう夜も遅い時間なのに、玄関のチャイムがなってちょっとびっくりした。

「僕が出るよ」

 お父さんはそう言って、玄関に向かった。私と若葉は、なんだろうねといいながらカキフライの残りを食べていた。
 玄関で、誰かとお父さんが話をしている。してるというか、話し込んでいる。

「あらあら、お客さんなら中にいれてあげればいいのに。」

 お母さんが立ち上がって、玄関に向かった。私と若葉は食事中なので立

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カラスの魔法 8

 ー聞いた?山口社長の話。
 ー知ってる知ってる。加藤専務がさ・・・
 ー社長代理って言わないと、解任させられるよ!
 ーやだー!

 会社の事務担当の鎌田さんと梅森さんという女性二人が、社長と加藤のことを噂していた。
 みんな、反応は一緒だった。
 社長はいい人だけど、加藤についていけば、もっと給料がもらえるかもしれない。それだけ。
 僕のプロジェクトチームは空中分解して、リーダーの僕は本当

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カラスの魔法 7

 夕食はお父さんの好きなカキフライだった。お父さんは、うれしそうにそれを食べていた。僕とお姉ちゃんは、あまり食欲がなかった。

「もう一度、会社を興そうと思うんだよ、紅葉。」

 お父さんが、お母さんの名前を呼んだ。

「そうね、それがいいかもね。前の会社より、うんと大きな会社にすればいいのよ」

 お母さんが、何度もうなずいた。僕は、本当にそれでいいの、と聞きたかった。
 あの会社は、お父さんが

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カラスの魔法 6

 学校のチャイムの音で、意識を、今に戻す。昨日から僕は、社長とのいい思い出ばかりを思い出していた。
 そろそろ青葉ちゃんの授業が終わる時間で、そろそろ僕は窓の鍵を開けて待っていないといけない時間で、そして青葉ちゃんに、「泥棒がはいるよー」といたずらっぽい笑みを向けられるころだ。
 けれど、僕は意識を窓からそらした。鍵も開けなかった。せめて僕の姿を見せないようにと、埃の積もったブラインドをおろそうと

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カラスの魔法 5

 君は窓際族でいてくれるかい?
 僕ー高橋は、山口社長の快活なほほえみを思い出していた。この会社は、社長の下に専務が居て、あとは数十人の部下がいる。僕は玩具を作るときのプロジェクトリーダーを任されている。
 待遇的にも、世間一般における窓際族ではない。
 でも、社長はいつも僕の席を窓際においた。
 青葉ちゃんが登ってきたときに、一番に窓を開けられるように。
 言葉には出さなかったけれど、
「また忍

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カラスの魔法 4

 翌日から、お父さんはずっと家にいるようになった。でも、私にも若葉にも、それが何故か、は言わなかった。

「お父さん、会社行かなくていいの?」

 若葉の問いにも、お父さんは

「ちょっとながめの休みをもらったんだよ」といって、青い顔で笑った。
 お母さんは、こんな休みをもらえるのだから、家族旅行にでも行きましょうか、とひきつった笑みで言った。
 私と若葉は、それ以上何も聞けなくなった。
 でも、

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カラスの魔法 3

 昨日のカレーは美味しかったなあ。なんてことを考えながら、私はジャックと一緒に下校中だった。今日の宿題はわからないところが多いから、若葉に教えてもらおう。

「そうだジャック!高橋さんが新しいおもちゃの試作品があるよって言ってた!行こうよ!」

 ジャックの、ゴー!という合図とともに、私は駆けだした。家から、公園を挟んで反対側にある、お父さんが経営する小さな、三階建ての玩具会社双葉へ。
 玩具会社

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カラスの魔法 2

僕は玩具が嫌いだ。なんで玩具会社の息子になんて生まれてしまったんだろう。僕は世界一不幸だ。
 僕はお姉ちゃんが嫌いだ。お姉ちゃんは青葉と言う。僕の名前は若葉。わかめとか言われてとても腹が立つ。お姉ちゃんが嫌いなわけは、お姉ちゃんが玩具と仲がいいからだ。
 もう小学校の5年生になろうというのに、まだジャックと名付けた汚いぬいぐるみをいつも離さない。僕はそんなものもう卒業した。ちなみに僕は小学校の3年

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カラスの魔法 1

「青葉ー!青葉どこにいるのー?わたしもう帰るよー?」

 友達のユリカの声で目覚めた私は、大きく伸びをして欠伸をした。かくれんぼの最中だった。木の上にのぼって、そのまま眠ってしまったんだった。背中に背負ったテディベアのジャックがクッションになっていい気持ちだった。
 私は木からするすると降りると、ユリカのそばへ走った。

「青葉、また木登りしてたの?ずるいよー、絶対見つけられないよ」

「登りやす

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カラスの魔法 序章

 ターゲットが近づいてきた。真新しいブランドバッグに高いヒール。顔には色の濃いサングラスをしている。ブランド趣味の、専務の妻。
 横には荷物をたくさん抱えた専務がよろよろと歩いている。
 今、私たちは何もかもを取り戻すために戦っている。大人は大人のやり方で、そして、私は私のやり方で。
 私はターゲットを見つめて、自慢の長い髪を後ろで一つにくくった。片手には、私の相棒。テディベアのジャックも一緒だ。

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