あの頃から同じ気持ちだった
静まり返った体育館。指揮台に立った彼が、腕を上げて1度下ろし、自分のほっぺを持ち上げて笑顔を作って見せた。そして再び腕を振り上げ、ピアノの前奏が流れ出す。作詞作曲・森山直太朗の「虹」という、合唱コンクールでは定番の美しい曲だ。
あの時私は、ほっぺを持ち上げた彼の顔がどうにもおかしくて思わず吹き出してしまったのだが、後から動画を見返してみると、派手にリアクションしていたのは私だけだった。
合唱部でもない私がソロパートを完璧に歌えたのも、彼が緊張をほぐしてくれたからだと思う。