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物語の着想法

こんにちは、あるいははじめまして。晴海悠(はるみ・ゆう)と申します。

普段はとあるゲームにてライターのはしくれをやったり、

(2022/12/5時点で72本。まだ増やします。多分)

発展して自キャラの同人小説に手を出したり、

(親の仇ばりに虱潰ししたのに先日一個、軽い誤字を発見しました)

TRPGのリプレイ動画制作に手を出したり、

(3ヶ月に1話ペース。5話、鋭意制作中です)

お祭りに乗じて単発のシナリオ制作なども行っています。

(Breathless JAM参加作品、青年少女の刹那的家出旅)

(きっと魔法遣いだったあなたたちへ 参加作品)

やる事なす事せせこましいのに定評がある人です。
一応、どれもきちんとやり遂げようと努力はしています、よ。

* * *

活動は節操なくも思えますが、すべての共通項は「物語であること」。
想像力豊かな子どもがそのまま大きくなっただけの事はあり、曲がりなりにも物語る仕事が続いて、そろそろNewbieを名乗れなくなってきました。

同じようにシナリオ制作や創作に手を出したい方の一助となればと思い、私なりの方法論や考えを気まぐれに書いてみようと思います。
若輩者の個人的見解に過ぎませんが、お役に立てていただければ幸いです。

着想法――自分の得意パターンを見つけよう

物語を書くにあたり、着想はとても大事です。
習作も含めて数を書くなら、着想法を特別なものでなくツールのように扱いこなさねばなりません。
何を起点とするか、着想の仕方に正解はありません。
重要なのは、自分の得意パターンを見つけることです。

スランプ打破のために異なる方法を試す、たまにはそれもいいでしょう。
ですが、一番自然に物語が膨らむのは大抵、得意な領分においてです。
まずは基本に忠実に、息をするように書ける方法を探し、練習するのがよいかと思われます。

モチーフ法――鮮烈なイメージの力に頼る

着想法のひとつに、特定の物品や事象のもたらす印象の力に頼り、各シーンを束ねていく手法があります。
柱時計の針の音などの象徴的なものから、「まわる」「めぐる」といった多義に受け取れる言葉、抽象的な概念まで様々に応用できます。
シーンを描ききることに適していて短編に向く反面、長い本筋の中ではモチーフのもたらす印象を組み入れるのが難しく、長編には不向きな手法だと感じています。

モチーフ法を扱うポイントは、言葉の表面をなぞるのでなく、特定のワードに対し深く想像をめぐらすことです。
たとえば「やかんが鳴っている」。口の部分が窄まっているあのタイプのやかんです。
これだけだと何の印象も浮かびませんが、実際に自宅でピィピィやかんが鳴っていたらどんな印象を抱くでしょう?

耳障り、不快――そうですね。鼓膜をつんざくあの音です。
焦り、焦燥――何か危険や到来を報せるイメージにも繋がりそう。
当事者の不在――やや飛躍ですが、火を止めるべき人の不在、あるいは火にかけた人が心ここにあらずな状態だったかもしれません。

一つだけでなく、事象から受ける印象をいくつか想定することで、ただのやかんの音が物語に繰り返し登場する象徴的なシーンとして使えそうな気がしてきました。
人物の心の変化や場面転換など、余韻を残すように使うとよさそうです。

興味深いことに、モチーフは必ずしも主題を意味しません。
鳴り続けるやかんはシーンとしては面白いものの、物語の主役にはならないでしょう。
ただし、モチーフのもたらす印象は主題と密接に結びついてきます。
やかんの音に先のような印象を抱いたのなら、やかんが登場するべきは平和な日々でなく、ひりひりとした息詰まる日常の中であるべきです。

プロット法――物語の時系列と因果関係で追う

事件性のある物語を描くには、物語の縦の筋をプロットで追うことも必要でしょう。
特に推理やサスペンスでは因果関係が重視されるので、登場人物の動きに変更があったならプロットから見直しとなるはずです。

プロットが苦手な多くの方には、「プロットから逸れてはいけない」という固定観念があるように思います。
ですが実際は逆で、プロットは修正を容易にする目的でこそ役立つものだと感じました。

いざ書き出して、当初より魅力的な展開を思いついた。筆が乗った経験があれば、こうした感覚を味わったこともあるでしょう。
一度プロットを書けば物語の終着点が見えるので、異なる展開がうまれた時にも「当初の予定からどの程度逸れるか」「よい変化か、悪い変化か」が読み取れるようになります。
実際描き切った後に、予想よりも更に逸れていたって構わないでしょう。受け入れたからにはそれは「よい変化」であり、真に書くべきは完璧なロジックではなく「よい物語」だからです。

プロットは私も不得手で勉強中ですが、七十九頁の小説を描いてみて気付いたことがあります。
それは、プロットには事実関係だけでなく人物が場にいる動機も大事であることです。便宜上、「心のつじつま」とでも呼びましょう。

いつ・誰が・どこにいたかだけでも一見辻褄は合いますが、いざ書きはじめると場にいる必然性のないキャラクターは途端に動かなくなります。
これは人物がなぜ動くのか(行動原理)の深堀りが不十分な場合に起こり得る落とし穴で、私も書き出してから後悔しました。

これを防ぐには、本筋を書きはじめる前に人物設定をなるべく作り上げておくことです。
たとえば、困難に直面した時の反応や根っこにある生きる動機、大切なものを決めておく。仮のイラストつきの設定資料を用意してみるといいかもしれませんね。
設定が浮かびにくいなら、人物になりきって質問を投げかけるのもよいでしょう。「大切な人が胸を抑えて倒れてる。どんな反応をして、どう動く?」のようにです。

プロットと同時に人物の掘り下げをすることで設定上の落とし穴にも気づき、修正も容易になります。
厄介ごとに首を突っ込む性格なら説明のしようもありますが、受動的で我関せずな人物を主役級に選ぶと苦戦は免れないでしょう。

近道はないからこそ、自己流を磨こう

今回は物語全般に応用できる手法として、着想法を二点ご紹介しました。
実際にはたくさんのやり方があり、プロットやモチーフも私と違う取り組みをする方が多くいるでしょう。

とはいえ、すべての物語は書かねば始まりも終わりも迎えません。
身も蓋もない話、自分が夢見た物語を実現するには、ひたすら手を動かすのが唯一の正解だと思います。

近道はない。それが真理なら、アイディアを膨らませる段階では自分にあった方法で負荷を下げておくのがよいでしょう。
物語制作の端緒から苦しみを味わう必要はありません。校正や削りは後でどうしても発生するので、「発散」と「収束」の段階を意識し、アイディアを出す「発散」の段階にはとことん楽であるべきです。

不慣れな手法で一を描くより、合った手法で十の、百の物語を書きましょう。新たな路線を探すのは、自分の方法が確立されてからで構わないと思います。

こんな風に書いていますが、私もまだまだ途上です。勉強するべきことも多いがゆえに、同好の士は多いほうが心強いと考えています。
ご自身にあった方法や面白いアイディアが思いついたら、ぜひお聞かせください。創作がもっともっと身近で、誰でも行えるものになりますよう。

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