見出し画像

【読書録】正義の教室


先日読んだ「史上最強の哲学入門」の著者である飲茶さんの新刊。
今年の7月に読んだときに「どうだった?」と感想を聞かれて、わたしはうまく答えられなかった。
感想がなかったわけではない。
でも、どこをどう切り取って話したらいいのかわからなかった。
本の感想なんて何を言ってもいいはずなのに、どうしてかわたしは答えられなかった。
何も感じなかったのか、言葉にできなかったのか、自分でもよくわからない。なので、改めて再読してみることにした。

Summary
タイトル:正義の教室
著者:飲茶
読了日:2020年12月19日(再読)

この本を選んだ理由
飲茶ファンの彼からのおすすめ。
夏に読んだ後に感想を聞かれて、わたしが答えられずケンカになった。
こういう本の感想ってどこにフォーカスしたらいいのかなとチャレンジ。
あと、このコロナ禍でよく耳にするようになったリベラルについても、ちょうど再学習したい。

この本で気になった内容
■正義
・おおよそ平等、自由、宗教の3種類に分けられる
■主義
・それぞれの正義を実現するためには、平等→功利主義、自由→自由主義、宗教→直観主義に行きつく
・それぞれの主義をとっぱらった公平な状態で選択するのが社会的正義
■「正しい」「善い」とは
・そもそも正義や正しいとは何か?
・「正しい」の上位概念は「善い」=「正しさ」の条件が「善」のため
「正しい」という概念の基盤は「善い」を前提に成立
・悩みや迷い、疑いを考えたとき、そこには「善」「善を目指す意思」が必ず存在している
・人が幸せに生きるためには、他者の視線(=パノプティコン・システム)に操られず自由に生きること
■自分基準での「善い」
他者視線に操られず自由に生きるには「善く生きること」つまり自分が「善い」と思った通りに生きること
・「善い」とは「社会的に善い」ではなく「自分的に善い」ということ
・「自分的」価値基準で行動するので他者の視線も評価もない
・むしろ他者視線や他者評価ではなく「自分がすべき」と思ったことが「善い」の定義
・自分基準の「善い」が効果を生み出さなかったり、間違っていたと後から思うこともあるかもしれない
・だとしても、やはり今この瞬間「善い」と思ったことをして生きていくしかない。
・なぜなら自分が「善い」と思う生き方をしない限り自由で幸福な人生は起こりえないから。

感じたこと
数年前にマイケル・サンデル教授の正義に関するTV番組が話題になった。
そのとき、「正義」というものについて興味がわいて、本を読んだのかそれともTVを見たのか忘れたが、入り口までたどり着いていたことを思い出した。
そのとき、母に「もし自分の子供とおばあちゃんと一緒にいて、どちらかの手を離さないと二人とも死ぬことになったらどうする?」と聞いた。
母は少し考えて、「うーん。多分おばあちゃんの手を放すかな。残りの命の長さを考えると」
「でも、手を離したことは一生覚えているだろうね」と自分的基準で答えてくれた。

この本は、ページの多くを正義を実現するための3つの主義とそれぞれの問題点に触れていて、最終的には「正しさ」とは何か?というゴールに向かって話が進む。
この本ととある人からの言葉が繋がってひとつ気づきがあった。
「きみの『正しい』は社会的な『正しい』だね」
「きみの『正しい』が知りたいんだけどな」とその人は言った。
わたしはわたし基準の「正しい」を判断していると思っていたから、そのときはぜんぜんピンとこなかった。

外からは、わたしの判断基準や行動基準は「自分的基準」ではなく、社会的に見て間違っていないか、正しいと評価されるか、という他者視線や評価に操られているように見えていたのかな。

自分でも無意識に「善い」をベースにした「正しい」と思う基準が、実は自分が属している集団の価値基準や評価に沿っていないか?
それを自分の価値基準と勘違いしていないだろうか?
本当は、自分的基準は持てていないのではないか?
と考えさせられた。

読み終えてやりたいこと
わたしの価値基準って何?
わたしの「善い」「正しい」こと?
わたしの「善い」「正しさ」はわたしの思うままでよい。
それを誰かにとやかく言われることはない。
自分の判断した「善い」や「正しさ」が、他人に評価されて否定されたりすることを怖がっている自分がいる。
よく考えてみれば大きなお世話だし、気にする意味はない。
だって自分が自由に幸せに生きていくために、自分が「善い」と思ったことをやっていくのだ。
他人に承認されたり評価されるためではない。
ましてや、他人から承認され評価された「善い」で自分が自由なのだろうか。それで自分は幸せなのだろうか。
まずは、自分的基準や自分的な「善い」ことは何か?を意識しながら毎日を過ごしてみて、自分という輪郭を少しづつくっきりとさせていこうと思う。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?