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究極の求人広告はブランディング

今日は『ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門』という本を読んで刺激を受け、もうどうにも筆が止まらないって感じで書きます。

ぼくは毎週金曜日に『広告本読書録』というnoteを書いています。なぜそんなことをやっているか、というようなことについては以下に詳しいのでご参照ください。

この連載のために、というわけではありませんが、書店に行くと足が自然と広告やマーケティング、アイデアといったコーナーに向かいます。あの日はたしか土曜日の昼下がり。池袋のジュンク堂という巨大な本屋さんでした。

いつものように「屯ちん」でおいしいラーメンを食べて

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満足したぼくは広告のコーナーに行きます。5階です。さすがにこれだけ続けているとそれほど目新しいタイトルはないので、いつものように流し目でササーッと棚を眺めるんですね。すると見覚えのない白い本が。

『ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門』

著者は原野守弘さん。雑誌ブレーンなどでお見かけしたことのあるクリエイターです。パラパラめくるとなんとなく読みにくい。それもそのはず、洋書のように横書き左開きという体裁で、単純に読み慣れていないわけです。

でもそんなに厚くないし(192ページ)なんだか面白そう。じゃ、買ってみるか、読書録のネタにもなるし。と軽い気持ちでレジへ。そして翌週月曜の朝、通勤電車の中で読み始めると…その日の午前中は仕事なんかしてられないって感じで夢中に。あっという間に読了です。

久しぶりに刺激された知的好奇心。ビジネスパーソンのための、と書かれていますが、それはとりもなおさず求人広告制作者のための、と置き換えられるじゃないか。あるいは本書の中で何度も出てくるクリエイティブ初学者もまた、求人広告制作者とニアリーイコールだ。

ぼくは興奮しながら二度目の読了に向けて最初のページに戻りました。

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なぜそれほどまでに魅了されたのか。

そのひとつは、さきほど書いた通り。この本が対象にしているビジネスパーソンとは、まるっきりクリエイティブと無縁の方々ではない、と睨んでいます。なぜならそんな人はこの本を手にとらないだろうから。

すくなくともクリエイティブに関わる機会の多い、非クリエイターを指しているのではないか。たとえて言えば宣伝部員とか広報部員とか、あるいは意思決定者ですね。

そしてその立ち位置というか、能力特性が、実は求人広告制作者と非常に近しいんです。

ここでいう、というか、ぼくが口にする求人広告にはアルバイトやパート、派遣社員募集のものは含みません。ほぼ中途採用、転職を目的とする広告のことを指します。

かねてからおもっていたことであり、自分のことでもあるのですが…語弊を恐れず言えば求人広告制作者というのは非常に中途半端な存在です。

いわゆる一般広告のクリエイターの水準に届かないレベルのクリエイティブでも通用してしまいます。そしてその代わりに、というかその逆に、一般広告のクリエイターには求められないビジネスマナー、ビジネスの常識、ビジネス感覚みたいなものが求められます。

人と仕事、人と会社を結びつけるコミュニケーションの仕事をする上で必要なのは、アーティスティックな発想や奇想天外なクリエイションよりも、市井のビジネスパーソンの生活感。

だから毎日満員の通勤電車に揺られることや、首もとが窮屈でもネクタイを締めること。朝礼や日報、報連相を重視すること。遅刻などもってのほか…みたいな価値観がデフォルトだったのです。

(いまは知りません。おそらくずいぶんラフになっていることでしょう)

ビジネスパーソン以上、クリエイター未満。それこそが求人広告制作者のポジショニングといってもいいでしょう。つまり、原野さんの本がターゲットにしているビジネスパーソンに非常に近い存在なわけです。

だから、興奮するのですね。

この本に書かれていることを理解し、実践することが、求人広告制作に携わる者に非常に有効であり、有益なんです。これは本当に声を大にして言いたい。もう耳にタコ、じゃなくて目にタコ(気持ちわるい)ができているかもしれないほど何度も書いてますがこの連載は求人広告制作関係者に向けられています。だから読んでいる人は求人広告制作者であるはずです。で、あるからには、この『ビジネスパーソンのためのクリエイティブ入門』は必読。そして理解し実践しましょう。

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かなり興奮して筆が滑ってますが、今回お伝えしたかったことはそれだけではありません。

原野さんはクリエイティブ部門に異動したのち、カンヌの入賞作品を見てあることに確信を持ちます。それは日本では広告と販促が混在してしまっている、ということ。グローバル・スタンダードは、広告は物を売りません。広告はブランディング目的で作られ、使われます。そして物を売るのは販促、セールスプロモーションですね。

そしてブランディングとは愛されること。熱狂的な支持者、ファンをつくること。そのために自分のことではなく、そのブランドが好きなことを語るのである、と定義づけます。にもかかわらず多くの企業が物を売ろうとして自分のことばかり声高に語っている。

だからいつまで経ってもAppleやNIKEに追いつけないし、追い越せない。愛される交換不可のブランドと、代替可能なコモディティとの差は縮まらないのだ、といいます。

ぼくはこれを読んで「待てよ」とおもいました。広告は物を売らない。広告はブランド価値を高めるために行われる。求人広告も物を売らない。求人広告によって企業ブランド価値を高め、ファンになってもらうことで求職者を応募へと誘う。販促とは違う。

いや、もっと正確にいえばアルバイトや派遣スタッフなど、仕事選びの軸が条件という場合は販促に近くなる。でも、正規雇用で新卒や中途入社を目的とする求人広告は仕事軸や労働条件と同じぐらいの比重で会社軸も重要になってくる。

そしてそれほど大きく待遇条件に差がなく、しかも広く浅くさまざまなキャリアを積むことが是とされる昨今は、これまで以上に「誰と働くか」「どこで働くか」が注目されるようになっていくはず。と、なると少しでもセンスのいい会社を選んだほうがいい。

Googleやマッキンゼー、サイバーエージェントなど知名度の高い企業ならまだしも、世の中の大勢を占める名もない大手や中小は、どこでセンスの良さをアピールしたらいいのか。ひとつには自社ホームページでしょう。でもそれ以上に届けたいターゲットに最もダイレクトに届けられるのは、求人広告ではないか。

そう考えると、求人広告はもっともっと企業ブランディングを意識すべきではないのか。もしBtoBにせよBtoCにせよ、顧客に向けて何らかのブランディング活動をしているのなら、それを踏まえた上でアプローチを考えなければいけないはず。

あるいはそういった活動がないのなら、求人広告を軸にブランディングを展開していくのもいいのではないでしょうか。やがてはそのアプローチがその企業のカスタマーに好影響を及ぼすものになるよう設計してもいいのではないでしょうか。

そうすれば求人広告制作にフィーが発生させられるはず。採用予算だけでなく、広報や宣伝からも予算を引っ張ってこれるから、媒体費は採用予算、クリエイティブは広告予算という建付けを成立させられます。

ここに求人広告のひとつの到達点があるんじゃないか、と考えたのです。

いやそんなのとっくにパラドックスやカケハシスカイソリューションズがやってるよ、という声が聞こえてきそうですが、どの先達も厳密にはコーポレートブランディングと採用ブランディングを分けていますよね。あとアカウントとして狙っているのはある程度予算を潤沢に持っている企業になりますよね。

違う、そうじゃない。

ぼくが言っているのは、ごくふつうの、媒体に掲載する求人広告上で展開するブランディング。クリエイティブフィーといってもそんな巨額なものでなく媒体費とトントンのレベルでいいとおもいます。もちろん大きなプロジェクトに発展していく際には都度、請求すればいい。

そう、ふつうの求人広告制作者であるあなたが、今日これから作るすべての仕事でブランディングを標榜することこそ、求人広告クリエイティブの地位向上につながるんじゃないか、と言いたいのであります。

ああ、スッキリした。暑苦しくてスンマセン。最後にもうひと言。この本、求人広告制作関係者は全員必読ですからね。

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原野さんのnoteです!読んでから買うもよし、買ってから読むも良し。

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