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それ、求人広告が悪いんじゃないですよ

今回はひさびさにガッツリ求人広告の話をします。しかも私、求人広告の味方です。味方ですといえばこの本。

ハッキリいって面白いです。数あるプロレス本の中でも秀逸といっていい。さすがに初出が1980年なので話題は古いんですが、プロレスを観る視点や態度についてここまで熱く語っている書物はないでしょう。

さすがにこの値段で手にいれるかどうかと言われると首を傾げざるを得ないのですが、神保町や中野ブロードウェイあたりの古本屋で2000円以内の値札が付いていたら即買いです。マストバイ。

ガッツリ求人広告の話をします、と宣言しておきながらガッツリ村松友視さんの本の話をしてしまいました。

いまどき求人広告では採用できない、の謎

さて、すっかり人材紹介がメインストリームとなりつつある転職市場。日を追うごとに立場がなくなりつつある求人広告ではあります。最近の採用界隈ではこんなフレーズをよく耳にします。

「経験者は求人広告では採れないよね…」
「求人広告は高年齢層の応募ばっかり…」
「求人広告経由だと質が低いんだよね…」

ふむふむ。ひと昔前なら求人広告を使っていたユーザー層がみんな人材紹介に流れていき、というか人材ビジネス事業者の金になるほうへ流されていき、求人広告の登録者データベースに残るのは紹介の俎上に乗らない残念スペック層や高年齢者のみということが言いたいんですよね。

まあ、それもわかります。リーマンショックを機にどの求人メディアもこぞって「前金から後金へ」ビジネスモデルを転換しようと企てました。

同時にチマチマ掲載料で稼ぐより成約時年収の30%~40%もゲットできる紹介業のほうが旨味があると気づき、求人広告はあくまで人材の仕入口ぐらいにしか考えなくなりましたからね。

しかし、しかしですよ。

そうやって「求人広告オワタ」とか「求人広告オワコン」とか「求人広告オワリ名古屋は城で持つ」とか言う前にですよ、一度見直してほしいものがあります。

それは「原稿」です。

たいていの求人広告の原稿はおかしい

ぼくのもとにはかれこれいろんな方から「求人広告で人が採れないんですよ、ちょっと見てもらえます?」という相談が舞い込みます。それはとてもありがたいんですが、ぼくはその度に「またか…」と思うんです。

そういう場合、まず間違いなく求人広告の原稿、つまり広告コピーがおかしなことになっているからです。

いちばん訴求すべき案件の魅力であるはずのキャッチコピーとボディコピーが、単なる仕事紹介や企業説明になっていたり。

ある程度の判断軸を持つ経験者が求める情報はミッションかポジションか待遇なのに、熱くやりがいについて語っていたり。

応募資格と仕事の難易度、さらに給与額や休日休暇などの待遇条件がどう考えても整合性取れていなかったり。

単にコピー表現として稚拙かどうかだけでなく、原稿全体を通しての設計が上手く成立していないものも見受けられるんですよね。

「これでは質の高い人材は応募してこないですよ…無理もないです」

いつもそういう結論で終わるんです。だから「またか…」なのね。

なぜ求人広告の原稿(コピー)はダメになっているのか

前述の通り、求人広告サイトを運営する企業が求人広告クリエイティブに力を入れなくなったからです。リーマンのときに堪えたのでしょうか、猫も杓子も自らのビジネスモデルを頭から否定しはじめたんですね。

社内は求人広告叩き上げの侍しかおらん!ええいこうなれば外部からコンサルを呼ぶまでよ、と地獄行きの切符を手にする会社もありました。

コンサル人たちはたいてい「事業ドメインをピボットする」みたいな耳障り新鮮な単語を口にします。そういう仕事ですから。

そうすると、求人広告ひと筋80年のピュアな人たちは「ははーっ」となり、あわてて俺たちもピボットピボット言いはじめます。

そしてその結果、私たちのコアコンピタンスは人材データベースだ!そうだこれからはデータの時代だ!人材DBを拡充させてマーケットプレイスをつくるのだ!目指せ人材のアマゾン!アーマーゾーン!!

ということでどの会社も仮面ライダーアマゾンと化してしまったんですね。

そうなるともうどうでもいいわけですよ、求人原稿のクオリティなんか。そんな属人性の高い、手間暇かかる、ブラックボックスみたいなものはほっとけほっとけ。とにかく会員数を増やして優秀層を紹介サービスに流すことに注力しろ。あとのことはおまけだ。

と、ここまで過激な発言はなかったと思いますが、まあ、当時の各社経営企画や事業戦略あたりが考えていたのは軒並みこんなことでしょう。ゆえにソフト面の弱体化は必至だったわけです。

あなたが欲しい質の高い人材は文章を読みます

そんなこんなで質の悪い求人広告があふれることになり、今回の話はふりだしに戻るわけですが、それでおしまいにしてはいけません。

少なくともあなた(って誰?)が望んでいる人材が欲しいのであれば、掲載している求人広告原稿をもう一度しっかりと見直して、制作者に作り直しを命じるべきだと思います。

なぜなら、あなた(って誰?)が欲しいと思っているのは質の高い人材なわけですよね。質の高い人材は文章を読む力ありますよ。多少長くても、自分が次に人生を賭けようとしている会社の募集情報はきっちりと読みます。その姿勢が質の高さを担保するなによりのエビデンス。

よく「いまの若い人は文章読まないから」とあたかも若者代表みたいな顔で言う人がいますが、それはその人がその商品やサービスの対象者じゃないからですね。あるいは自ら「ぼくは文章を読まないキリキリパーでえすアハハ」と告白しているようなものです。

だから、しっかりと自社の募集はいったい誰に、何を、どのように伝えようとしているのかを考える。自分たちが言いたいことではなく、対象となる求職者が知りたいこと、言ってほしいことは何かを伝える。伝達内容にフィットした切り口で、言葉で、表現する。

賢い人はきちんとその情報が自分に有益かどうか判断します。

それができていないのに「求人広告では採れないんですよね」とか言ってる場合ではないと思うんですよね。

ああ、なんだか求人広告って求職者と求人企業のどっちが賢者かを競うゲームみたいに思えてきた。もちろんどっちも賢者の場合、幸せな採用成功が実現するんですけど。

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