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社長のことは、きちんと社長と呼んだほうがいいのではないか

いま、世の中の多くの中小企業ならびにほとんどのベンチャー・スタートアップ企業では、役職者のことをあえて「さん付け」で呼びますよね。

呼びますよね、とか断定してしまいましたが確固たる統計数値があるわけではございません。ノーエビデンス、イエス高須クリニック。

なので肌感で恐縮なのですが、おそらく、どこんちにいっても社長も常務も専務も本部長も課長も係長も主任も(このあたりがどっちが上役なのかわからない)みーんな「さん付け」で呼ばれているはず。

これはいったいなぜなのか。

何に起因しているのだろうか。

いつものようにちょっと考えてみます。
暇だから。

そもそもぼくの

最初にお世話になった会社は目黒に本社を構えるバリバリの中小企業でした。リクルートや学生援護会の販売代理店ですね。従業員数でいうと、ぼくが入社した時に80名ぐらい。退職した年に100名超えたとか。

立派な中小企業です。

その会社は「さん付け」ではありません。きちんと社長は社長、部長は部長、課長は課長と、苗字に肩書をつけて呼んでいました。ご兄弟で経営なさっていて、お兄さんが社長、弟さんが副社長。それがややこしくて弟さんだけ名前に「さん付け」で呼んでいたような気がします。

ここんちの社長、怖かったです。なかなか近寄り難い存在でしたし、何考えているかわかりませんでした。もちろんぼくが末端中の末端社員だったこともあるけど、だけどある一定以上の肩書の人たちとは笑顔で喋ってて、ああ笑うこともあるのか、とおもったものです。

でね、それは決して悪くないなとおもった。なんか、いまはまだ下っ端だけど、おれもいつか偉くなったらあっち側に行きたいな、なんて。

会社って、上司って、そういうもんだよな、と無条件に受け入れていましたね。

それから先の会社では

結局その会社ではあっち側にいくことはなく、次にお世話になるのは神楽坂のデザインプロダクション。総勢7名のこじんまりとした会社でした。そこでは当然、社長なんて呼ばない。「さん付け」でしたね。

そして以下、肩書がある人がいないわけ。部長も課長もいない。チーフもいない。デザイナーはデザイナー、コピーライターはコピーライター。実にわかりやすいです。

ぼくはこの会社ではじめて、怖くない社長というものを経験します。

次に飛び込んだのはもっと規模が小さい、たった4人のコピーブティック。この流れでいくと当然、ボスもカジュアルに「さん付け」だろうとおもうでしょ。ノンノンノン、ノンノンシェフです。

ここがどえらい絶対君主制で、ボスが白といったら黒いベンツも白く塗らなきゃいけないぐらいのマッチョな世界。苗字にさん付けで呼んだらぶっ飛ばされます。ふたたび超弩級に恐い社長に仕えることになったわけ。

ここで3年間、ボスのことを「社長」と呼ぶ日常を過ごします。すっかり最初の会社の環境に戻ったわけです。違いがあるとすればここにはあっち側が存在しないってこと。あっち側すなわち死を意味してます(笑)。

居酒屋、ふたたびベンチャー

そしてつくづくコピーライターという仕事が向いていないとわかり居酒屋に転職します。水商売時代にオーナーのことを社長と呼んだことはない。

俺もバイトからスタートして社員、そして店長と位が上がっていったものの特に「ハヤカワ店長!」「ハヤカワ大統領!」などと呼ばれたことはございませんでした。

オーナーは特に恐い人じゃなかったです。

その後30歳でネット系ベンチャーに転職するのですが、ここがまた肩書呼びをしないことを公言する風土。代表が朝礼や入社式などでのスピーチでやたら「さん付け」で呼び合う風土を礼賛というか自画自賛していたんですね。

「ウチはですね、社長も部長もありません。みんな苗字やあだ名にさん付けで通しています。そういう風土なんです(ドヤァ」

恐ろしいぐらい解像度が低いスピーチですが、要は風通しがいいんですよ、みたいなことを伝えたかったんだろうなと。

ぼくはそうかそんなもんか、まあそうかもな、とあまり深く考えずにその風習にのっかりつつ14年ほどお世話になったのでした。

もちろんぼくもリーダー、マネジャー、部長、本部長と順当にキャリアの階段を上がっていくのですが、一度として「ハヤカワ本部長」と呼ばれたことは……

あった、ありました。

昔、住友生命のおばちゃんがお昼休みにオフィスをうろついて営業することを許されたとかで、そのおばちゃんからは「ハヤカワ本部長!」と呼ばれてたわ(笑)。彼女、組織図もって歩き回ってたからな。

ぼくはそう呼ばれるたびに「背中がこそばゆいからやめてください」とお願いしていました。

ちなみにそのおばちゃんの押しの強さに根負けして生命保険に加入したんですが、その契約の御礼に、といただいたのが当時ぼくが吸っていたジタンの紙巻きタバコ1カートンでした。

え?その会社の代表?ああ、そりゃもう、こえーのなんのって。30過ぎて背中で汗かくほど怒られる経験を何度もしましたよ。

そろそろテーマに戻ります

ぼくはその後、渋谷のベンチャーに転職し、いまだにお世話になっています。もちろんこの会社も「さん付け」ですね。規模としては100人ぐらい。

まとめますと「さん付け」する会社には次のような狙いがありそうです。

・風通しの良さを体現したい
・ベンチャーっぽさをアピールしたい
・役職はあくまで役割だと知らしめたい
⇒肩書至上主義(勘違い)にしたくない
・キャリアダウンしやすくしたい
・照れ

だけど、自分の経験でいうと「さん付け」だからといって風通しがいいとは限らないんですよね。さらに「さん付け」だからといって肩書至上主義にならないわけでもない。それどころかデスクの位置や大きさにまでチマチマこだわるヤツが跋扈していました。

風土をつくりたいなら事例をつくっていくべきなのに、表面上の言葉だけをいじったり変えたりしても、あんま意味ないとおもうんです。

むしろ逆に「さん付け」によって、それぞれのポジションに就く人間から責任感や役職の重みみたいなものが消えていないか、とすらおもいます。

ほら、よくいうじゃないですか、立場が人をつくる、って。

社長だって、部長だって、生まれた時からそうじゃないはず。毎日の仕事の中で社長と呼ばれ、部長と呼ばれ、だからこその責任を日々感じ続けることによって社長に、部長に、役職者に為るんじゃないかと。

あと、照れてる場合じゃねえだろ、と。社長と呼ばれて照れてるうちは半人前以下だから一兵卒からやり直してもいいかもしれません。金をひっぱってくるのが社長、という意見もありますがこれからの社会ではいかがなものかと。

ベンチャー企業に勤めていて、あるいは主宰していて、組織づくりがどうも締まらない、なんてお悩みを抱えていたとしたら、一度ためしてみるのもいいんじゃないでしょうかね、あえての「さん付け」撤廃。デメリットよりメリットのほうが大きいんじゃないかとおもいますよ。

あれ?なんかまじめな内容になっちゃってませんか?

これだからGWはなあ。

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