欲しい人物像だいたいおんなじ説を検証する
求人広告制作者に向けて書いているこちらのnoteですが、今年に入ってからどんどん水曜日のダウンタウンみたいになってきました。
今回は企業が「求める人物像」というのがここ数年でかなり似通ってきていませんか?という話です。そして似通ってきている中で、それでも求人広告クリエイターができること、やるべきことは何かについて考えていきたいと思います。いつになくまじめな書き出しですが、まじめなのは冒頭だけですのでどうぞご寛恕賜りますようどちら様もよろしくお願いいたします。
こすりたおされた人物像
往々にして求人広告を作る時に最初に行なうのが、採用ターゲットの設定です。ひらたくいえばどんな人を採用したいの?ってことなんですが、これは大きく2つに分けられます。
ひとつはスペック。経験の有無や年数をはじめ、書けないけど年齢、書けないけど性別、さらには保有資格など定量で測れる条件ですね。これはとてもわかりやすい。具体的です。
そしてもうひとつはタイプ。主体性があるとかフットワークが軽いとか、書けないけど明るいとか、書けないけど健康とか、さらには論理性など定性情報が中心の条件ですね。抽象的です。
今回取り上げるのはこのタイプ。これがどこの会社もほとんど同じになってきているのです。しかも職種傾向も一部エンジニアやクリエイティブ職をのぞくとあまり見られなくなりつつあります。
代表的なやつをあげてみましょう。
主体性・積極性
論理的思考力
当事者意識
陽転思考(ポジティブシンキング)
コミュニケーション力
自律型・自立型
協調性・謙虚さ
自責志向
だいたいこんなところでしょうか。このうちのいずれか、あるいはほとんど全てを求める会社のなんと多いことか。
こんなん全部備えているやつ。ひと言であらわすとしたら陽キャでリア充でめちゃくちゃいいヤツやん。そりゃどこの会社だってほしいわ。
ビジネス書に見る優秀人材
わたしはこの求めるタイプを眺めているうちに、あることに気づきました。それは、ここで挙げられている要素がすべて「ビジネス書」に描かれているものである、ということです。
多くのビジネス書にはだいたいここに挙げたタイプが成功するし成長する、というようなことが書いてあります。それはもう太古の昔から変わっていないよ。
これとかそうだし。いま出版されているビジネス書、自己啓発書の9割はこれと「人を動かす」と「マネジメント」の拡大再生産版ですから。
つまり、こういったビジネス書を読んだ経営者あるいは人事責任者もしくは採用担当者が感極まって自社の最適人材はこれぞ!と定義しているのではないかと思うわけです。
そりゃ似てくるわ。
規模の大小は関係ない
ここまで読んで「いや大企業とベンチャーとでは違うはずでしょ」みたいに思う方もいらっしゃることでしょう。さらに「ハヤカワ某が零細ベンチャーとしか仕事してないからそう思うんじゃないの」などという酷いことを頭に浮かべた方はいないと信じていますが、それでも世の中に『絶対』はないですからね、いるんでしょうね、きっと。
確かに大手ともなればさすがに社内にはいろんなタイプの方がいらっしゃいますよ。でもですね、いざ求人広告を出す、となるとこれが恐怖のおんなじおんなじターゲットに豹変するんです。
いわく「外から新しい風を入れたいんだ」「中の奴らに刺激がほしくてね」「純白な新卒集団の中に色の付いた中途をいれて合金組織にしたい」まあいろんなことをおっしゃる。
その結果、求める人物像は上記の通りになる。そして中小企業やベンチャーが本来なら採用する予定だった人材を、その知名度と安定性でガサッとかっさらっていくことになるのでありました。
おしまい。
まれに例外もある
それでもときおり上記からはずれた人物でもいい、というオーダーが来たりして、求人広告制作者は(ほんとうか?)と首をかしげることになります。
だとしてもせいぜい「協調性はいらない」とか「謙虚すぎると主張がなくなるのでそこは押出しが強くていい」みたいな、まあさすがにそこまで求めてはいけないよね、というレベルの話だったりします。
しかし、本当にまれに「コミュニケーション能力?いらないよ」とか「主体性はいまの段階ではなくていい」とか、思わずこっちが心配になるような人物像を口にする経営者がいたりします。
そういう場合はまずまちがいなく30名前後のベンチャーで、経営トップが自ら選考、採用を行ない、入社後の教育もめっこりやるケースです。教育に興味関心の強い経営者、起業家に多く見られます。
でも本来はこれがあるべき姿なんじゃないか、とぼくは思います。
某ベンチャーのトップに話を聴いたんですが「入社してからもちゃんと向き合ってちゃんとやりとりしていればちゃんと育ちますよ」と新卒社員教育について言ってました。そしてそれは経営者にしかできないかもしれない、とも。
ちなみにその会社は新卒も中途も本当に「大丈夫なのかな?」という採用をしながらも、代表自らがしっかりと戦力化。一年後ぐらいに会うと見違えるほどに視座が上がっていたりします。
そして、それだけに急激な拡大はできない、とも言ってました。そりゃそうだろうなあ。なかなかむずかしい問題ですよね。でも一方で成長から成熟へと言われるこれからの時代にはあっているような気もしています。
求人広告制作者はどうすればいい
どんなタイプの人材をターゲットにしましょうか?という問いに対して上記の特徴がスラスラでてきたとき、ぼくたち求人広告制作者はなにをすべきでしょうか。
結論としては、期待値調整を経て現実味のある人物像に落とし所を見つけることになります。
まずは先方のおっしゃることに耳を傾けましょう。ふんふん、と聞きながら一旦すべて受け止めます。
その上で、社長のまわりにそういう人はいますか?と確認してください。挙げていただいた特徴を全て有している人は果たして実在するのかと。
まず、いませんよね。
そうしたら、なぜいままで社長のまわりに存在しなかった人物が突然ガバチョと現れるのでしょうか、と確認します。いやそのためにお前んとこに求人出すんだよ、と至極まっとうなことを言われたらひとこと。
おっしゃるとおりですね。
で返しましょう。ただし、正直そこまでの傑物は引く手あまた。求人広告でおいそれと採用できるものではありませんと伝えるべきです。だいたい求人広告を出すのにいくらつかっていますか?と聞けば殆どの場合、お値段以上ニトリなオーダーを出していることに気づくはずです。
そこまで来たら簡単です。どうしても譲れない順に3つまで優先順位をつけてもらいましょう。さすがに現実味のある人物像に落ち着くのではないでしょうか。
なんとなくおもしろくないので
本日お伝えしたかったことは以上なんですが、書き終えてみるとなんとも面白みに欠ける回だったな…と早くも反省しています。
ですのでおまけというわけではありませんが、人事や経営者が求めがちな人物の構成要素を裏返して見てみることにします。
もしかすると、ここに人間の本質といいますか、真実が隠されているかもしれません!
主体性・積極性→押しが強い・でしゃばり
論理的思考力→理屈っぽい
当事者意識→思い込みが激しい
陽転思考(ポジティブシンキング)→懲りない人
コミュニケーション力→その場限りの人
自律型・自立型→わがまま
協調性・謙虚さ→ひっこみ思案・言い訳先行
自責志向→思考停止
物事には裏表があります。そして物は言いようとはよくいったものであります。そうそう、転職市場では非常に評価の高い陸経路出身者でも会社によってはほぼ使い物にならなかった、というケースもございます。
やはり、周囲に流されずにしっかりと自社に適した人材を定義することが大切ですね。
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