求人広告の効果がでないとき、どうすべきか
営業マンが粘りに粘って受注した珠玉の一社。あるいは新人が長いトンネルを抜けてようやく獲得した初受注。はたまた掲載するだけで媒体価値が上がるほどのネームバリューを誇る優良企業。
こうした案件がやってくると、制作マンとしては身が引き締まる思いですよね。よおし、いっちょええ広告こさえて、クライアントも営業マンも泣くほどよろこばせちゃる!と、思わず腕まくりしたりして。
ところが、これが予想を大きく外れて、応募がこない、または少ない。エントリーが来たとしても書類選考でサクッと不採用になる。面接までセッティングしてもドタキャン、あるいは二次に進まない。
「なーんだ、口ほどにもないんですね」
みたいに思われて悔しい…だけならいいけど
「おいどうなってんねん金返せや!」
みたいなクライアントとのトラブルに発展したりして。こうなると担当営業は悲惨です。お客さんと会社(正確には営業部)との板挟み。なんとか応募が来ないかイノローゼだったのが気づけば本物のノイローゼに。
その頃には制作担当者もさすがに(´・ω・`)ショボーンです。
しかしここで悄気げていても仕方がありません。少しでも現状を打破するために掲載中の求人広告を分析します。
この時によくあるのが
「キャッチがいまいち難解なんじゃないの?」
「いや、ボディに具体性がないんだよ」
「画像をさ、もっとターゲットに刺さるものに」
と、見た目デーハーな部分からメスをいれてしまうこと。
これ、大きな間違いなんですね。と、いうことで今回は求人広告における効果分析のイロハについて説明します。
そもそもPVが伸びない場合
ほとんど全ての求人サイトは求職者が希望条件を入力し、サイト内にあまたある求人の中から自分にあった案件を探し出す仕組みになっています。
なのでトップページを除いて求職者が最初に目にするのは検索結果画面。検索結果画面はそれぞれの求人広告のダイジェスト版みたいなカセットがずらりと、何ページにもわたって並びます。
このカセットをクリックされたときに発生するのがPV(ページビュー)になります。つまりPVが伸びないということは検索結果一覧の中から選ばれていないというわけ。
じゃあどうすればいいかというと、ずばり、選ばれるようにする、です。
そのためにまず「なにが(どこが)原因で選ばれていないのか」を把握すること。やり方は簡単です。ずらっと並ぶ検索結果画面を見ながら、掲載されている情報の中で他社と比較して見劣りする箇所を抽出する。
求人広告を眺めていればその業界の相場がわかる、とは昔からよく言われていますが、まさにその通り。媒体によってバラツキはありますが注目すべきポイントは「職種名」「給与額(年収例)」「仕事概要」「応募資格」ですかね。
たとえば検索結果画面にズラリと年収500万円クラスの案件が並んでいたとして、そこに自分が担当した案件が300万円だったら…そりゃ選ばれないですよね。
はたまた未経験者歓迎の案件ばかりの中に、ひときわ輝く経験者募集!があったりしても、これまた選ばれにくいと言わざるを得ません。ま、経験の有無は最初の検索軸で入力するはずなので、あまりこういうケースはないのですけど。
とにかく見劣りする箇所、あるいはクリックの手を止める可能性を秘めた部分を抜き出して、改善するようにしましょう。もちろんクライアントの協力が必要な場合もあります。でもこのまま放置しておいても状況は改善しません。粘り強く交渉しましょう。
また、唸るほど採用予算があるクライアントの場合、プランアップを忘れずに。中身を良くして露出を上げれば効果改善間違いなしです。
PVはあるが応募数が少ない場合
PVが稼げているということは検索結果のカセットには問題ない、ということがいえます。興味を持ってクリックしてもらえるところまでは合格。問題はその先にあるわけです。
この時、最初にやるべきは検索結果画面に露出していない募集データを疑うことです。これも媒体により若干の差はありますが、多くは休日休暇、昇給賞与、福利厚生、そして会社概要ですね。
データは正直です。嘘をつきません。ゆえに分析や検証がしやすい。逆にコピーや仕事内容、先輩の声といった判断に不確定要素が混じる箇所は後回しにしましょう。
応募資格は満たしている。仕事内容もまあまあ。給与も、満足とはいえないが転職する上では合格。ということでクリックして詳細情報に訪れて、思った以上に休みがない、想像を超えて待遇がしょぼい、あるいはボーナスがないといった面も応募の足をひっぱりますね。
また、威勢のいいことを書いていても、会社概要を見たら資本金が書いてなかったり、社員数が異様に少なかったり。そもそも会社概要がうすっぺらいとそれだけで情報の信頼性、信ぴょう性が低下します。
また、これもよくあるのですが無意識にノイズをばらまいているケース。たとえば勤務地に「転勤はありません!」と書いたその舌の根も乾かぬうちに「希望者は東京本社への転勤も可能!」とか。あるいは「未経験者歓迎!」のすぐ横に「経験者優遇!」と入れてみたり。
気持ちはわかるんですが読み手からすれば「どっちやねん!」ですし、そもそもブレてるなーこの会社、と余計なマイナスを点けられるのがオチです。きちんとターゲットを絞りましょう。
応募があっても書類通過しない場合
さて、上記の改善をほどこして、待ちに待った応募があったとします。やったー!と喜んでいたのもつかの間。全然書類通過しない。書類選考のお眼鏡にかなわない。これ、一体どういうこと?
多くは年齢を理由に不採用となっていると思われます(ほんとうはやってはいけないことですが)。それ以外だと経験者募集なのに未経験者からの応募、ということも考えられます。その逆はまず、ないでしょうけどね。
昔は他府県、しかも遠方からの応募というだけで落とされるケースもありましたが、流石に最近はリモートワークもできますし、入社をきっかけに会社の所在地に転居するという応募者もいます。
さて、こういう時はどうするか。
改正雇用対策法により求人広告で年齢制限表記ができなくなってからはや15年。もはや応募資格に年齢表記はできません。例外事由もあるにはありますが、それに該当しないことは初回掲載時にわかっているはずです。
で、あれば。できることはコピーのアプローチを変えること。トンマナも若手向けにチューニングすることです。実際にあるのですが、求人広告のベテランと言われる人が作る原稿ってどこか上から目線だったり、やたら専門性が高かったりするんですよね。
違う違う、そこじゃない。ターゲットとなる層の感性が求めているのは何か。ここをきちんとキャッチアップしないと、いつまで経っても滑り続けます。応募者の年齢も同じ眼差しの高年齢者ばかりになったりします。
一例を挙げるとしたら、これはぼくの感覚ですが、いまどきは「稼げる!」「成長できる!」を声高に叫ぶのはちょいデンジャーかと。トゥーマッチな気分です。にも関わらず、大手求人媒体を見ると…
そうそう、これ、こないだ読んだ本ですが、求人広告制作関係者は必読といってもいいかもしれません。ついでに採用担当者も。
もちろん全ての若者が、というわけではありませんが全体の傾向をつかんでおいて損はないはず。
一次面接を通過しない場合
書類通過はするものの、一次面接でみんな落とされちゃう。ここまでくるともはや求人広告のせいでもなんでもなさそうですが…でもクライアントのためにひと肌脱いであげましょう。
まず、一次面接担当者が誰なのか特定します。そして採用担当者、あるいはその求人広告を担当した方と面接担当者の間できちんと採用ターゲットが握られているかを再確認しましょう。
よくあるケースが一次面接担当者が採用担当者である、というもの。その場合は何がひっかかって面接通過しないかを確認します。その理由の中から、求人広告上で改善できそうなことがあれば、手を打ちます。
どうも暗い人ばっかりなんだよね、とか、清潔感が、といった主観に基づく理由の場合は一度、面接担当を別の人、できれば現場の人と交代してみるのもいいかもしれません。
実際に一次が採用担当、二次の最終が現場のチーフという座組でなかなか一次通過しなかったとき、一次と二次を入れ替えたことがありました。結果、あれよあれよと面接通過率が上がったんですね。
原因が採用担当者の現場への過剰な忖度にあったのでした。
最終面接を通過しない場合
これはもう求人広告制作者としては関与できない領域ですね。しかしその理由はきちんとヒアリングして把握しておく必要があると思います。その上で次回の広告づくりに活かしたいものです。
内定出ししても辞退される場合
内定出しまでのタイミングを確認しましょう。優秀な人材ほど何社もかけもちで選考に進んでいるもの。最終面接終了後、即座に内定出しせずに熟考…なんてやっているとどこかの会社にかっさらわれてしまいます。
入社してもすぐ辞められてしまう場合
これは一度求人広告全般を見直すべきですね。書いてあることに嘘、大げさ、紛らわしい内容がないか。入社してみたら求人広告に書いてあることと違っていた、というのは本当に避けなければいけません。
世の中には採用を「仕入れ」などとうそぶいて、とにかく未経験を大量に採用すればいいんだよ、というスタンスの採用担当者や人事がものすごくレアケースですが、います。
いうまでもないことですが求人広告は一人の人生を大きく左右する重要な広告です。広告見て買った缶ジュースがまずかったのでもう買わない、という類のものとは異なります。
だから、応募があっても、書類通過しても、面接通過しても、内定出ししても、入社しても、それらはゴールではありません。
その後にその求職者が物心両面で豊かになること、そして採用した企業が業績を伸ばして成長することがゴールなのです。
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