思い出歌謡選手権
ずいぶん前にTwitterでつぶやいて、いまでも時折ふと頭に浮かぶフレーズがあります。それは「記憶と思い出は違う」です。
過去の記憶とかつぶやいてますが考えるまでもなく未来の記憶などというものは存在しないわけで「過去の」は不要だとわかります。こうしてぼくの日本語力の脆弱ぶりが露呈するわけです。
このつぶやきの意味するところは、記憶は客観、思い出は主観ということ。もう少しひらたく言うと記憶は事実に基づくことが要求され、思い出は本人の中で昇華されることが許される、みたいなことになります。
で、ぼく個人としては記憶より思い出派です。
ラフでカジュアルな性格のおかげで「28年前の8月28日、お前がオレに言い放った言葉を覚えているか!」などと言われてもまず答えられない。その代わりというわけではないですが、その時に何が起こったのか、ということについては都合のいい解釈で覚えていたりします。
そこで!
なにがそこで!なのかわかりませんが、突発的発作的に「思い出の」ではじまる歌謡曲極私版ベスト5を個人的な思い出付きでご紹介しましょう。
正確に言うと「思い出」と「想い出」は若干ニュアンスが異なるのですが、最初「思い出」だけで記憶を辿ったところ全然思い出せなくて「想い出」のほうが圧倒的に思い出に残っていることが判明。今回は思い出でも想い出でもどちらでもいいことにします。ややこしくてすみません。
第5位:思い出は美しすぎて/八神純子
昭和40年~50年頃、名古屋の小学校の理科室に常備されていた実験道具のほとんどがヤガミ製でした。そして八神純子さんは名古屋出身。しかも会社創業家のご令嬢ときています。
そこで当時の名古屋の小学生のほとんどは「そうか!八神純子は理科の実験道具の…」と早合点するのですが、どうやらヤガミはヤガミでも違う会社のようです。
理科の実験道具を扱っているのは株式会社ヤガミ。八神純子さんと関わりがあるのは八神製作所。調べたところではグループ会社ってわけでもない。のれん分け?まさかね。
とはいえ八神製作所も医療や介護、福祉の分野の専門商社ですからあながち無関係ともいい難い。深く掘って調べていけば源流はおなじ、ってことがあってもおかしくなさそうですよね。
ま、いずれにしても地元で有名な歴史ある企業の、創業家出身のご令嬢であることには変わりありません。
ははーっ!
みなのもの頭が高い。
小学生だったぼくたちはベストテンで八神純子さんが登場した翌日、理科実験室の三角フラスコやアルコールランプにひれ伏したものでした。
ばかですね。
それはそれとしてこの歌、唄い出しのコード進行が最高にしびれます。
第4位:想い出がいっぱい/H2O
ちょうど理科で(今回は理科ネタが続くな…)元素記号を習ったばかりの頃。全国的にも有名な「水兵リーベぼくの船 七曲りシップスクラークか」懐かしいですね。意味は全然わかりません。
そのうちの水素「H」が2個と酸素「O」1個が結合して水ができあがるわけですが、H2Oをグループ名に冠したフォークデュオの代表曲がこの『想い出がいっぱい』でござるよ。
あだち充先生の不朽の名作『みゆき』のテレビアニメ版主題歌として有名なこの曲。サビが印象的です。
「大人の階段のぼる~♪」
あれ?
いま香川照之の顔が浮かびませんでしたか?
ちなみにあだち充作品の中では『おいら放課後若大将』『陽あたり良好!』『ナイン』が思い出深い作品ベスト3です。『みゆき』や『タッチ』はその次ですね。
第3位:想い出の渚/ザ・ワイルドワンズ
子どもの頃、夏といえば海。海といえば海水浴。海水浴といえば日焼け。日焼けと言えばこれ!ではありませんでしたか?
コパトーンなんてない時代。もう日本全国どこの海もこれ一色ではありませんでしたか?香りも爽やかな正真正銘オイルどまんなか!って感じで。大人に混じってベタベタ塗りたくったものです。
ひそかに憧れていた年上の女性(レコード屋のフーちゃん)に「ヒロくん、オイル塗ったげる」といわれて全身真っ赤になったのも淡い思い出。
そんな幼少期の夏、海の家やサニーワールド長島などで必ず流れていたのがこの『想い出の渚』でござるよ。
ワイルドワンズをTVで見るたびに鳥塚しげきさんのことを『サンダーバード』のパーカーに似てる、と親に言っていました。そのたびにバカ似てねえわ、とこづかれていたのですが。
後年になりフジテレビによってぼくの説の正しさが証明されました。ありがとう!石田プロデューサー、港ディレクター!
第2位:ハンダースの想い出の渚/ザ・ハンダース
オリジナル発売から12年後。ぼくがちょうど10歳ですから小学校4年生の頃です。あの名曲の誉れ高い、父親やその仲間たちが夏になればビール片手にレコードをかけて絶唱する『想い出の渚』が、なんと、パワーアップして帰ってきました!
それがザ・ハンダースによる『ハンダースの想い出の渚』です。ハンダースはモノマネ四天王でおなじみの清水アキラが在籍していたお笑いグループ。他に、後のアゴ&キンゾーとなる桜金造やあご勇もいましたね。
映像をご覧いただければわかりますがほとんど清水アキラさんの一人舞台で、芸風もあまり変わっていません。
で。
あんな名曲をこんなふざけたネタにしやがって!と、血気盛んなぼくの父親with豊田本町ヤンガーズが怒り狂ったか…というとまるで逆で。
オリジナルよりハンダース版のほうが気に入ったようで、夏になると毎晩のようにビール片手に絶叫(モノマネ?)してました。
ぼくは多感な時期を迎えるかどうか、というキワキワの年頃でしたが、喜々として左卜全のモノマネをする父親を見て「人に迷惑をかけて生きるのはやめよう」と誓いました。
第1位:想い出のクリフサイド・ホテル/中村雅俊
こんな個人的なランキングに栄えあるもへったくれもありませんが、1位に輝いたのは中村雅俊さんの『想い出のクリフサイド・ホテル』です。
まあ1位もなにも思い出した順なんですけどね。
知ってます?
想い出のクリフサイド・ホテル。
TVドラマ『誇りの報酬』の主題歌、とのことですが、ぼくそのドラマみてないんです。
この曲は小・中・高とつるんで遊んでいたヤッチャン(ヤクザに非ず)が中村雅俊のファンだったということに端を発します。
ちょうど高校三年の時。彼女にこっぴどくフラれた(いやほんとひどいんですよ奥さん、この話またどっかで聞いてやってください!)ぼくが落ち込んでいると、ヤッチャンがどこからともなくやってきて
「まー、いつまでも落ち込んどらんと。こういうときは中村雅俊に限るて」
そういいながらラジカセにテープを入れ、再生ボタンを押します。ぼくはてっきり「ふれあい」とか「時代遅れの恋人たち」を聴かせてくれるとばかり思いました。
そして、こういうときは友だちだな。やっぱりもつべきものは親友だ。などと思ったものです。
すると、サンヨーおしゃれなテレコU4から流れてきたのが、これ。
うーん…いや、雅俊さんカッコいいし。いい曲だと思うし。佐藤準の編曲もイントロからいい味出してるし。
でもなんで?この歌、慰めとか癒しというよりブロークンハートにグサグサくるんだけど?
「お前、チカちゃん(彼女ですね)とラブホテルばっかり行っとったろう?オレむかついとったんだわ。ざまあみろだて。そういう意味」
その後とっくみあいのケンカに発展したのも淡い思い出です。
さて
いかがでしたでしょうか、というように感想をおうかがいすることすら憚られる、よくわからない長尺コンテンツに仕上がってしまいました。大変申し訳ございません。
それにしても昭和の頃っていうのは情報そのものも、チャネルもいまとは比べ物にならないほど少なかったですよね。
そのおかげで、一曲の寿命が長く、また拡散力もあったような気がします。
学校で、職場で、家族みんなで歌える唄。時代が変わってもデバイスが変わっても人間は変わってないのですから、そろそろ出てきてもいいんじゃないか?なんて思ったり、思わなかったり。
あ、ついていけてないだけで、もうすでにあるのか?
『うっせぇわ』とか。
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