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白色黒蛇 最狂決闘者ヘの道①

#白色黒蛇は決闘者である


 白色黒蛇は決闘者である。
 
 中学生の時、当時やっていたアニメ「遊戯王5Ds」を見た時から遊戯王をはじめ、高校で少し離れ、それでも結局大学時代に復帰して、なんやかんやで9年近く白色黒蛇は遊戯王OCGを嗜んできた。
 
 この世に数多のトレーディングカードゲームと呼ばれるコンテンツがあるが、取り分け遊戯王を好むのには訳がある。理由は至極単純。白色黒蛇はとても、とてもとても「引きが弱い」のだ。
ポーカーをやればブタばかり。ババ抜きでは常に手札にジョーカーを抱え、ブラックジャックをやろうものならしょっちゅうバーストさせてしまう。
日頃の行いが悪いのか、そんな絶望的な引きの弱さを味わってきた白色黒蛇にとって遊戯王というトレーディングカードゲームの金字塔はかなり性に合ったものであった。
 
 遊戯王はルールが複雑であると有名である。チェーンの組み方やら優先権やら特殊裁定やらが頻繁に飛び出し、それを駆使したコンボを出しても、対戦相手がそれを理解するのに苦労するということも日常茶飯事。そんな複雑過ぎるゲーム性で初心者が手を出し難いと言われるものの、遊戯王ならではの良さ、遊戯王にしかない良さを挙げるとすれば
 
『どんなに運が悪くてもデッキ構築でいくらでもカバーできてしまうこと』
 
であろう。
簡単に説明すると、遊戯王には『起点となる1枚だけで展開できるコンボ』がかなりある。それを軸に考えてデッキを組むとすれば、そのカードを手札に加える、『サーチカード』を、最低40枚のデッキに優先して組み込んでいくことになる。
遊戯王は1デッキに同じカードは最大3枚(無規制のものは)入れられる訳だから、そのカード自身とサーチカード、それを3枚ずつ入れれば3/20の確率で手札に引き入れることが可能になる。無論、サーチカードの数を増やせばこの確率は更に上がることとなる。
 
 遊戯王で、ゲーム開始時の初期手札枚数は5枚だ。仮に40枚で構成されたデッキにキーカード+それをサーチするカードが合わせて10枚入っていたならば、4枚に1枚はキーとなるカードとそのサーチカードが占める。
そうなれば、自然と初期手札でそれらを最低1枚は引いていることが多くなる。
 
そのようにしていれば、どれだけ運が悪くても俗にいう「手札事故」が起こることを減らしていけるという訳だ。
 
 引き運の悪い白色黒蛇からすれば、これほど性に合ったものもない。
 
そんなわけで、白色黒蛇は永い事遊戯王を嗜んでいる。
 
そしてそんな白色黒蛇は、何の因果か2022年2月、国内でもかなり大規模な大会である
『遊戯王チャンピオンシップジャパン2022』通称『YCSJ』への出場権を経てしまった。
 
2月14日、まさに血のバレンタインデーとなってしまった、まだ肌寒い日の話である。
『YCSJ』開催日は、2022年3月27日
 
そこまでの1月、白色黒蛇はフリーランスのクリエイターという生業と並行して、決闘者として、数多の決闘者たちと戦いながら己とデッキを磨き上げる狂気の1月を送ることと相成った。
 
これは、そんな白色黒蛇1月の激闘の日誌である。
 
遊戯王OCGをやっていない皆様方にも、なんとなくニュアンスで楽しめるものになるように……そんな感じで努力して編纂していくので、是非とも最後までご拝読をお願いしたい。
 

 

 ♯2月16日 最弱からのスタート


 
 当時白色黒蛇が使っていたデッキは『閃刀姫』と呼ばれるものだった。
『閃刀姫‐レイ』というモンスターカードを基軸に、1体のモンスターを次々と別のモンスターに変えていきながら、墓地に魔法カードを貯め、長期的にアドバンテージを稼いでいく、通称「ミッドレンジ型」と呼ばれるデッキテーマの代表格であった。
 カードイラストの評価も高く、可愛らしくもサイバーパンクなものがあるキャラクターは決闘者からの人気も高い。
 
 2月16日、仕事終わりに白色黒蛇が出た秋葉原の大会の戦果は何と――
 
全敗であった。
 

 
 ♯2月17日 少しでも火力を
 
 YCSJ出場権を得てすぐの大会でとんだ無様を晒してしまったことでかなり自信を失ってしまった白色黒蛇。しかし、考えてみれば当然の話であった。
 
 遊戯王の大会ルールは主に2つある。
1:3戦やって2戦先取の『マッチ戦』
2:1戦で勝敗を決める『ワンデュエル戦』
秋葉原で出た大会は2のワンデュエル戦であった。基本的なゲームの流れは変わらないためどちらも同じに見えるが、その実かなり戦術が異なってくる。
 
 2つのルールの大きな違いは『サイドデッキ』の有無であろう。
マッチ戦の場合、最大で3戦行うことになるのだが、1戦を終えると次の1戦の間に『サイドチェンジ』と呼ばれる時間が存在する。その間に、メインデッキとは別に用意された最大15枚の『サイドデッキ』と40枚の『メインデッキ』のカードを入れ替えることが可能なのだ。
 既に1戦行った後であるため、相手のデッキのタイプや対策すべきカードをある程度は把握していることが多い。それに合わせて、向こうが苦手だろうカードをメインデッキに加え、逆に相手にはあまり通じないだろうカードを抜く作業を行える。
そうすることで2戦目、3戦目をより優位にすることが出来るのだ。
 
 しかし、シングル戦ではそれがない。生憎と当時白色黒蛇が使っていた『閃刀姫』は攻撃力等の打点が低く、継続してダメージを与えることに重きを置いたテーマだ。完全にマッチ向きであったと言える。無論、構築や相手如何によってはシングル戦でも十分戦えるが、それでも1ターンで一気に勝負をつけてくるような構築のテーマだと凌ぎきれない場面が多くなってしまったのだ。
次月に控えたYCSJは『ワンデュエル戦』このままでは惨敗は必定。
 
 そうなれば、自然と改善点を是正しなければならないと気づかされる。
1:攻撃力が高いテーマ。
2:速攻性のあるテーマ。
思案を重ねながら白色黒蛇は18日の晩、あるテーマと組み合わせることを思いついた。
 
 
 
※当時使用していた閃刀姫デッキ


つづく……


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