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文化の押し付け

「普通」「当たり前」

私は、カナダ発祥のコーヒーショップ Tim Hortons でワーホリしてました。半年くらいでシフトマネージャー、しばらくしてスーパーバイザーにも昇格しました。
英語が堪能でなくても実力を評価してもらえるのがカナダです。

ワーホリ後は、ワークパーミットを出してもらい、永住権を取得するまでの約4年勤めていました。その4年間、新人への指導もたくさんやってきましたが、ほとんどの子たちがチンタラしていて、毎日憤りを感じていました。

手際が悪くどんどんお客さんを待たせてしまいます。
ワーホリできているアジア系の子たちは、語学勉強中にも関わらず、現地の子たちよりもテキパキ動き、どんどん客を回していってました。一人で二人分の仕事をしていると言っても過言ではありません。
私も「お前の中には3人くらい入ってるのか?」とマネージャーに言われたことがあります。


なぜなんでしょう。
細かくは書きませんが、「そんなことまで教えなあかんか?」っていうようなことまで教えないと分からない子たちが多く、また、毎月どんどん新しい子が入っては辞めて行くので、指導に疲れてる連続でした。
日本では、普通とされる仕事内容が全くできないので、当たり前過ぎて、その根本から説明しないといけないのは至難の技でした。

アジア系の子たちは、何も言わなくても、空いた時間が数秒でもあれば、次の行動に貯金を作る動作をします。例えば、お客様がコーヒーを頼み、ショーケースにあるドーナツやベイカリーを選んでる間にコーヒーを作って、袋を開いて後から頼むドーナツやマフィンを入れる準備をします。お会計を済ませる頃には、コーヒーとドーナツがお客様の前に出されるわけです。

しかし、他の人種の子たちは、全部頼み終わるまで、ボケーっとレジの前に立ち、全部注文が終わってからコーヒーを作ったり、コーヒーが全部なくなってから、新しいコーヒーを注ぎ始めたりするので、列はどんどん長くなっていきます。

コーヒー一杯とマフィン1つに5分待たされるなんて、こっちでは当たり前なんです。ラーメンの方が早く出てくるわ!って思います。


自分でも気づいていなかった差別

私はいつも彼らの鈍臭さにイライラしてました。何度教えても不器用で一度に2つのことができません。
「ほんま頭悪いなぁ」ってさえ思っていました。

「こいつら日本やったらどこ行っても通用せーへんわ」って思ったことがありました。そう思った時、私は自分が日本人を過大評価して、他の国の人たちを見下していることに気がつきました。

我々は、良いか悪いか「ただ突っ立って何もしないのがダメ」仕事精神が植え付けられており、何もしていない時間、仕事をしていない時間に後ろめたさを感じていると思います。
遺伝的なものなのか、我々には1度に2つ以上のことができてしまうんです。


そんな文化、習慣で育っていない彼らが、できるはずもなく、できて当然やろ!って当たり前に思っていた自分に気づき、血の気の引く思いでした。

バンクーバーは、いろんな人種が集まっている都市です。
実際に私が働いていたコーヒーショップも、カナダ人以外にも、日本人、韓国人、中国人、タイ人、フィリピン人、インド人、アフリカ人、南米人、と他民族チームでした。

私は、自分が文化の押し付けをしていることに気づいてからは、彼らの特性というか、どうすればもっと機敏に動けるようになるか、周りに気を配れるようになるか一人一人見ていくことにしました。

はじめはなかなか上手くいきませんでしたが、少しずつ周りの動きが良くなり、いうことも聞くようになってくれました。
一人のインド人学生は、私にこう言ってくれました。
「俺は、他のスーパーバイザーの言うことは聞く気はしない。でも、Hiroは別だよ」って、他の学生たちにもHiroの言うことを聞け!と言ってくれてもいたようです。


簡単なことはないですが、こうやって一人一人をちゃんと向き合えば、イライラもしないし、相手の文化も知れるし、同じ日本人であったとしても、一個人として見れるようにもなって、今ではそれが活かせてコーヒーショップを離れた今でも楽しく人間観察と個々と向き合いをしています。

これからも異文化、同文化に関わらず、人一人として個々を見ていこうと思うし、この気持ちと体験を忘れずにいようと思います。


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