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薄楽詩集

40
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#ポエム

【詩】フラワーメッセージ

【詩】フラワーメッセージ

朝顔

昨日落とした
夢の中で落とした
あなたを落とした
たいせつなたいせつなあなただった
だから今朝のあなたはあなたではない
あなたはべつの私と出ていったのだ
部屋にはあなたのワイシャツが捨ててある
わたしはわらって
涙の露であらう
あなたのたいせつなものが
すっかりきれいになって
わたしの朝になる 

椿

貴方は私をゆっくりとおためしになったのね
いいですよ ぽつんと
あなたのおねむりになっ

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【詩】ゆれている夜

【詩】ゆれている夜

ふとゆれて目が覚める
なにがゆれたのか

ベッドがゆれ
窓がゆれ 水がゆれ
家具が 食器が 庭の南天がゆれ
どこかの水仙の葉もゆれている

 ゆれている 
    ゆれている
       ゆれている

きのうは夕日があかかとゆれ
どこかの国の大臣らが
平気で口裏合わせの
ウソをついているのを テレビで見たが

壊れているものが壊れているだけだし

イブには君との関係がゆれ
青白いイルミネーション

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【詩】耳鳴り

【詩】耳鳴り

理髪店の前は雨が降っていたことがない
亡き王女のパバーヌが聞こえてくる二階の窓は
いつも閉じられていて
少年だった僕の耳は
海辺の貝のように
知りもしない
未婚の叔母の過去の波打ち際に取り残されていた

ああそうだ そういえば
忘れていたことが大切であると
叔母はよく言っていた

叔母は時折スフインクスのように
決して解けないなぞなぞを出し
僕はいつもインチキの答えをでっち上げた
叔母はその度に淋

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