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【詩】ゆれている夜

ゆれている夜


ふとゆれて目が覚める
なにがゆれたのか

ベッドがゆれ
窓がゆれ 水がゆれ
家具が 食器が 庭の南天がゆれ
どこかの水仙の葉もゆれている

 ゆれている 
    ゆれている
       ゆれている

きのうは夕日があかかとゆれ
どこかの国の大臣らが
平気で口裏合わせの
ウソをついているのを テレビで見たが

壊れているものが壊れているだけだし

イブには君との関係がゆれ
青白いイルミネーションのなみだが
おちて割れもした

が それもちがうだろう

とおくでは
黄昏れた公園のブランコの初恋がゆれ
桟橋でカモメに石を投げつけた十五の冬がゆれ
汚れちまった悲しみが 青白く ゆれている

あのときからぼくのどこかがゆれているんだが

街の広告看板がただの落書きに見え
君と出会った階段教室で学んだことが
私を忘れないでと言い残し
どこかの夜の断崖から
身を投げて
どこかで糸が切れて蓑虫がひとふたつおちる

ああ 震源はどこ 

ああ あのさざ波

ゆれるイヤリング
ゆれる幸福の為替
夜の薔薇のそばで
太陽が冷たく微笑む
ああぼくの 波紋
君が泣いたふりをして
ぼくが笑ったふりをして
君のちぶさがゆれて
君の哀しみが滴り
あれからずっと
余震がつづいている
あれから
あれから
・・・

 岩田県立高田高校から♡スキをいただきました。最初なぜだろうと思いました。上記サイトを訪問しました。気仙沼の高校でした。「#地震」とタグを付けていたので読んでくださったのだと思います。
 12年前のあのとき、被災地からとおく離れていましたが、自分の中の何かが大きく変わったような気がしました。詩の中にある「あれから」は実のところはっきりとはわかりません。でも、ひょっとすると、2011年3月11日なのかもしれません。そんなことを思わせていただきました。ありがとうございます。


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