薄楽俊

退屈にそこはかとなき愉しみをかんじるようになってきた半世捨て人です。 つれづれなるまま…

薄楽俊

退屈にそこはかとなき愉しみをかんじるようになってきた半世捨て人です。 つれづれなるままに日々感じたり、思ったりしたことを文芸にしていきたいと思っています。 性格上、ジャンルも内容も適当、支離滅裂になりますが、おつきあいください。

マガジン

  • 薄楽句集

    俳句をまとめています。

  • 薄楽詩集

    詩をまとめています。

  • 薄楽歌集

    短歌を中心にまとめていきます。

  • 解読「山月記」

    中島敦の「山月記」の読み解いた記事を置いています。

  • 薄楽カフェ

    ぼくのいいなあと思った記事や作品を集めています。

記事一覧

【俳句】城への径

少年の動かぬ浮きや蝉時雨 文庫五冊で折り返す夏休み 炎天の路地で飲み干すペプシ缶 サングラス赤いリボンと社会主義 角多き城への径や夏の雨 #俳句   #自由律俳句

薄楽俊
13日前
55

【俳句】女梅雨 5句

角皿に骨美しき五月かな 水中花無邪気にひとを慕う頃 帰りし後の路地を濡らすや女梅雨 ひまわりやマストロヤンニソフィアンローレン ミキサーの砕く果実や夏の果 #俳

薄楽俊
2週間前
60

【詩】昭和エレジー

   昭和エレジー 少しづつ距離ができる 希望が生まれるたびに そして何かをねがう度に そんなとき おれはよく千樫(ちかし)の歌を口ずさんだ うつし世の はかなし…

薄楽俊
3週間前
70

【詩】雑感、あるいは怒り

正直に言おう くだらない世の中になった どこかの頭の変な大統領候補が頭の変な若者に銃撃されて耳から血がながれたが、その新聞記事の斜め下にイスラエル軍のガザ地区の空…

薄楽俊
4週間前
57

【俳句】鯨の脳の如く 5句

 おとぎ話に戻るアリスや花石榴  夏座敷鯨の脳の如く静まれり  黄泉比良坂の夢にゐて蝉時雨  夏旅やおいら左翼となりにけり  雲の峰浮きの漂うその先に #俳句  …

薄楽俊
1か月前
48

【短歌】アリスの舌は美しく

軍艦を見に海の日初デートアイスクリームアリスの舌は美しく 語り合うほどのこもなし白く弾けているだけのライムミントソーダ 何を悲しむことがあるだろうレモンイエロー…

薄楽俊
1か月前
52

【詩】記憶の固執

打ち上げられた時計が 溶けかけのカマンベールチーズのように 記憶のベンチにもたれている  なぜかそれは東北の残雪のように哀しげであり なぜかそれは踏み潰されそこなっ…

薄楽俊
1か月前
96

【詩】鳥のうた

ロシア産の天然ガスでお湯をわかし ウクライナ産の小麦でできたパンを食べ 中国製のスカートをはいて アラブ産原油のガソリンで通勤したわ と おまえが不意に言うからいけ…

薄楽俊
1か月前
71

【俳句】字余りの夏 5句

白球に割れ散る空や夏は来ぬ 夕立や中島敦を読んでいる ビールてふ苦きものあり反抗期 思いのみ雲のごとく湧き字余りの夏 蜜豆やちょっぴり好きだったかも君のこと #…

薄楽俊
2か月前
63

【俳句】夏の花 5句

中年を紫陽花坂と名付けたり 文来たる逢瀬の帯は夏あざみ 葛餅は鯨の脳のごとく蒼やぎて 置き去りは前世からなのと白日傘 口触るるそれから花はたちばなに #俳句   #…

薄楽俊
2か月前
65

詩論として読む「狐憑」(中島敦)

1.『山月記』と「狐憑』 中島敦の『狐憑』は次のように結ばれている。 『狐憑』と『山月記』が執筆されたのは、ほぼ同時期で、昭和11年から16年の間であるとされ…

薄楽俊
2か月前
47

「山月記」を読む③ 詩論として読む「山月記」

なんとも残酷な一文である。「産を破り心を狂わせてまで」執着したものが、一番の理解者である袁傪に否定されているのだから。もちろん、袁傪はそれを李徴に告げてはいない…

薄楽俊
2か月前
55

【短歌】スナップショット・もーすぐ夏ですね 5首

母さん、どうしたでせうね?僕のあの SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND 簡単にいくことではないと思っていました写真を送ります去年の紫陽花です しばらく逢ってい…

薄楽俊
2か月前
55

【詩】春の道化師

 春の道化師 知らないことを知っているといい 知っていることを知らないという 春の嘘は だから あけぼののパン屋のようないい匂いがする その匂いにつられて 自由を分…

薄楽俊
3か月前
67

【詩】引き潮

   引き潮 過去という現在が今日も ぼくの日暮れ待ちの海岸に たくさんの漂流物を打ち上げる 墜落した魔女の叔母さんの形見の箒とか 三角帽子のピエロの叔父さんが忘…

薄楽俊
3か月前
54

【詩】五月のノスタルジー

五月のノスタルジー   あやめかる安積の沼に風ふけば        をちの旅人 袖薫るなり    源俊頼 風が万物を薫らせ 蒼い静脈の這う近所の少女の乳房が膨らみ…

薄楽俊
3か月前
52

【俳句】城への径

少年の動かぬ浮きや蝉時雨 文庫五冊で折り返す夏休み 炎天の路地で飲み干すペプシ缶 サングラス赤いリボンと社会主義 角多き城への径や夏の雨 #俳句   #自由律俳句  #現代俳句   #夏 #城 #蝉時雨 #釣り #読書 #夏休み #季語 #ペプシコーラ #サングラス 

【俳句】女梅雨 5句

角皿に骨美しき五月かな 水中花無邪気にひとを慕う頃 帰りし後の路地を濡らすや女梅雨 ひまわりやマストロヤンニソフィアンローレン ミキサーの砕く果実や夏の果 #俳句   #自由律俳句 #現代俳句   #夏 #ひまわり #季語 #女梅雨 #梅雨 #水中花 #映画 #夏の果 #ゆく夏 #食器

【詩】昭和エレジー

   昭和エレジー 少しづつ距離ができる 希望が生まれるたびに そして何かをねがう度に そんなとき おれはよく千樫(ちかし)の歌を口ずさんだ うつし世の はかなしごとに ほれぼれと    遊びしことも 過ぎにけらしも と とるに足らない戯れの 過ぎてゆくほどに たまらなく愛おしくなるのは なぜか おれたちの言葉は幾多の未来を紡ぎ まるで国産みのようねとおまえは微笑んだ おれは初夏に横たわる丘陵のような おまえのなだらかな腹を川風のように撫でた 夢はささやか

【詩】雑感、あるいは怒り

正直に言おう くだらない世の中になった どこかの頭の変な大統領候補が頭の変な若者に銃撃されて耳から血がながれたが、その新聞記事の斜め下にイスラエル軍のガザ地区の空爆で少なくとも71名が殺され、289名が負傷させられたという記事が載る。その3分の1の大きさで。 正直に言おう あってはならない世の中になったと。 そのイスラエルの頭のおかしい首相はアメリカの議会で堂々と大勢の子どもを含む39000人以上のパレスチナの民を殺戮した正当性を主張し、耳を負傷した大統領候補の野蛮行為を業

【俳句】鯨の脳の如く 5句

 おとぎ話に戻るアリスや花石榴  夏座敷鯨の脳の如く静まれり  黄泉比良坂の夢にゐて蝉時雨  夏旅やおいら左翼となりにけり  雲の峰浮きの漂うその先に #俳句   #自由律俳句 #現代俳句   #夏 #花石榴 #季語 #夏座敷 #蝉時雨 #雲の峰 #旅 #ルイス・キャロル   #ふしぎの国のアリス

【短歌】アリスの舌は美しく

軍艦を見に海の日初デートアイスクリームアリスの舌は美しく 語り合うほどのこもなし白く弾けているだけのライムミントソーダ 何を悲しむことがあるだろうレモンイエローのTシャツに海からの光 神様っているの?と君。いるもんかとぼく。アルジェの夏でもあるまいし。 可憐かどうかは分からないけど胸のふくらみは胡桃ほどにて桟橋の残照 #短歌 #現代短歌 #今日の短歌 #短歌連作 #自由律俳句   #カミユ #異邦人 #海の日 #ルイス・キャロル  #ふしぎの国のアリス

固定された記事

【詩】記憶の固執

打ち上げられた時計が 溶けかけのカマンベールチーズのように 記憶のベンチにもたれている  なぜかそれは東北の残雪のように哀しげであり なぜかそれは踏み潰されそこなった桜貝のようにさみしげでもあったが そういえば 昨日の朝刊をみていたら おれのいたいけな苦悩が 遠い山の向こうから  法にはいつも何かが欠けていると嗤う声がした 嗤い声はなぜか蝉の鳴き声のようで なぜか あらわれわたるせぜのあじろぎときこえてくるんだった ふりかえると 真夜中のシーツには 鏡に映ったおまえの断片

【詩】鳥のうた

ロシア産の天然ガスでお湯をわかし ウクライナ産の小麦でできたパンを食べ 中国製のスカートをはいて アラブ産原油のガソリンで通勤したわ と おまえが不意に言うからいけなかった だから おれは そしてわれわれはアメリカ産の兵器で武装しているなどと口ばしったのだ なにか片道切符で旅をしているようだわと 夕靄の帰り道でお前は言った 川藪のむこうではコンビナートを解体する数機のクレーンが動いている 方角だけははっきりしてるよ とおれが言うと 「西ね」と おまえは即答だった た

【俳句】字余りの夏 5句

白球に割れ散る空や夏は来ぬ 夕立や中島敦を読んでいる ビールてふ苦きものあり反抗期 思いのみ雲のごとく湧き字余りの夏 蜜豆やちょっぴり好きだったかも君のこと #俳句   #自由律俳句  #現代俳句   #夏 #蜜豆   #野球 #夕立 #季語 #俳句連作 #中島敦 #ビール #字余り #恋

【俳句】夏の花 5句

中年を紫陽花坂と名付けたり 文来たる逢瀬の帯は夏あざみ 葛餅は鯨の脳のごとく蒼やぎて 置き去りは前世からなのと白日傘 口触るるそれから花はたちばなに #俳句  #自由律俳句  #現代俳句  #夏  #夏の花  #花 #日傘 #季語 #俳句連作 #紫陽花 #あざみ #橘の花

詩論として読む「狐憑」(中島敦)

1.『山月記』と「狐憑』 中島敦の『狐憑』は次のように結ばれている。 『狐憑』と『山月記』が執筆されたのは、ほぼ同時期で、昭和11年から16年の間であるとされる。だからであろうか、両作品には中島敦の共通の問題意識があるように思える。 『山月記』の李徴は「詩人」になれなかったがゆえに、自分の「性情」に喰われて「虎」になってしまった。一方、『狐憑』の主人公シャクは「詩人」になったがゆえに彼の属する部族の民に「肉」として「喰われ」てしまうのである。「詩」とは何か。その問いか

「山月記」を読む③ 詩論として読む「山月記」

なんとも残酷な一文である。「産を破り心を狂わせてまで」執着したものが、一番の理解者である袁傪に否定されているのだから。もちろん、袁傪はそれを李徴に告げてはいない。しかし、読者は李徴がいかに努力しようと詩人になれなかったことを知らされるのである。知らなかったのは李徴だけで、それが彼をなおさら哀れな存在にする。それにしても、よく分からないのが「非常に微妙な点」の中身である。いくら読んでも本文には出てこない。それが分かれば李徴が詩人になれなかった理由もはっきりするのに。高校時代に「

【短歌】スナップショット・もーすぐ夏ですね 5首

母さん、どうしたでせうね?僕のあの SGT. PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND 簡単にいくことではないと思っていました写真を送ります去年の紫陽花です しばらく逢っていない君みたいだね珈琲横のガリガリかじれる角砂糖 はなやかな月夜に猫ありてぉわあぁぅあぁあぁぉてらしましのぶです もーすぐ夏ですねだいじょうぶですよ一度ですみますからとナースの蘭ちゃん #短歌 #現代短歌 #今日の短歌 #短歌連作 #自由律俳句  #西條八十 #人間の証明 

【詩】春の道化師

 春の道化師 知らないことを知っているといい 知っていることを知らないという 春の嘘は だから あけぼののパン屋のようないい匂いがする その匂いにつられて 自由を分からないひとりの人類は 幾千万以上ものものとなってかり出され  英霊という廃棄物となる だから 美しい嘘が産道のような地下水道を通り 今日も広場で噴きあげている そうやって真実という嘘が嘘という真実になると もうピエロは耐えられない なみだで化粧を落とし  秘密の港から命がけで脱出する 月は青い血を滴らせ

【詩】引き潮

   引き潮 過去という現在が今日も ぼくの日暮れ待ちの海岸に たくさんの漂流物を打ち上げる 墜落した魔女の叔母さんの形見の箒とか 三角帽子のピエロの叔父さんが忘れていったブリキの太鼓とか 少数民族の裸を撮りまくった元脱走兵の報道記者愛用のニコンのレンズとか テロリストになったシスターが羊小屋に棄てていった真鍮の貞操帯とか 何にもおわっちゃいないのにぼくをポストモダン化しようとした 真っ赤な嘘の麻疹のような思想入門書とか 国家カルトによって無理矢理自由自在になった恋人の

【詩】五月のノスタルジー

五月のノスタルジー   あやめかる安積の沼に風ふけば        をちの旅人 袖薫るなり    源俊頼 風が万物を薫らせ 蒼い静脈の這う近所の少女の乳房が膨らみ 出戻りの姉の白い太腿はむき出しで縁側に投げ出され 売春宿のぼくの恋人のお腹の産毛が陽炎のようにゆれる そんな五月の白昼に不如帰が鳴き出すと 工事現場では必ず神隠しが起こり 少女の腋臭のような沼の匂いが山から下りてきて 夕暮の雨は予想通りに姉の下着を濡らし 恋人の記憶が川辺に引き上げられた投網の中で鮎のように躍ね