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【詩】鳥のうた

鳥のうた

ロシア産の天然ガスでお湯をわかし
ウクライナ産の小麦でできたパンを食べ
中国製のスカートをはいて
アラブ産原油のガソリンで通勤したわ と
おまえが不意に言うからいけなかった だから おれは
そしてわれわれはアメリカ産の兵器で武装しているなどと口ばしったのだ

なにか片道切符で旅をしているようだわと
夕靄の帰り道でお前は言った
川藪のむこうではコンビナートを解体する数機のクレーンが動いている
方角だけははっきりしてるよ とおれが言うと
「西ね」と おまえは即答だった

たしかに あのとき空は
西に向かって衰退していて 
紅いカクテルのような夕焼けが山の向こうまでひろがり
おれたちもいっしょに暮れなずんでいたっけ
あれから何年になるか・・・

 そういえば たしかあのときだった・・・

おれはね 鳥籠からだしても翔び立たないひよどりを見たことがある
あんたがあのときあたしの右の肩甲骨を掻いてくれたからね
おまえは暮れ消える景色のなかで恍惚と目を閉じた
あんたが痒いところに手が届くひとだったってことよ

#詩 #現代詩 #自由詩 #詩のようなもの #鳥の歌
#カザルス


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