白央篤司

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白央篤司

フードライター、コラムニスト。連絡先→ hakuoatushi416@gmail.com 【新刊情報】しらいのりこさんとの共著『のっけて食べる』が2024年9月に文藝春秋より出ます。

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  • お熱いのはお好き?

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    フードライター・白央篤司と、バーテンダーで料理家・藤村公洋の交換コラム。週に1本更新(の予定)。

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新刊『名前のない鍋、きょうの鍋』10月25日発売

今月の25日、新刊が光文社より発売になります。 朝日新聞ウィズニュースで連載中の『名前のない鍋、きょうの鍋』より18編を単行本化、すべてを大幅に加筆し、一部は再取材してまとめました。鍋に関するコラムも4本書きおろして入れてあります。 現在、予約受付中で、ささやかではありますが予約特典もご用意しました。下に特典内容と応募方法を書きますね。 光文社さんのnoteで「はじめに」が公開中。なぜこの本を書いたか、どんな本かについて。ぜひ、お読みくださいませ。 私が考えた鍋レシピ

    • 夏よそろそろ去らないか

      先日、涼しい日が二日ぐらい続いて、「ああ、秋がそろそろだ。夏の終わりと初秋が混じり合う季節は一番いい時季だな……」なんてしみじみし、「今シーズンで食べるのも最後だろう」と冷麺を作った。 ゆで鶏に温泉玉子、生野菜と水キムチ、かぼすの薄切りも添えてさっぱりといただき、「夏よ、さようなら」なんて気持ちが高まったところで思いっきり夏戻りである。会う人、会う人「朝晩はいくらか涼しいですねえ」と話を始める。そう、みんな昼がつらいのだ。昨日は最高がうちのほうで35度だった。 広尾で仕事

      • こないだのつまみ #22 『善知鳥』のおでん

        東京・西荻窪で用事を済ませ、ちょうど夕方ごろ。 『善知鳥(うとう)』で一杯やってきました。燗酒とおでんと珍味の飲み屋さん、好きなお店なんです。 虫の声がBGMで流れてて、静かな雰囲気。 「きょうはお通し作ってないんで、こちらを」とご店主。 つみれやさつま揚げ、おいしかったな。クリアなおでんつゆが実にうまい。 久しぶりに『喜久酔』を頼みました、静岡のお酒です。 穏やかだけどやさしいインパクトがある、いいお酒。ご主人がじっくりと燗につけてくれる、上がりを待つ時間がうれしいん

        • 思い出のハワイ、スナップメモ

          白央篤司49歳、人生初ハワイ。 6月下旬に行ってきて、時間がどんどん経ってしまう。 あれこれ忘れないうちに、スナップメモです。時系列はばらばら。 青空が濃いなあ、というのがハワイの第一印象でした。 オアフ島のダニエル・K・イノウエ空港に朝方着いて、光がまぶしかった。海外に来るのは5年ぶり。 ワイキキビーチが目の前の「ロイヤル・ハワイアン」というクラシックな人気ホテル。ここに泊まったわけじゃないんですが、たたずまいがなんとも素敵でしたよ。1927年創業とのこと。 いやー、

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          うちのミートソースのレシピ

          うちのミートソースのレシピを『クロワッサン』のサイトで紹介していただきました。ちょっと分かりにくい&面倒かもですが(笑)、よかったらお試しください。ふたつめの干し椎茸入りの、個人的に推し。軽めの赤ワインとどうぞ。 https://croissant-online.jp/life/214480/

          うちのミートソースのレシピ

          こないだのつまみ #21 牡蠣と菜の花の酒蒸し和え

          牡蠣と菜の花は、なかなかの相性良しだ。 両方とも「エッジのきいた香味」があるなと思う。濃いうま味の牡蠣とほろ苦さや辛みのある菜の花、合わせてみると受け止めあって、いい酒の肴になる。冬のものと春のものを掛け合わせるの、一般的にはあまりやらないけどなかなかオツなもんです。 菜の花は食べやすい大きさに切ってゆでるか、ちょっとぬらしてレンチンしておき、水分を切っておく。 牡蠣はざるに入れて塩をふり、全体を混ぜ合わせたら流水でひだの中まできちんとよく洗う。それで水気を切って、両面を

          こないだのつまみ #21 牡蠣と菜の花の酒蒸し和え

          こないだのつまみ #20 ソムタムのピーナッツ

          2月と3月の間ぐらいになると、なぜか私は毎年タイ料理がどうにも食べたくなる。「啓蟄」なんて言葉があるが、私の中の何かの虫が「タイ料理が食べたい!」とわめきながら土ごもりから目覚めてくるような感じ。 今年も2月の終わり頃、タイ料理を欲してムズムズしてきたので、近所でテイクアウトしてきた. 春雨の和えもの「ヤムウンセン」、すっかり日本でも人気になった焼きそばの「パッタイ」、そして青パパイヤの和えもの「ソムタム」の3種をチョイス。ちなみに近所のお店はタイ人のご夫婦がやられていて、

          こないだのつまみ #20 ソムタムのピーナッツ

          こないだのつまみ #18 手作りさつま揚げ

          居酒屋に入って、品書きに「手作り さつま揚げ」の文字があると軽く興奮する。うれしい。そして頼んでしまう。さつま揚げを手作りするのは面倒くさいものだ。おいしく作ろうと思ったらなおさら。 魚をさばいてすり身にして、具やら混ぜて、揚げて……という手間をかけてるお店は応援したくなる。もちろん、刺身用に取った魚が客の不入りで出せず、鮮度的に刺身はいまいち……となってすり身になることもあるだろう。でもだからって悪いものを使ってるわけじゃない。 (いや、鮮度最高のをさつま揚げにしてる店も

          こないだのつまみ #18 手作りさつま揚げ

          こないだのつまみ #19 春のアテ盛り合わせ

          「こないだのつまみ」シリーズで、「あると頼んでしまうもの」として手作りさつま揚げと卯の花を挙げた。で、写真フォルダを見返していたらおいしそうなさつま揚げの写真を発見。渋谷・百軒店(ひゃっけんだな)にある『なぎ』さんのだった。 立ち飲み店で、福島県の日本酒専門店。ここのつまみがね、うまいんだよ。気がきいてるの。「日本酒の飲み助、こういうの好きだろうよ」というの先回りして全部揃えてくれてる感じなんだ。 去年だったかな、早春に訪ねたら「うど・ほたるいか・新わかめ」を酢味噌和えで

          こないだのつまみ #19 春のアテ盛り合わせ

          こないだのつまみ #17 サメハツ

          「ハクオーさんは髪が伸びるの、早いねえ……」 美容師のTさんがしみじみ言う。Tさんにお願いするようになって1年ちょっとだが、どうやらずっと思っていたようだ。 やっぱりなあ。 私は髪も爪も伸びるのが早い(らしい)。自分でも「こないだ切ったばかりじゃん」とか言いながら、毎月2~3回は爪を切っている。ああ……なんというのか、生命エネルギーを無駄遣いしてるように思えてならない。若い頃は気にならなかったけど、40代も後半になると「そんなことにエネルギー使わないでよ」なんて気持ちになっ

          こないだのつまみ #17 サメハツ

          こないだのつまみ #16 ベーコンエッグ

          困ったときはベーコンエッグである。 飲み屋に入って「さて何を頼もうか」と思ったとき、ベーコンエッグの文字が目に入ると私は瞬間的に頼んでしまう。パンチのある前菜的にも、メインディッシュ的にもなるつまみ、それがベーコンエッグだ。 神戸の『皆様食堂』なる店のベーコンエッグは素晴らしかった。ここの店のはなんというのか……華のあるベーコンエッグで、出てきた瞬間「うわあ」と思わせる晴れやかさとボリューム感がある。カリカリ感はなく、ふっくらと全体を仕上げる系。作る人が「こんなもの」とか一

          こないだのつまみ #16 ベーコンエッグ

          こないだのつまみ #15 かますの焼いたの

          ちょっと前のこと。 西荻窪で仕事を終えたのが夕方、暗くなるちょい前。どっかで一杯やっていきたいなとウロウロして、素敵な店構えにひかれたのが『酒蔵千鳥』だった。 縄のれん、ってのがいい。『逢いたかったぜ』なんて古い歌謡曲が脳内に流れ出す。テンション上がりつつくぐってみれば、ちょうど1席だけ空いていた。コの字カウンターに座る誰しもが、なんだかうれしそうな表情だった。別にニコニコしてるわけじゃないんだが、このカウンターで酒と肴を楽しむひとり時間を貴重なものとしていつくしんでいるよ

          こないだのつまみ #15 かますの焼いたの

          こないだのつまみ #14 ちぢみほうれん草のソテー

          実は、ほうれん草があまり得意じゃない。 独特のえぐみと、噛んだときにちょっと歯に残る感じが苦手なのだ。なので『きのう何食べた?』でシロさんが常夜鍋をやるとき、あらかじめほうれん草を下ゆでしてから鍋の具にするのを見て「なるほど~」と膝を打った。 だが、ちぢみほうれん草はえぐみが少なく食べやすいので、よく手に取る。味が濃くて、サクッとした食感もいい。むしろ好物であり冬場のたのしみだ。 買ってきたらしばらく水に浸けてから、よく洗って土を落とす。まとめてゆでて、しぼらず容器で保存

          こないだのつまみ #14 ちぢみほうれん草のソテー

          こないだのつまみ #13 ししゃもの焼いたの

          40代後半に入ってから、最高の酒の肴は焼き魚と思うようになった。とにかく酒を呼ぶというか、調理してるときに立つ香りが「一杯やりたくなる」気持ちをグイグイと誘う。その誘引力がいい。 魚を焼くのは手がかかるし、値段も高めというネックはあるが、その点ししゃもはありがたい。いや、ししゃもではなく、正確に書くとカラフトししゃもですな。手頃に買えて、スーパーによくあるのはカラフトのほう。こちらもじゅうぶんおいしいと私は思う。 フッ素加工のフライパンで両面焼くだけ、味つけも要らない。食

          こないだのつまみ #13 ししゃもの焼いたの

          『錠剤F』を読んで

          井上荒野さんの新刊『錠剤F』(集英社)を読む。 帯に「グロテスク」「孤独」とあるけど、私がそう感じたのは一編だけで、他は「これもまた人生の一断片」というか、日頃誰しも感じては忘れたり流したりしている「些細な憎悪」や「身近にある怨念」のようなものが、荒野工房によってカットされ研磨されて、短編小説という名の指輪やピアスになった……みたいな感想を持った。 孤独だろうか、「彼ら」は? 人間の負の感情や激情、劣情ってみっともなくて厄介で、自分の中に渦巻いていることは大っぴらにしたくな

          『錠剤F』を読んで

          こないだのつまみ #12 卯の花

          「居酒屋にあるとつい頼んでしまうもの」 そんなつまみ、ないだろうか。 私は卯の花、つまりはおからが品書きにあるとほぼ毎回頼んでしまう。なんで好きなのか、自分でもよく分からない。豆腐を作るときに出る、大豆のしぼりかすで作られる卯の花。「これぞ酒のつまみ!」というようなコクや塩気、珍味感に富むようなものではない。そうなんだけれども、私は卯の花で飲むのが好きなのだ。 ある夏の日、神戸を旅した。 関西の友人がすすめてくれた灘区水道筋エリアの居酒屋へ向かう。『高田屋』と染め抜かれた

          こないだのつまみ #12 卯の花