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「伝える」と「伝わる」

日本語学校:昨日の中級クラスの読解授業でのことだ。
 授業時間も終わりに近づいてきたころ、文中にでてきた「伝わる」と「伝える」の違いを説明した。
 読解の題材は「昔憧れていた作家の作品だったが、大人になって読まなくなって」しまった。が、その作家の記念館で、「本人が書いた手書きの文字を見て、作家の気持ち、例えば作家が大切な妹を亡くした時、どんなに辛かったか、何を感じたか・・・など“手書きの文字の持つ力”を改めて感じた」というような内容だった。  
 一通り読解問題としての授業を終えた後のことだ。
 その読解文章の最後に出てくる「(手書きの文字で)伝わる」という言葉の説明をした。
 もう授業の終わり際で、普通ならみな学生たちは終業の準備で教科書をかばんにしまったりしてそわそわする頃だった。が、その時は違った。
「例えば、私がみなさんに、一生懸命“伝え”ても、皆さんが“理解”しなければ、“伝わる”とは言えないんです。みなさんが“理解”して、はじめて“伝わる”と言えるんです。」
クラスの学生ほぼ全員が私の方に注目をして「理解しなければ伝わるとは言わない」というところでクラス全体が一瞬「し~ん」となったのだ。
中には、うんうんと首をたてに振ったりして「わかる、わかる」というかのように目を輝かせて聞いてくれる学生もいた。
「ああ、これが“相手が理解して伝わった”と言うことなんだ!」と私自身が驚いた。
 外国人に日本語を教える…とても難しく、やりがいのある仕事だと思うが、こんな瞬間があるから「日本語教師をやってて良かった!!」と思うんだろうな・・・。


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