浅野達也/株式会社箔一 代表取締役社長

伝統産業の経営者です。石川県金沢の地で450年もの歴史がある金沢箔を手掛けています。か…

浅野達也/株式会社箔一 代表取締役社長

伝統産業の経営者です。石川県金沢の地で450年もの歴史がある金沢箔を手掛けています。かつて金箔は工芸品の材料の一つでしかありませんでしたが、これを「金沢箔工芸品」としてブランド化しました。それ以来、食器、インテリア、建築資材、食材、化粧品などに金沢箔の用途を拡大してきました。

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伝統の金沢箔を未来へつなぐために

金沢の伝統産業を受け継ぐ経営者として株式会社箔一の代表取締役浅野達也です。伝統産業を手掛ける企業の経営者として、日々感じることや、学んでいることをこのnoteを通じて発信をしていきたいと思います。日本の伝統文化をつないでいくために、多くの方と力を合わせていきたいと願っています。 人々に愛されて受け継がれる伝統でありたい私は、日本のものづくりの素晴らしさに誇りを持っています。 美しい自然と四季に恵まれ、人々の繊細な感性や生真面目な気質が、各地で素晴らしい工芸品を生みだしてきま

    • 今あるものに注目し、プラス思考でありたい

      私はいつも、プラス思考でありたいと考えています。 良くある例え話ですが、コップに半分水があるのを見て 「もう半分しかない」と思うか、「まだ半分ある」と思うかで、人の思考は変わってきます。 これは既に失われてしまったものに注目するのか、 それとも、今あるものに注目するのかの違いと言えます。 足りないことばかりを嘆いても、前向きな行動は生まれないでしょう。 人が足りない、時間が足りない、設備が足りない。 仕事を進めていくと、現実的に足りないものはいくらでもあります。 しかし

      • 学ぶことは、すべての人に平等

        よく言われることですが、人間はインプットした以上のことをアウトプットすることはできません。そういう意味で、良い仕事、良い成果を出したいと思えば、常にインプットの量を増やしていくことが必要でしょう。 この世の中で、自らの力で自分を高めようとせずに、成功した人はいません。逆に勉強することが習慣づいている人は、環境に左右されず成長していくことができます。 ある商社の人と話していると、 先日まで小麦を扱っていた人が、異動で突然原油を扱うようになることもあるそうです。取扱商品だけで

        • 出し惜しみをしない

          私は、自分自身にも社員にも出し惜しみをしない、ということを求めています。どんな場合であっても、100%やり切ったのであれば、結果に関わらず納得ができるものだと思うからです。 日々、会社を見ていると、まだまだやれるのではないかと思うこともあります。場合によっては、30%~50%くらい、もっと力を持っているのではないかと感じることもあります。 私たちは、自分たちだけで仕事をしているわけではありません。とりわけ大切なのはお客様です。お客様には失礼があってはいけませんから、だれし

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        伝統の金沢箔を未来へつなぐために

          会社の魅力づくりは、理念について考え続けることから

          今年の4月には箔一にも、6名もの優秀な新卒が入ってきました。 縁あってともに仕事ができることをとても嬉しく感じますし、大切な仲間として一緒に汗をかいていきたいと思います。なにより、若い人たちに箔一を選んでいただいたことに、本当に感謝しています。 最近、経営者同士で話をしていると、「新卒が取れない」という嘆きをしばしば耳にします。特に地方の中小企業にとっては、新卒社員の確保は頭の痛い問題となっています。 学生たちに選んでもらうには、まず職場が魅力的でなければなりません。 そ

          会社の魅力づくりは、理念について考え続けることから

          心を豊かにするものが、ブランドになる

          「ほしいものが無い」。 特に、若い世代と話をしていると、そういった言葉を聞くことがあります。 ちょっと上の世代だと、高級時計や高級バッグにあこがれて仕事に励んできたという人もいるでしょう。ですが、そうした価値観も少なくなっているように思います。 世の中が成熟してくると、欲しいものが少なくなり、いらないものが増えていきます。そうした中で、欲しいと思ってもらえる商品を作り続けることは簡単ではありません。 私たちが提供するのは、金沢箔を使った工芸品です。これは、生活に必要なも

          心を豊かにするものが、ブランドになる

          入社式にて思う「今時の若者は」という言葉の意味。

          4月1日、新しく6名新卒社員を迎え入社式を執り行いました。 それぞれ個性に溢れる方ばかりです。よく若い世代に対して「今時の若者は・・・」とネガティブに捉えて言われることがあります。 しかし箔一では「今時の若者」に、私達では思い付かない面白い発想力や行動力を期待しています。経験が無いから使われるであろう「若いから」という言葉は、私は前向きな言葉と捉え、箔一に新しい風を巻き起こしてくれることを期待しているのです。 私からこの6名に、何にでも興味を持ち、常に明るくあってほしい

          入社式にて思う「今時の若者は」という言葉の意味。

          石川県が元気であるために

          能登半島の震災から、少し時間が経ちました。 しかしながら、いまも大勢の方が避難所にいらっしゃり、生活インフラが回復しないエリアもまだまだあります。復旧や復興は、長期戦になるでしょう。根気強い支援が必要だと感じています。 金沢市内の事業者の多くは、大きな被害を免れました。 しかし1月1日の大きな揺れの恐怖を体感した我々は、同じ石川県の仲間として、能登の被害についてもわが身のように感じています。金沢の事業者は、だれもが震災の当事者ですから、これから長い時間がかる能登の復興への責

          パートさんとの会話の大切さ

          当社は全従業員250名のうち、170名もの方がパートさんです。 私は、この方たちと日常的に会話をするようにしています。現場から率直な意見もいただくこともあり、様々な情報を聞かせてもらうことができるからです。 ときおり、新しく入社された方に驚かれることがあります。 当社の前に勤めていた会社では、経営トップが話しかけてくることなどなかったというのです。そういう話を聞くと、逆に意外に感じます。一人ひとりのスタッフと話をせずに経営をするのは、むしろ難しいのではないかと思います。

          良い会社を目指す、ということ

          箔一の創業者である私の母は、ことあるごとに「大きな会社ではなく、良い会社を作りたい」と言っていました。私たちはこの想いを引き継ぎ、大切に守っています。 しかしながら「良い会社」を目標とするには、まず良い会社の定義がなければなりません。 大きな会社であれば、ある程度の客観的な基準があるでしょう。売上、従業員数、店舗数などを目標設定することもできます。しかし、良い会社といった場合、その定義はそれぞれの価値観にゆだねられてしまいます。 私の考える良い会社の定義とは、 良い商品

          対話を通じたものづくりを

          私たちは、ものづくりの企業です。 事業を営む中で実感してきたことは、ものづくりとは、生産設備を整えて、みなで手を動かせばできるものではないということです。 なによりも大切なことは、対話をすることです。 箔一では、直営店を運営しています。 その大きな動機は、お客様の声を聞きたいということでした。私たちが良いと思ったものであっても、それをお客様に良いと思っていただけるとは限りません。逆に、私たちが気づいていない、お客様の要望というものもあります。 だから、私たちはお客様と話が

          箔一創業者浅野邦子の思い出。前石川県知事谷本正憲様

          石川県知事を7期28年にわたって務められ、地域の発展に多大な貢献をされてきた谷本正憲様(※1)。当社創業者の故浅野邦子とも親しく、様々な機会をとらえて広く情報交換を重ねていました。谷本様から見た浅野邦子の思い出を語っていただきました。 ともに関西出身ということもあって、同志だと感じていました 谷本正憲 前石川県知事、石川県公立大学法人理事長(以下、谷本) 浅野邦子さんとお会いしたのは、私が石川県知事に初当選(※2)したころでした。様々な団体に挨拶にまわっている際にお話しす

          箔一創業者浅野邦子の思い出。前石川県知事谷本正憲様

          お客様のご要望にこそ、ヒントがある

          箔一は、自宅を兼ねた小さな工房からスタートしました。 やがて販路が広がって工場を建設し、本社ビルを作り、創業から数十年たって少しばかり名前が知られ、信頼いただける企業に育ってきました。 そうしたときふと気づくのが、私たちの成長とともに、周囲の期待も上がっていくということです。 数人でやっていた工房の時は、ちょっとしたことでも評価していただきました。ただそれは、私たちが真に求めていた評価ではありませんでした。 「こんな小さな工房なのに、意外と良い商品を作っている」「無名な会

          お客様のご要望にこそ、ヒントがある

          元気な石川を取り戻すために

          令和6年能登半島地震において、亡くなられた方に哀悼の意を表するとともに、被災された方々に心よりお見舞いを申し上げます。 当社では地震発生後、すぐに約250名強の従業員の安否確認を行いました。翌日の1月2日には動けるメンバーが集まってくれて、施設・設備の点検、また社内の清掃や安全確認を行いました。多数の壊れた製品は生産部署に引き上げ、製品の交換を実施しました。おおむね1日がかりですべて片付け、店舗は1月3日から通常営業を始めました。5つの工房も稼働できる状態を確認して4日から

          新年のご挨拶

          新年、あけましておめでとうございます。 昨年度は、日本全体がコロナ禍から立ち直り、いたるところに活気が戻ってきました。みなさまも、とても忙しく過ごされたものと思います。 私たちにとって、2023年は忘れられない年となりました。 箔一の創業者であり、私の母でもある浅野邦子が天へと旅立ったためです。 創業者を失ったことはつらく悲しい出来事でしたが、時間がたって少し冷静になると、これも一つのメッセージであったのではないかと感じています。「これからは、あなたたちの力で前に進みなさ

          思いの灯を受け継いでいく

          子供の頃、好きだったアニメに 銀河鉄道999というものがあります。 主人公の少年が、永遠の命を得られる機械の身体を求めて、銀河鉄道に乗って旅をする物語ですが、この少年は最後に自分の間違いに気づきます。永遠の命とは老いない機械の身体のことではない、と。自分の身体には親からもらった血が流れている。それはいつか、自分の子供に受け継がれていくだろう。そうやって受け継がれていくものこそが、永遠の命ではないかと。 ずいぶん古いアニメですが、ふとこのことを思い出したのは、私たちの受け継