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浮世絵の元祖・菱川師宣の、盆踊りを描いた『風俗図巻』

東京国立博物館(トーハク)の2階には、主に浮世絵師による浮世絵や肉筆画の作品が、多く展示されている部屋があります。その部屋が、7月に入ると、また展示替えが行なわれていました。

いつも肉筆画が展示されているコーナー。6月には、作者不詳の『洛中洛外図屏風』が置かれていました。それで「浮世絵の展示室に『洛中洛外図屏風』とは、これいかに?」と題したnoteを記しました。屏風が展示されているのを、おそらく初めて見たからです。

この『洛中洛外図屏風』は、右隻のみの展示でした。それで、「次回は左隻を展示してほしいなぁ……収蔵されているのか知らないけど…」なんて思っていたわけです。

そのうえでの今回の展示替えです。

えぇ……今回は菱川師宣の《風俗図巻》に替わっていました。ちょっと残念ですが、菱川師宣の図巻というのも、ちょっとうれしいです。

以下、iPhoneしかもっていなかったので、写真はすべてiPhoneです。

菱川師宣《風俗図巻》江戸時代・17世紀・個人蔵

なにが描かれているかと言えば、盆踊りです。男性と女性それぞれを中心とした二組の踊りが描かれています。

すごく贅沢な仕上げですよね。

盆踊り大会の主賓席のようなものがあり、武士らしき人たちがお祭りを楽しんでいます。こういうお祭りには、武士も堂々と観覧してよかったんでしょうね。

注目したいのが、その武士っぽい人たちが使っている敷物です。時代劇などだと、こういうシーンでは(赤いジュータンのような)緋毛氈が一般的かと思うのですが、ここではペルシャ絨毯のような……江戸時代の日本で作られていたとは思えないような……というか見たことがないような敷物が複数枚使われています。

一組だけでなく、楽器を奏でている人たちの敷物も、オリエンタルな印象です。

解説パネルには「男性と女性それぞれを中心とした二組の盆踊りが描かれている」と記されていますが、わたしは下の1サークルしか見つけられませんでした。これは男の組ということなのかなぁ。かなり躍動感たっぷりに描かれていますね。

屋形船から楽しんでいる一団も描かれています。碁なんか差していたり、三味線を聴いていたりとかなり自由ですね。手前の舟では料理が進められているようです。長い箸を使って魚をさばいていたり……見ているとお腹が空いてきます……。

それにしても、17世紀に描かれた図巻が、こんなに良い状態で残っているなんて、すごいですよね。ものすごく大事にされてきたことがうかがえます。

これは、展示期間中にもう1度、見に行きたいと思います。

■追記(2023年7月13日)

菱川師宣と言えば、日本人のほとんどの人が知っているだろう絵がありますよね。《見返り美人図》ですね。確実に、この作品が菱川師宣の代表作と言えます。

ところが、今回の《風俗図巻》に附けられた、作品自体ではなく「菱川師宣」の解説パネルには、以下のように記されていました。

安房国(現在の千葉県)の縫箔師の家に生まれ、俗称は吉兵衛。師宣は画号で、晩年は薙髪して友竹と号しました。版本挿絵から一枚摺りの版画を独立させ、 浮世絵の祖とも称されます。「よしはらの躰」はその代表作。肉筆画も数多く描きました。

解説パネルより

『「よしはらの躰(てい)」はその代表作。』って言われても……わたしは《よしはらの躰》なんて、聞いたことがありません。そう考えると、この解説文で《よしはらの躰》に触れるのは、かなり唐突な感じが否めません。

推測としては、これって元々《よしはらの躰》の解説パネルとセットで設置するために作ったパネルだったんじゃないか? という気がします。

菱川師宣《よしはらの躰(てい)》東京国立博物館蔵・画像:TNMより
菱川師宣《よしはらの躰(てい)》東京国立博物館蔵・画像:TNMより
菱川師宣《見返り美人図》東京国立博物館蔵

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